2020/12/01
第8回 : 品質事故例の紹介 ~企画・設計不良 その3~
アパレル散歩道
2023/01/01


2023.1.1
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明けましておめでとうございます。本年も「アパレル散歩道」をよろしくお願いいたします。
前回までの第45、46、47回では、品質事故の大分類「損傷」から、①生地の損傷、②縫い目の損傷、③副資材の損傷を取り上げました。今回の第48回「アパレル散歩道」では、アパレル製品の④外観変化を取り上げます(表1参照)。
| 大分類 | 中分類 | |
|---|---|---|
| 1 | 損傷 | ① 生地の損傷 |
| ② 縫い目の損傷 | ||
| ③ 副資材の損傷 | ||
| 2 | 外観変化 | ④ 外観変化 |
| 3 | 形態変化 | ⑤ 形態変化 |
| 4 | 風合い変化 | ⑥ 風合い変化 |
| 5 | 色の変化 | ⑦ 変退色 |
| ⑧ 汚染・色泣き | ||
| ⑨ 白化 | ||
| ⑩ 黄変 | ||
| 6 | 機能低下 | ⑪ 機能性低下 |
| 7 | 安全性不適切 | ⑫ 安全性不適切 |
| 8 | 表示不適正 | ⑬ 表示不適正 |
《はじめに》
アパレル製品は、使用中や着用時、洗濯時に強い力がかかる、繰り返し強く擦られる、突起物に引っ掛かる、湿潤に曝されるなどによって、生地表面の外観が大きく変化することがあります。具体的には、しわ発生、プリーツ消失、ピリング、スナッグ、バブリング、目寄れ、中わたの吹き出しなどです。今号では、これらの現象や発生原因、対策などについて考えていきます。
| 現象 | |
|---|---|
| 1 | しわ発生 |
| 2 | プリーツ消失 |
| 3 | ピリング |
| 4 | スナッグ |
| 5 | バブリング |
| 6 | 目寄れ |
| 7 | 中わたの吹き出し |
| 発生の事例 | |
|---|---|
| 1 | 綿100%のドレスシャツを洗濯したら、多くのしわが発生した。 |
| 2 | 夏用麻100%婦人スーツを数日着用していたら、鋭角なしわが多く発生した。 |

図1 綿ジャケットの着用しわ
| 試験法 | 説明 |
|---|---|
| モンサント法 針金法 | たて・よこ方向にしわ付けした試験片の開角度から防しわ率を求める方法である。実用時の不規則な多方向のしわの評価とはやや異なる。 |
| リンクル法 サンレイ法 | 多方向のしわを評価する方法である。リンクル法は判定用標準と比較して等級を判定する方法で、サンレイ法は面積の変化から防しわ率を求める方法。主に毛織物、絹織物の防しわ性を評価する方法である。 |

図2 プリーツ加工製品の例
| 発生の事例 | |
|---|---|
| 1 | 毛100%のスラックスのクリーズライン(折り目)が数回の着用で消えてしまった。 |
| 2 | ナイロン100%のスカートのプリーツのシャープさが、洗濯でなくなった。 |

図3 ピリング現象の例
| 発生の事例 | |
|---|---|
| 1 | 毛/ナイロン90%/10%のジャケットで、身頃の袖と擦れる部分(脇下)に毛玉が多数できた。 |
| 2 | 綿/ポリエステル85%/15%のニットパンツで、ポケット周りに毛玉ができた。 |

図4 各種繊維の布へのピル生成曲線2)

①突起物が近づく


②突起物が生地糸に引っ掛かる


③突起物が生地糸を引き出す
図7 スナッグ発生のメカニズム

図8 スナッグとピリング発生のメカニズムの違い

図9 長繊維ニットのスナッグⒶ

図10 長繊維ニットのスナッグⒷ
| 発生の事例 | |
|---|---|
| 1 | ゴルフ場でゴルフボールを探しに灌木に入ったら、ポリエステルパンツに枝が引っ掛かり、ひきつれが発生した。 |
| 2 | 粗い床面のプールサイドに座ってバタ足の練習をしていたら、水着の尻部がフィラメント切れして毛羽立った。 |
| 3 | 家庭洗濯時に面ファスナーのフック面とニット製品がひっかかり、生地からループ状に糸が飛び出した。 |
| 4 | ショルダーバッグの金具と着ていたニットセーターが引っ掛かり、ニットからループが飛び出した。 |

図11 A法(ICI形メース試験機法)

図12 D-1法
(ICI形ピリング試験機のダメージ棒法)
| バブリング発生の事例 | |
|---|---|
| 1 | ストライプ柄の毛100%スーツで、雨に濡れた後乾いたら波打ちが発生していた。 |
| 2 | 梅雨時に毛100%スーツを着用していたら、前身頃で一部生地が波打ち、浮き上がったようになった。 |
| 発生の事例 | |
|---|---|
| 1 | ポリエステル100%のジョーゼットブラウスを着用していたところ、ブラウスの袖などに織糸のずれが発生していた。 |

図13 目寄れ現象のイメージ4)

図14 目寄れの例(綿織物)
| 発生要素 | |
|---|---|
| 1 | たて糸とよこ糸の交絡の少ない朱子織などの生地組織 (朱子組織のサテンなど) |
| 2 | たて糸とよこ糸の織密度が小さい織物 |
| 3 | 合繊フィラメント織物 (糸表面の摩擦抵抗が小さい) |
| 4 | ポリエステル織物で、過度に減量加工がされた織物 |
| 5 | 染色仕上げ工程で過度に柔軟加工がされた織物 |
| 6 | シルエットが細目の衣料品やサイズが不適合の場合 |
| 7 | 洗濯時に過度に柔軟剤が使用された場合 |
| 発生要素 | |
|---|---|
| 1 | 表地がスムース地のわた入りブルゾンで、着用洗濯を繰り返していたら中わたのポリエステル繊維が生地目から吹き出してきた。 |
| 2 | ダウンジャケットを着用していたら、裏地側から羽毛(ファイバー)が吹き出し、下に着ていたニットシャツに多く付着した。 |
| 具体的な対策 | |
|---|---|
| 生地 |
|
| 中わた |
|
| 具体的な対策 | |
|---|---|
| 1.生地 |
|
| 2.羽毛 |
|
| 3.設計・縫製仕様 |
|
| 4.製品 |
|

図15 ダウンファイバー
コラム : アパレル散歩道49
~品質事故を分析して原因と対策を考えよう~
テーマ : ケーススタディ⑤ ~形態変化~
※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)

43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウェアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。趣味は27年間続けているマラソンで、これまで296回の大会に参加。
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