2020/11/15
第7回 : 品質事故例の紹介 ~企画・設計不良 その2~
アパレル散歩道
2021/02/01
2021.2.1
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今回は、「表示」にかかわる事故事例を勉強しましょう。
4.1 表示の目的
さきの第5回アパレル散歩道で、品質事故原因の一つに「表示」があることを紹介しました。そこで2004年制定の「消費者基本法」では、事業者は消費者権利の尊重とその自立支援などに鑑み、供給する商品や役務について、消費者に対して必要な情報を明確かつ平易に供給することが責務と定められているとお話しました。
「責務」とは「責任と義務」であり、アパレルメーカーなどの販売者は、消費者に対して、その商品の品質や機能、取扱い方法などについて、丁寧かつ正しく情報を提供しなければならないことを理解してください。また、現在、アパレル製品に取り付ける「表示」は、その目的と根拠から、いくつかに分類されている話もしました。参考のために、表示の分類表を改めて掲載します。
4.2 表示不適正の事例
事例1. 品質表示の不適正な事例 (ここでは、5つの事例をあげています。)
(事故現象に関するコメント)
繊維製品の組成表示は、家庭用品品質表示法に基づく繊維製品品質表示規程を遵守することが必須です。
(事故要因と対策)
① について
家庭用品品質表示法では、組成を表示する場合は、指定用語を使用しなければならない。リヨセルはレンチング社の商標であり指定用語ではないため、法律にしたがって、「再生繊維(セルロース)」やリヨセルにこだわるならば「再生繊維(リヨセル)」とすること。但し、後者の場合、レンチング社の許諾が必要といわれている。
② について
家庭用品品質表示法の「表示対象品目と表示事項」によれば、ジャケットなど上衣で裏地仕様のものは、裏地も表示しなければならない。裏地には総裏、半裏など使用面積の異なる仕様があるが、基本全ての裏地は表示対象になる。
③ について
テトロンは、国内メーカーである東レ(株)や帝人フロンティア(株)のポリエステルの登録商標であり、家庭用品品質表示法でいう指定用語ではないため、テトロン100%とは表示できない。テトロンのテは帝人のテ、テトロンのトは東レのトに由来している。
④ について
組成表示の混用率は、一定の誤差が許されている。綿65%、ポリエステル35%など5%刻みの表示では誤差は±5%、また綿73%、ポリエステル27%などの実数表示では、誤差は±4%の誤差が許されている。
仮にメーカーから事前に試作生地の混用率を入手していても、本生産で混用率が当初の許容範囲に入っているか確認するために、できれば混用商品は検査協会で混用率試験をすることをすすめたい。
⑤ について
家庭用品品質表示法の表示対象品目と表示事項では、ポリエステル中わたなどは、詰物として表記され、コートや上衣など防寒衣料が対象になる。ダウンジャケットでは、羽毛の指定用語は、ダウン、フェザー、その他の羽毛となる。羽毛も混合率が比較的ばらつくリスクが高く、適時混合率試験を実施することが望ましい。
羽毛の種類については、第7回コラム(P.3)を参照してほしい。
事例2.取扱い表示の不適正な事例
(事故の概要)
(取扱い表示)
(事故現象に関するコメント)
取扱いに関する表示の記号は、JIS L 0001として2014年に制定され、2016年から施行されました。
新表示はISOと整合化しています。取扱い表示を決定するにあたり重要なことは、記号の配列ミスなどポカミスはもちろん、素材や製品の消費性能と表示記号がマッチングしていること、可能な限り上限表示になっているかが問われます。まずは、これらの記号を熟知してください。
(事故要因と対策)
・ウェットクリーニングとは、クリーニング店で実施する手洗い感覚の水洗いです。したがって、家庭での水洗いが基本的に可能ならば、ウェットクリーニングは可の表示にすべきであった。
答えは、このコラムの最後に記載しています。
事例3. サイズ表示の不適正な事例
(事故の概要)
(事故現象に関するコメント)
我が国の既製服のサイズ表示方法は、1980年に制定され、現在に至っているが、制定後40年が経過していることや海外の動向からを考慮して、遠からず変更される可能性は否定できないようです。
現状、JIS規格に、「乳幼児衣料」「少年用衣料」「少女用衣料」「成人男子衣料」「成人女子衣料」「ファンデーション」「靴下類」があり、また「ワイシャツ」はJIS L 4107「一般衣料品」の付属書にあります。
(事故要因と対策)
さて、「FREE」表示したTシャツに話を戻す。フリーとはどのような体格の人でも着用できるというものであるから、その意味で間違いである。Tシャツなどであれば、フィット性を必要としないため、一般的には範囲表示で表示されることが多い。
事例4. 原産国表示の不適切な事例
(事故の概要)
(事故現象に関するコメント)
原産国表示は、日本製と思い購入したが実は外国製であったとか、逆にフランス製と思い買ったのに、実は中国製であったなど、紛らわしい表示を規制するものです。不当景品類及び不当表示防止法で「原産国」とは、製品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行われた国のことです。衣料品では、一般に縫製が行われた国がこれに該当します。靴下やセーター類は、編立が行われた国が原産国となります。
(事故要因と対策)
・原産国表示に関する景品表示法を正しく理解し、運用すること。
・原産国を表示する際は、メーカーや商社等から、文書で原産国名を入手すること。
・同一品番で、ファーストオーダーは中国製、その後の追加生産は日本製というケースもありうるので、正しく表示すること。
・国内で上下セットする衣料で、原産国が異なっていれば、正しく個別に表示すること。
事例5.機能性表示の不適正な事例 (ここでは、2つの事例をあげています。)
(事故の概要)
(事故現象に対するコメント)
もともと機能性がない商品に、いかにも機能があるように表示することは、消費者に著しく性能が良いと誤認させる行為であり、不当景品類及び不当表示防止法の優良誤認や不実証広告規制に抵触します。これらのケースではリコール(商品回収、ホームページ告知など)とともに、経産省や消費者庁への報告が求められます。また、医薬品医療機器法(旧薬事法)では、医療承認のない一般衣料品では、人体への効果効能を謳えないとされています。
(事故要因と対策)
① について
・消費者がはっ水加工をしていると理解し購入したジャケットを、雨の日に着用しすぐにずぶ濡れになることは容易に想定される。
・不実証広告規制では、機能表示する際は、表示の根拠となる合理的な根拠データが求められる。合理的な根拠とは、学会や産業界が認める試験方法で得られたデータであり、表示内容とそのデータが一致していることが重要となる。
・景品表示法では、衣料品に添付する下げ札などの表示だけでなく、パンフレット、店頭POP、TVやラジオ広告、また、ネットや口頭にも適用される。
② について
・医薬品医療機器法(旧薬事法)では、医療許可承認のない衣料品では人体への効果効能を謳えない。
・具体的な例を挙げると、「血行促進」のほかに「疲労回復」「肩こり軽減」「むくみ防止」「マッサージ効果」「痩身効果」「美肌」などがある。
・微妙な表現は、都道府県の薬務課などに相談されたい。事前にアポイントが必要である。
ティータイムの問題の答え:
横棒は平干し、縦棒は吊り干し、棒が2本になると濡れ干し、斜線は日陰干しを示しています。
昨年の8月から、「繊維製品の苦情はなぜなくならないのか」をテーマに、品質事故要因と品質事故事例を勉強してきました。次回は、これらのことを理解したうえで、会社内の品質管理システムをどのように構築したらよいかを考えます。お楽しみに。
コラム : アパレル散歩道⑬
~繊維製品の品質苦情はなぜなくならないのか~
テーマ : 品質管理システムを構築しよう
発行元
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター マーケティンググループ 企画広報課
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp URL:https://nissenken.or.jp
※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
Profile:清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウェアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。趣味は27年間続けているマラソンで、これまで296回の大会に参加。
社外経歴
(一財)日本繊維製品消費科学会 元副会長
日本繊維技術士センター執行役員 技術士(繊維)
文部科学省大学間連携共同教育事業評価委員
日本衣料管理協会常任委員 TES会西日本支部代表幹事
アパレル散歩道
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