2013/10/18
No. 2 「快適性というけど快適性の定義は…」
思いつきラボ
2014/10/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2014年10月15日時点の内容です。
繊維の雑学的な基礎知識も天然繊維と化学繊維の説明が終わったところですが、合成繊維の説明ではほとんどの繊維名が “ポリ”で始まるので覚えにくいという声を聞きました。
ポリ(Poly)はポリマー 重合体の略で「たくさん」のという意味からきています。モノ(Mono)単量体を複数の重合体にすることによって作られているので、ポリという接頭語が付いています。モノは「ひとつ」という意味で、モノをたくさん集めて作っているので、ポリなんとかという名前になるということです。
ポリバケツという言葉を普段使っていますが、ポリバケツは大手化成品メーカーの商標で特定の樹脂を指定しているものではありません。ポリバケツのほとんどはポリエチレン製ですが、ポリプロピレンやポリカーボネートのバケツなどもありますので、プラスチック製のバケツを総じてポリバケツと呼ぶようになっています。念のため言っておきますが、ポリスマンは警察官のことで「たくさんのゴメンなさい」という意味ではありません。(誰も勘違いしません!!)
一般衣料品ということであれば、天然繊維と化学繊維の説明でもよいのですが、基礎知識のときくらいしか資材繊維に使われる素材を知る機会もないので、続けて“無機質繊維”について取り上げておきます。ガラス繊維や金属繊維、炭素繊維など耳にすることがあると思いますが、これらが“無機繊維とか無機質繊維”と呼ばれるものです。
無機質という言葉の対比語は有機質ということになるので、まず「有機と無機」について触れておきます。
「有機物と無機物」の解説をちゃんと知ろうとするとかなり退屈なものになりますので、ここでは簡単に説明しておきます。まず「有機と無機」にはいくつか異なる考え方があります。炭素(C)を含むか含まないかが基本となりますが、次のような考え方があります。
生物学的分類
「生命に関与するものが有機でそれ以外が無機」という考え方で本来はこの考え方が元になります。したがって一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO₂)は炭素(C)を含んでいますが無機物扱いとなります。
化学的分類
化合物の発展とともに生物学的な分類だと不都合なことが生じてきて「単に炭素(C)を含むものを有機とし含まないものを無機」とする考え方がでてきました。
化合物的分類
化学的分類も化合物の観点からすると不都合があり「炭化水素を含むもの(CnHmで表わすもの)を有機化合物とし炭化水素を含まないものを無機化合物」という考え方です。
繊維でいう無機質繊維は化合物的分類となります。天然繊維や化学繊維は全てに炭化水素が含まれています。繊維の分子構造にでてくるエチル基 CH₂ CH₃が炭化水素です。やはり退屈な原稿になってきましたので、ざっとこんな感じで解釈してください。
無機繊維の中にでてくる“炭素繊維”が無機繊維として扱われるのは、炭素(C)はあるものの水素(H)が含まれていないことによります。かなり乱暴な解説になっていますので、専門家が読んだら怒られるかもしれませんが、筆者の解釈ということでご理解ください。
ということで無機繊維を紹介したいと思いますが、「ガラス繊維はガラスだろう」「金属繊維は金属だろう」と思われている筆者と同類の素直な方たち(世間ではへそ曲がりともいう)のために、“繊維”そのものの定義から説明しておきます。繊維製品の検査をする立場ですので、JIS規格「JIS L 0204-3 繊維用語(原料部門)-第3部:天然繊維及び化学繊維を除く原料部門」を引用しますと
繊維の定義:
糸、織物などの構成単位で、太さに比べて十分の長さをもつ、細くてたわみやすいもの
となっています。
細くてたわみやすいものであれば、ガラスでも金属でもセラミックでもなんでも繊維と呼べるということです。となると無機繊維を説明するには種類が多くなりすぎますので、代表的なものだけ紹介しておきます。
まずガラス繊維ですがグラスファイバーとも呼ばれています。性質は普通のガラスをイメージしてもらえば分かるように、熱や電気の絶縁性に優れていて全く燃えない不燃材です。防音・遮熱・保温材としての用途の他に強化プラスチックと呼ばれるものはガラス繊維が多く用いられています。ヘルメットや釣竿、スキー板などに利用されています。
次に金属繊維ですが、日本では古くから金糸 銀糸が使われているので馴染みはありますが、最近ではラメ糸も多く出回っています。ラメ糸はほとんどがアルミを使ったものになります。筆者が絡んだ生地としては「着用すると肩こりがとれる銅線入りのT-シャツ生地」の開発で1976年~1977年ごろの話ですが、まだこちらも未熟だったのと銅線が硬く編機の針を何百本も折ったことが記憶に残っています。生地はできあがったのですが、肩こりに効果があったかどうかの結果はいまだに知りません。当時もあまり緊張感のない企画開発でしたが、ただこの開発がきっかけで、導電性のある生地の開発に方向転換となって電気を通す生地の開発が進められたのです。
炭素繊維が無機繊維であることは先程説明しましたが、作り方としてはアクリル繊維などを焼成して炭化させて作ります。用途は飛行機の機体から車の車体にも使われるようになり、耐熱衝撃性にすぐれアルミよりも軽く鉄よりも強いことで、今後の需要がもっとも期待されている繊維です。炭化しているので色は黒となりますので色はつけられませんが楽しみな素材ということです。
その他の素材でも繊維をつくることはできますので、無機繊維についてはこれからもいろいろな商品がでてくると思います。ようやく繊維の雑学的な基礎知識の素材についての説明が終わりました。衣料品として使われている身近な繊維や普段はあまり縁のない繊維まで素材だけでもいろいろあるのです。読んでいただいている方たちの繊維の知識を深めてもらおうと書いているのですが、いつもとぼけた原稿になってしまい反省しております。たくさんのゴメンです。
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