おさえておきたい基礎知識

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〖試験担当者のひとり言〗~ お役立ちな独白24 エアコンの効いた部屋と蒸し暑い部屋で衣服の『消臭効果』は変わる?

2026/08/05

今回は『消臭加工』の検証を行います―汗のニオイが気になる皆様へ捧ぐ

 今年も暑い日が続いています。気象庁が今年から、正式な気象予報用語として採用した、最高気温40℃超えを意味する『酷暑日』も頻発しています。

 さて、この季節、「汗のニオイが気になる…」という方も多いのではないでしょうか。そのようなお悩みをサポートしてくれるのが、さまざまな機能を持った衣服です。「ニオイ原因菌の増殖を抑える」抗菌防臭加工や、「衣服そのものがニオイを消す」消臭加工など、各種製品が販売されています。

 抗菌防臭加工機能に関する実験結果は、本コラム「お役立ちな独白15」でも紹介し好評をいただいており、今回は消臭加工に焦点を当ててご紹介します。

 試験担当者の素朴な疑問 ― 実際の“夏”環境で消臭効果は発揮されるか??

 市販されている消臭加工製品は、原則として、様々な規格で定められた試験方法によって、その性能が評価されています。私たち試験担当者も規格の内容に従って、決められた温度や湿度などの条件を保ちながら、試験を行っています。

 でも実際に、私たちが普段生活している環境はどうでしょうか。夏は蒸し暑く湿度が高くなり、冬は寒くて空気が乾燥しています。季節や環境によって温度や湿度は大きく変わりますが、そのような環境でも消臭効果は同じように発揮されるのでしょうか。つまり、「実際の生活環境」と「試験実施下の環境」における消臭効果の差異はないだろうか?…と、そんな素朴な疑問から、今回は“夏”をテーマに、エアコンが効いた室内環境とジメジメした蒸し暑い環境の2パターンで、消臭効果に違いがあるかどうかを調べてみることにしました。

試験開始! SEKマーク認証基準の検知管法を参考に

(1) 試験方法

 今回は、一般社団法人繊維評価技術協議会『SEKマーク認証基準』(繊維製品の機能性評価基準)に定められている消臭性試験を参考に、市販の消臭加工生地を用いて検証しました。

 同基準で汗臭として規定されているガスのうち「アンモニア」と「酢酸」を用います。また条件として、エアコンが効いた環境を想定した「温度20℃・湿度50%」と、ジメジメした蒸し暑い環境を想定した「温度30℃・湿度80%」の2パターンで消臭性試験を行うこととしました。

(2) 試験手順

  1. 1.「20℃・50%」及び「30℃・80%」の空気をバッグに捕集する。
  2. 2.捕集した空気を用いて、アンモニアまたは酢酸の試験用ガスを調製する。
  3. 3.消臭加工生地をバッグに入れて脱気を行い、調製した試験用ガスをバッグに注入する。
  4. 4.注入した空気と同じ温湿度の環境下で2時間静置後、検知管法(右写真)でバッグ内のガス濃度を測定し、減少率を算出する。

今回の試験条件

条  件 エアコンが効いた環境
(20℃・50%)
蒸し暑い環境
(30℃・80%)
ガス種① アンモニア(100ppm)
ガス種② 酢酸(30ppm)
ガスと生地の接触時間 2時間

(3) 試験結果

  1. 1.今回検証した生地では、エアコンが効いた環境の方が、蒸し扱い環境よりも高い消臭効果を示しました。
  2. 2.また、アンモニアよりも酢酸で、より効果の差が大きくなりました。
  3. 3.蒸し暑い環境においても一定の減少は見られますが、エアコンが効いた環境に比べると効果が落ちていました。

試験結果=各条件下でのガス濃度減少率(%)

条  件 エアコンが効いた環境
(20℃・50%)
蒸し暑い環境
(30℃・80%)
アンモニア 83.8% 71.7%
酢酸 95.8% 65.6%

試験結果の考察 ― なぜ蒸し暑い環境で消臭効果が落ちてしまったのか?

 今回の試験では、蒸し暑い環境で消臭効果が低下する結果となりました。では、なぜこのような結果になったのでしょうか。試験担当者として、一般的な加工の仕組みを元にいろいろ考察してみました。

 まず消臭加工の仕組みを説明しますと、大きく分けて「物理的消臭」と「化学的消臭」の2つがあります。物理的消臭は、ニオイ成分を繊維や消臭剤が吸着することで消臭効果を発揮する仕組みです。また化学的消臭はニオイ成分と消臭剤が反応することでニオイを低減する仕組みです。

 物理的消臭の仕組みを持つ鉱物のゼオライトは消臭機能性製品としてよく利用されますが、高湿度環境になると空気中の水分子が吸着部位を占有し、ニオイ成分が吸着しにくくなることで、消臭効果が低下する現象が報告されています。一方、化学的消臭は、物理的消臭ほど温度や湿度等の環境下の影響を受けにくいと言われています。今回の生地も物理的な吸着が影響を受けることで、全体として消臭効果が変化した可能性が一番に考えられます。

 前述したとおり、今回は市販されている生地を使用して試験を行っており、実際にどのような加工が施されているかが記載されていないため、加工内容の詳細は不明でした。ただ最近では、より高い消臭効果が発揮できるよう、物理的な吸着と化学的な反応を組み合わせた生地が多く使われているため、今回の生地も同様の可能性があると思われます。今回は、2パターンのみの環境下で検証を行いました。しかし実際には、冬のようなかなり乾燥している状況や、高温になった真夏の車内、ジメジメした梅雨時の屋外など、生活環境は千差万別です。また、わたしたちが日常的に業務で行っている試験では、性能を一律に評価するため、規格書に則って一定の環境を人為的に作り出しています。

 読者の皆さんも、「規格試験では“機能の効果あり”みたいだったけど、実際の生活環境下ではどうなんだろう?」という視点で消臭機能をはじめ各種の機能性を見ていただけると、また違った発見があるかもしれません。

微生物試験のご相談について

 バイオケミカルグループでは、さまざまな製品の抗菌・抗ウイルス試験や、消臭・防臭試験などを行っています。「該当する試験規格がなく、評価の進め方が分からない」「どう評価すればいいか分からない」など、評価方法のご相談から対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

コラム執筆担当
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
ライフ アンド ヘルス事業本部 バイオケミカルグループ

本コラム「試験担当者のひとり言」は、毎月2回(5日・20日)更新しています。

次回もお楽しみに!

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