2015/02/28
No. 35 「ではウールセーターはなぜ縮むのでしょうか?…」
思いつきラボ
2020/04/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2020年4月15日時点の内容です。
新型ウィルスの報道しかない状況になってきました。「人に会わなければ人からは感染しない」ということぐらいしか確実性の高い情報はないので できるだけ外出する時間を減らして家で過ごすことになります。奇跡的なスピードでワクチンの開発が進むことを願うしかありませんが 同時に有効な治療薬の臨床実験結果が出ることを望みます。新型ウィルスに勝てるワクチンと感染しても重症にならない治療薬が必要なのです。手洗い 体調管理など個人でできる範囲のことは手を抜かずに取組むことが今は毎日の基本となります。
今回のテーマは高視認性安全服の規格の主な改正点の説明になります。JIS T 8127 高視認性安全服の規格が 令和2年3月25日 改正版が発行になりました。規格番号には JIS T 8127:2020 と2020年の西暦を付けてますが 発行日は和暦の令和 2年となってます。いきなりどうでもいいようなことから触れてしまいましたが 令和+18=西暦下2桁 の換算式を覚えておくと時々役に立ちます。本題の話に戻しますが JIS規格は制定されてからは 5年ごとに“確認”“改正”“廃止”のいずれかにする見直しを行なうことになっています。JIS T 8127 は2015年(平成27年)10月26日に制定となっていますので 2020年の今年が見直しの年になります。実務としては 改正の可能性がある場合 検討期間が必要になりますので1~2年ほど前から準備がはじまります。対応国際規格のISO 20471:2013の内容も変更があったので“改正”を選択して進められました。
改正発行の後に JIS T 8127 規格改正の説明会やセミナーの予定もしていたのですが 新型ウィルス感染予防のためすべて中止となっています。とはいえ担当者たちにとっては変更となった部分の確認は早めにしておきたいということで個別には発行直後から問合せがきています。主な改正点を挙げておきますと
・用語及び定義 3.1 高視認性安全服の英語表記が
High visibility warning clothing
⇓
High visibility safety clothing
になりました。
英文名称も“安全性を高める”意味の表現を強めることで“safety”への変更となりました。
・タイプ及びクラス 4.1 半袖でもクラス3が可能
従来 クラス3は
‐クラス3の面積を満たす長袖上衣
‐クラス付のある長袖上衣とクラス付のある
長ズボンの組合せで面積を満たすもの
‐クラス3の長袖つなぎ
だったものに
‐クラス3の面積を満たす半袖上衣
‐クラス付のある半袖上衣とクラス付のある
長ズボンの組合せで面積を満たすもの
‐クラス3の半袖つなぎ
ということになります。要は半袖のクラス3が認められることになりました。
これはISO 20471がすでに長袖(long sleeve)から袖部(sleeve)に変更されていて JISもそれに合わせました。
・デザインに関する最低要求事項 4.2 蛍光生地の隙間
蛍光生地の隙間も再帰性反射材と同一で途切れる隙間は1ヶ所50㎜以下で1周で100㎜までとすることを明記することになりました。いままで本文にはは1周することとなっており隙間については記載がなかったことで再帰性反射材と合わせることになりました。
・キセノン耐光試験後の色に対する要求事項 5.2
カーボンアーク耐光試験(2015年版 5.2.2)が削除されキセノン耐光試験のみ有効となりました。
これについてはISO 20471がキセノン耐光のみ有効としていることに合わせました。
その他にも 改正までの間に国内の家庭用品品質表示法の繊維製品品質表示規定が改正されたため JIS L 0217 を削除して JIS L 0001 を追加したり試験方法の解釈や文言の修正している部分はありますが主だった改正点は記述の内容になります。とくに半袖の製品でもクラス3の判定ができることになったことが2020年版の特徴になります。実のところ ISOが長袖でなくてもクラス3のクラス付けができるようになってからも JIS基準では半袖ではクラス3の判定ができないことになっていて ISOと統一の解釈にならない期間がありました。日本の夏場の高温多湿環境を考えれば半袖のクラス3が可能になったことは暑熱対策にも幅が拡がることになり またクラス3の高視認性安全服の解釈がISOとJISと統一されたことになります。
もうひとつISOとJISの解釈が統一されてない話を紹介しておきます。面積計算の話ですが もともとISO 20471が制定されたときに上下アンサンブルの面積計算に合わせ位置がなく 当然着用した時にはジャケット上衣であれば裾が下衣の上部を覆う形になるので 見える範囲の面積という原則からすれば合わせ位置を決める必要があると考えて JIS規格ではネックポイントに相当する位置から380㎜に合わせて計測すると規定しました。海外ではどう計測しているかを問い合わせてみると 位置合わせはせずに上衣と下衣の足し算で面積合計をしているとのことで 日本が提案している380㎜の信頼度に疑問もあるようで もちろん欧米人と東洋人の体型に大きな差があるので理解もできますが・・・。それと着用の仕方には触れない規格であるという考え方というのも理由のようです。
したがって JIS T 8127 では上下セットの面積計算は380㎜で位置合わせをしますが ISO 20471 では位置合わせなしの足し算計算となり ISOとJISでは認識が異なることになっています。上下セットの面積計算はJISで基準を満たしているものは ISOでも基準を満たしますが ISOで基準を満たしている判定でも JISでは基準未達のものが生じる可能性があります。ここはまだISOとJISの認識が統一されてないことになってます。説明会の予定が組めないのでこの思いつきラボで JIS T 8127 高視認性安全服 改正版を取り上げておきました。新しい規格書を日本規格協会で購入してください。価格は¥3,600(税別)となっております。
原稿担当:竹中 直(チョク)
お問い合わせ
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
竹中 直(チョク)
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp
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