第55回 : ケーススタディ⑪色の変化~黄変~
2023/08/01



2023.8.1
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色の変化の品質事故には、表1のように「黄変」の現象があります。黄変は、白色や淡色の繊維製品が外的作用で黄色、あるいは黄色っぽく変化する現象です。今回のアパレル散歩道では、この黄変の原因と対策について整理します。
表1 色の変化と汚染
| 大分類 | 中分類 |
| 色の変化 | 変退色 |
| 汚染・色泣き |
| 白化 |
| 黄変 |
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黄変(yellowing)とは
繊維総合辞典によれば、「黄変とは、繊維などが外界の影響によって黄色く変色すること」とあります。
アパレル製品の黄変が倉庫や店頭で大量に発見されると、その対策・処理が大変な負担になるため、関係者は正しい原因分析により、黄変事故の未然防止に繋げなければなりません。その意味で、黄変の原因と対策をしっかりと勉強していただきたいと思います。
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黄変事故例
衣料品の黄変事故例を表2に紹介します。表2の事例をみると、各種の繊維製品が、多様な原因で黄変していることがわかります。
表2 衣料品の黄変事故例
| 例 | 黄変事故例 | 原因要素 | 備考 |
| 1 |
毛100%セーター(白色)黄変
長期間着用し保管していたら、セーターが黄ばんだ。洗濯はしていない。 |
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 図1 黄変の例
(ナイロン製ブレーカーパンツ、左は新品)
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| 2 |
ナイロン100%ブレーカー(白色)黄変 長期間着用していたら、ブレーカーが黄ばんできた。 |
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| 3 |
ポリエステル100%ニット(白物)黄変 ポリ袋に入ったニットを店頭で出したら、畳み端がレモンイエロー色になっていた。 |
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| 4 |
ポリエステル70% 綿30% ワイシャツ(白色)黄変 ワイシャツをクリーニング処理したら、襟とカフスのみ黄ばんだ。 |
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黄変の原因について
表2の黄変事故例を分析すると、黄変の原因は表3のように分類できます。
表3 黄変の原因
| 素材 | 原因の要素 | 説明 |
天然繊維 (毛、綿など) | (1)染色加工 | 天然繊維はもともと不純物として黄みの成分を含むため、これを蛍光増白剤で純白に仕上げているが、外的作用によって蛍光増白剤が脱落することでもともとの黄みに復色することがある |
羊毛、絹、 ナイロン、 ポリウレタンなど | (2)繊維特性 | 毛、絹などのたんぱく質繊維やナイロン、ポリウレタンは、化学構造に窒素(N)を含み、紫外線による酸化などで黄ばみやすい |
| (3)環境 | 日光や蛍光灯の紫外線で黄ばみやすい |
| 空気中の酸化窒素ガス(NOx)によって黄ばみやすい |
| 全繊維素材 | (4)梱包資材 | 段ボール、木製棚板等との接触による黄変(バニリン黄変とも呼ばれる) |
| ポリ袋やプラスチックハンガーに含まれるBHTとNOxガスとの複合による黄変(フェノール黄変とも呼ばれる) |
| 芯地など副資材 | (5)接着芯地の樹脂 | 芯地樹脂のタイプ、塩素系漂白剤との複合による黄変 |
黄変のキーワードには、
「蛍光増白剤」・「繊維特性」・「ガスなどの環境」・「梱包資材」・「芯地など」がある。
今回は、以下に上記表3の(1)から(5)について説明を加えます。
(1)染色加工による要因
第39回アパレル散歩道(2022.4.1)で「染色」を取り上げ、その準備工程として精錬と漂白を紹介していますので、改めてご覧ください。その「5.1主な準備工程」では、精練について「繊維には色々な不純物が含まれています。特に天然繊維は、自然物のため、不純物が多く含まれており、・・・これらの不純物は、染色加工の効果を高めるために、この精練工程で事前に除去されます」、また、漂白工程について「精練工程で除去しきれなかった微量の不純物の色素を除き、より白度を上げる工程のことです。薬剤は、酸化漂白剤や還元漂白剤が使用されます。」と記載しています。
日本人は昔から純白(スーパーホワイト)を好むといわれ、染色仕上げ工程でも、より白度を上げるために蛍光増白剤を併用することが多くなっています。これにより、その白度の耐久性が外的環境によって低下する問題が顕在化します。
表4 精錬、漂白、蛍光増白について
| 工程 | 説明 |
| 精錬 | - 天然繊維は自然物のため、色々な不純物が含まれている
- 染色加工の効果を高めるために、これらの不純物は精練工程で事前に除去される
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| 漂白 | - 精練工程で除去しきれなかった不純物の色素を除き、より白度を上げる工程のこと
- 薬剤は、酸化漂白剤や還元漂白剤が使用される
|
| 蛍光増白 | - 蛍光増白剤は目に見えない紫外線を吸収し、青白い蛍光を発して、白物衣料品の白度をより上げる効果がある
- 家庭用洗剤にも蛍光増白剤が含まれているものがある
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特に、綿や麻、レーヨンなどのセルロース繊維製白物衣料に用いられる蛍光増白剤は、繰り返し洗濯や紫外線などで変質や脱落して白度が低下し、繊維本来の元々の色に戻りやすいため、洗濯用洗剤に含まれている蛍光増白剤は、衣料品の白度低下を防ぐことになります。
図2 白物衣料の復色のメカニズム
~染色加工による黄変の考え方~
- 単に黄変と言っても、蛍光増白剤が脱落して「繊維本来の色に戻る」だけのケースもあり、その場合、お化粧が落ちたイメージと例えられます。
- 蛍光増白剤は、基本繰り返し洗濯などで脱落します。
(2)繊維の特性による要因
羊毛や絹などの動物性天然繊維、ナイロンやポリウレタンなどの合成繊維は、繊維自体の化学構造の要因で黄変しやすいと言われています。したがって、これらの白色や淡色衣料品ではその黄変リスクは高くなるでしょう。ポリウレタン繊維は単独で使用されることはありませんが、合成皮革用ポリウレタンコーティングや副資材用のポリウレタンフィルム、樹脂などでは同様に白物の黄変リスクがあることに留意してください。
羊毛、絹、ナイロン、ポリウレタン混用品などの純白商品やスーパーホワイト商品は黄変リスクが特に高いため、商品企画時の色目決定の際には十分ご注意ください。
①化学構造と黄変
一般的な繊維の特徴と化学構造を表5に紹介しています。繊維高分子の主鎖に窒素(N)原子があると、活性が大きいため、紫外線や酸化窒素の影響を受けて変色しやすいと言われています。さらに、これらの繊維特性に加えて、前述の蛍光増白剤の要素が加われば、黄変リスクはさらに高くなるでしょう。
表5 一般的な繊維の化学構造
| 繊維の種類 | 化学構造上の特徴 | 化学構造 | 窒素(N)の有無 |
| 羊毛、絹、ナイロン | アミド結合をもつ |  例 : ナイロン6の場合 アミド結合 : -CONH- | 有 |
| ポリウレタン | ウレタン結合をもつ |  ウレタン結合 : -COONH- | 有 |
| ポリエステル | エステル結合をもつ |  エステル結合 : -COO- | 無 |
| 綿、麻、レーヨンなど | セルロースの構造をもつ | 
| 無 |
②素材特性と対策
以上のように、羊毛や絹の動物性天然繊維、ナイロンやポリウレタンなどの合成繊維は、素材特性により黄変リスクが高いため、これらの商品化にあたっては「純白(スーパーホワイト)は企画しない」、「消費者に素材の特性を発信する」などの対応が望まれます。
(3)環境と黄変
これまで、環境要因により黄変リスクが増加するお話をしました。この環境要因と、(2)の「繊維の特性による要因」などが複合することで、黄変事故がさらに発生することになります。
①環境要因とその発生源
主な環境要因とその発生源は表6の通りです。また、表中のNOxは大気中に含まれる酸化窒素ガスで、自動車の排気ガスやファンヒーターなどに含まれています。NOxガスは、NOとNO2が適度に混合されているガスの総称で、その比率が1~2のため、“x”と表現されます。
表6 主な環境要因とその発生源
| 環境要因 | 発生源 | 備考 |
酸化窒素ガス (NOx) | 自動車などの排気ガス、ファンヒーターの燃焼ガスなど | 「ガス黄変」とも呼ばれる |
| 光(紫外線) | 洗濯干しによる日光や店頭の蛍光灯など | 「光黄変」とも呼ばれる |
~ファンヒーターの特性~
- ファンヒーターには、石油ファンヒーター、ガスファンヒーターがあり、また、燃料の灯油やガスには若干の窒素不純物が含まれています。
- ファンヒーターはいずれのタイプも燃焼効率を上げてストーブ臭を大幅に低減していますが、その半面、従来のストーブに比べて燃焼効率が高いため、NOxの発生が多いとされています。
②環境要因と対策
ガス黄変と光黄変について、a.製品在庫時とb.消費者取扱い時の視点から、対策を表7に示します。
表7 要因別の対策
| ガス黄変 | 光(紫外線)黄変 |
| a.製品の在庫時など | - 白色製品については、倉庫などではNOx濃度の低い環境で保管する。特に、車の出入りの多い環境や交通量の多い道路側の環境では、リスクが高くなる。
- 倉庫内のフォークリフトはできるだけ電動車両を採用する。
- 段ボールパッキンの内側に大きいポリ袋を配置し、これに製品を入れるのも有効となる。
| - 直射日光が当たらないところで保管する。
- 店頭など、蛍光灯で商品を照らす場合は長時間照射せず、また商品との距離を充分に確保する。蛍光灯による黄変発生の程度は、照射距離の二乗に反比例すると言われている。
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| b.消費者の取扱い時など | - 家庭では、風通しの良い場所で保管する。
- 保管は、ファンヒーターの排気ガスの影響のない場所が望ましい。
- 濡れた衣料をファンヒーターなどの前で長時間干さないこと。 NOxガスは水溶性のため、濡れた衣料品はより吸収しやすくなる。
| - 洗濯後は直射日光の当たらない場所で乾燥する。
- 保管も、直射日光が当たらないところで実施する。
- 消費者にガス退色や光(紫外線)によるリスクについて情報提供する。
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(4)梱包、包装資材と黄変
表8に、段ボールやポリ袋などの梱包、包装資材による黄変発生を改めて紹介します。
表8 梱包資材による黄変発生
| 原因の要素 | 説明 | 備考 |
| 梱包、包装資材 | 段ボール、木製棚板等との接触
(バニリン黄変とも呼ばれる) | 移染性物質であるバニリン汚染 |
| 包装ポリ袋やプラスチックハンガーなどと大気中のNOxガスとの複合作用 (フェノール黄変とも呼ばれる) | 酸化防止剤としてフェノール性化合物BHT(ブチルヒドロキシトルエン)と大気中のNOxガスとの複合作用 |
①段ボール、木製棚板等との接触
木材には、リグニンという物質が多く含まれており、その分解物がバニリンです。バニリンは、アイスクリームなどに使用されているバニラエッセンスと同じもので、もともとクリーム色をしています。木材の中に含まれるということは、木材から生産される段ボールや木製棚板などにもバニリン成分が含まれており、長期接触によって移染性黄変物質であるバニリンが製品を汚染して黄変が発生します。
- 店頭の商品展示で、塗装していない木製棚板に、ポリ袋から取り出した白物商品を長期間積み置きするのはバニリン黄変のリスクになる。
- 生産工程でも、段ボールに直接白物商品を入れて保管するのはバニリン黄変のリスクになる。
②ポリ袋やプラスチックハンガーなど、プラスチック資材との接触
a.BHTとは
製品の包装用に使用されるポリエチレン製やポリプロピレン製などのフィルムには、耐久性を高めるために、生産時に酸化防止剤としてフェノール性化合物のBHT(ブチルヒドロキシトルエン)が使用されています。その配合率はフィルムメーカーやフィルムタイプによっても異なります。
b.BHT・NOx黄変のメカニズム
BHTは揮発性で発散しやすく、さらに大気中の酸化窒素ガスと反応して黄色いBHTのニトロ化合物を生成します。これが付近の白色製品に昇華移染することで黄変事故が顕在化します。これらのメカニズムによる黄変現象を、一般にBHT・NOx黄変と呼んでいます。BHT・NOx黄変は、アルカリ性で黄色に発色し、酸性で消色する性質があり、黄変原因を特定する上で参考にできる性質です。また、生地の加工対策でも、酸性に仕上げることなどが求められることがあります。
~BHTはなぜ使用されるのか~
フィルム業界で使用される酸化防止剤の多くはBHTです。BHTは廉価で酸化防止のコストパフォーマンスに優れているため、特にポリプロピレン、ポリエチレン袋には長年多用されています。また、ポリ袋用だけでなく、ハンガー用途などのプラスチック樹脂にも、これらの酸化防止剤が使用されています。
③対策について
a.バニリン黄変の対策
この対策では、黄変物質バニリンの商品への付着をバリアすることが大切となります。表9の対策が考えられます。
表9 バニリン黄変の対策
| 項目 | 対策内容 |
段ボールなど 梱包資材の選定 | 可能であれば、リグニンやその分解物であるバニリンの含有量が少ない梱包資材を選択する。 |
| 段ボールなどとのバリア性 | 段ボールや木製棚板と白色製品が、直接接触しないよう工夫する。 |
| 包装仕様 | 梱包資材のバニリンが製品に触れないように、商品は個別にポリ袋に入れて、袋口を粘着剤で密閉できるタイプとする。 また、段ボール内側に大袋を使用し、商品はこれに収納する。 |
| 保管環境 | 製品を入れた段ボールなどは、高温多湿、直射日光での保管を避ける。また、長期間の保管や在庫は避ける。 |
| 店頭など | 未塗装の木製棚にポリ袋から出した白色衣料品を直接積み置きしない。 |
b.BHT・NOx黄変の対策
この対策では、BHTが大気中のNOxガスと反応して黄変物質になるのを防ぐことが重要で、表10の対策が考えられます。
表10 BHT・NOx黄変の対策 (ポリ袋の場合)
| 項目 | 対策内容 |
| フィルムの選定 | 可能であれば、BHTを含まない包装資材を選ぶ。 |
| フィルムのガスバリア性 | ガスバリア性の高いフィルムなどを採用することが望ましい。しかし、事前に包装資材のガスバリア性を試験し把握することは、現実にはコストもありフィルムについては難しい。 |
| 包装仕様 | 包装資材のBHTが酸化窒素ガスと触れないように、商品は個別にポリ袋に入れて、袋口を粘着剤で密閉できるタイプとする。 |
| 保管環境 | 保管や在庫では、酸化窒素ガス濃度が高い環境での製品保管を避ける。もちろん長期間の保管や在庫も避ける。 |
生地の水素 イオン濃度pH | 染色加工で、生地の水素イオン濃度 pHが酸性になるように管理する。例えば、 pH 5.0±0.5など |
(5)接着芯地の樹脂と黄変
接着芯地の役割には、形態安定、シルエット形成、補強などがあり、色々な服種や部位に適合できるように、芯地基布の種類はもちろん、接着樹脂の種類や密度などが工夫されています。また、接着樹脂には、ポリアミド系(ナイロン系)、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレン系などがあります。
表2の例4で紹介した「白色ワイシャツの襟とカフスの黄変」は、まさに接着芯地を使用している襟部とカフス部で、芯地樹脂が外的要因で黄変してこれが透けて見えたものです。ポリアミド系(ナイロン系)やポリウレタン系の接着樹脂は、化学構造上樹脂自体に黄変しやすい性質があり、紫外線、漂白剤、熱などの外的要因でさらに黄変が促進されることがあります。
(次回のアパレル散歩道 / 9月1日発行)
次回は、「ケーススタディ ⑫機能性の低下」を取り上げます。
コラム : アパレル散歩道56
~品質事故を分析して原因と対策を考えよう~
テーマ : ケーススタディ ⑫機能性の低下
Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウェアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。
社外経歴
(一社)日本繊維技術士センター理事 技術士(繊維)
(一社)日本衣料管理協会理事 TES会西日本支部顧問
大学非常勤講師
(一社)日本繊維製品消費科学会 元副会長