アパレル散歩道

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第39回 : ものつくり原点回帰シリーズ ~染色 その1~

2022/04/01

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2022.4.1

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 前回と前々回の「アパレル散歩道」では、織物とニットの製造と特徴をお話ししました。織り上がり、編み上がりの生地は、「生機きばた」と呼ばれ、その生機を染色工程で色付けや仕上げ加工が施されます。また、アパレル製品にも、婦人服、紳士服、インナー、スポーツ、カジュアル、子供服など色々な衣料があり、それぞれの衣料には、適した素材、色彩、配色、品質があり、それらが実用に適合していることが大切となります。
 今回の「アパレル散歩道」では、「染色その1」として、染色のメカニズム、染料、染色機などについて説明します。次回の「染色その2」では、染色工程の仕上げ・機能加工を予定しています。アパレル製品に係る担当者は、製品の色関連の知識は不可欠です。しっかり勉強しましょう。


  1. 染色とは
    1. 染色と染料
       染色とは、布や糸などの繊維に色素を吸着、結合させることです。染め方で、浸染しんぜん捺染なっせんに大別されています。また、染料とは、繊維を着色するのに用いる色素です。色素には、染料と顔料がありますが、染料の歴史は古く,既に古代エジプトで天然染料による藍染めなどが行われていたようです。近年では、19世紀に合成藍染料(スレン系)の発明以来、多種類の染料が工業生産されて、現在に至っています。
      図1.先染め品の例
      図1.先染め品の例
      図2.染色の歴史
      時代当時の染色方法
      紀元前古代エジプト、ペルシャ、中国、インドでは、昆虫や藍などの植物、貝、 鉱物などの天然物が染料として使われる
      ローマ帝国時代地中海の貝からとったティリアン(パープル)で染めた衣服などがある。
      日本古代茜(あかね)、藍(あい)、ベニバナなど天然植物染料がある。また、わが国の藍染めは、安土桃山・江戸時代から各地で行われていた。阿波の国の徳島では、蜂須賀藩が、藍染産業を奨励した経緯がある。
      茜
      ベニバナ
      ベニバナ
      近世スペインのサフラン(イエロ)、北イタリアのオーキル(地衣類の紫色染料)などが記録として残る。
      19世紀産業革命時各種化学繊維の開発とともに、コールタールから合成染料が発明される。
      現在石油を原料とした合成染料が発明されている。
      ~「藍」の歴史と「ことわざ」~藍の歴史は古く、ことわざも多くあります。
      出藍しゅつらんほまれ
      弟子が師よりもすぐれた才能をあらわすたとえ。青色染料は藍(あい)から取るものだが、もとの藍の葉より青くなることから言われている。同義語に「藍は藍より出でて藍より青し」がある。
      <紺屋のしろばかま
      他のことにばかり忙しく、自分のことに手がまわらないことのたとえ。いつでもできるにもかかわらず、放置しておくことをもいう。「医者の不養生」と同義語。 また、染料を扱いながら、自分の白袴に、しみ一つつけないという職人かたぎを表わしたことばともいわれる。


    2. 色の表し方
       色には、図3のように「色相」「明度」「彩度」の三属があります。「色相」とは、赤、黄、緑、青など色味の性質のことです。色相の配列は、虹色のように、赤→橙→黄→緑→青→紫のように連続的に変化します。
       「明度」は色の明るさを示します。「彩度」は色の鮮やかさを示しています。
       また、色にはシアン、マゼンダ、イエロの3原色があり、染料の配合も基本的には、この原理を利用しています。
       染色工場での色管理では、これらを数値化した管理(コンピュータカラーマッチング)が行われています。
      図3.色の3属について
      色相 明度 彩度
      図3.色の3属について
      図4.色の三原色
      図4.色の三原色


    3. 染色のメカニズム
       染色では、衣料品を繰り返し洗濯しても脱色しないレベルが求められます。繊維はミクロ的にみると、長く繋がった高分子であり、繊維の長さ方向に束状に配向しています。その配列には、規則正しく配向した結晶領域と乱れた配向の非結晶領域が混在し、染料は、この非結晶部分に浸透して染着されます。
      図5は、繊維内部の高分子の結晶領域と非結晶領域に染料が浸透するイメージを示しています。染料は結晶化の程度の低い非結晶領域に染着しますが、ちょうど電車に例えると、満員電車では新たに入り込む余地はなく、ある程度空いている車両に乗客は入り込むようなものです。そして、ポリエステル繊維用の分散染料を除く多くの染料は、繊維と化学的な結合によって、脱落しにくいものになります。
      図5.繊維と染着の原理
      図5.繊維と染着の原理
       一方、ポリエステルは、繊維の結晶性が他の繊維に比べてとても大きく、染料が入り込みにくい傾向があり、高温高圧で無理やりに押し込むイメージです。また、ポリエステル繊維には化学的に反応する「手」もないため、繊維中に染料が分散している状態になり、高温環境では、分散染料特有の「マイグレーション(染料移行)」と呼ばれる性質が発現し、これが、分散染料で染色したポリエステルの弱点になっています。


  2. 生地の流通と染色加工
     機屋やニッターで製造された生機(きばた)は、染色加工業者に運ばれ、染色加工されます。加工の形態は、繊維メーカーや商社からの委託加工が一般的です。つまり、「メートル当たり加工賃○○円」のビジネスが基本になっています。
    生機
    (きばた)
    染色加工
    (前処理、染色、機能加工)
    発送
    (品質チェック、出荷検反等)

    図6.染色加工の流れ

    1. 生地色相の決定
       色目の決定は、もちろんアパレルメーカーが行いますが、一般に下記のように実施されます。
      1. アパレルのデザイナーが、生地メーカーに試染め(ビーカー染め)を依頼する。
      2. 色見本にもとづき、染色加工場は試染めを実施する。
      3. 色見本は米国製「PANTONE®色見本」などを利用し、レサイプを決める。レサイプとは、食事のレシピと同じ意味である。
      4. 試染めは、デザイナーが色目に満足し了解するまで、数回実施することもある。

      図7.PANTONE<sup>®</sup>色見本帳”>
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      PANTONE®
      19-4029 TPG

      図7.PANTONE®色見本帳

      図8.試染め用小型染色機
      図8.試染め用小型染色機
      (ビーカー染色機)


  3. 染色工程と染色機
    1. 染色工程について
       染色加工工場の染色工程には、大きくわけると、①準備工程、②染色工程、③仕上げ工程があります。
      準備工程では、染色工程に先立って、染色が問題なく実施されるように各種の前処理が行われます。仕上げ加工工程では、染色後、生地に付加価値を付けるための後加工を行います。具体的には表1をご覧ください。

      表1.染色工程について
      工程工程の内容具体例
      ①準備工程②の染色工程で、外観品位、色相、品質が適正に管理できるように、繊維の種類、形態、糸の特性、織物やニットの組織などを考慮した工程が設定される毛焼き(紡績素材) 糊抜き(織物) 精錬 漂白 減量加工(ポリエステル) マーセライズ加工(綿など) 防縮加工(羊毛) プレセット(合成繊維など) など
      ②染色工程染色工程で、糸や布など繊維素材に染料を吸着、結合させること糸染め 無地染め(バッチ式)
      無地染め(連続式)  捺染  製品染め など
      ③仕上工程染色工程ののち、付加価値を向上させる加工をおこなう風合い改善 外観変化 機能性付与 など


  4. 染色の分類
     染色には、さきめとあとめがあります。
    1. 先染め
      1. 先染めとは
         先染とは、織物やニットにする前の①原綿や②糸で染めることです。具体的には、表2の通りです。
        (1)先染の種類
         先染には、主に「綿染め」と「糸染め」があります。
        表2.先染めについて
        先染めの種類概要
        綿わた染め、ばら毛染め、羊毛トップ染め紡績前の原綿(綿(わた)繊維)の状態で染色し、もくいと(ミックス調の糸)を生産する。
        ②糸染め紡績後の糸の状態で染色し、チェック柄やストライプ柄やボーダー柄を表現する。

        図9.羊毛トップの例
        図9.羊毛トップの例
        図10.糸染め商品の例
        図10.糸染め商品の例
        図11.杢(もく)糸商品の例
        図11.もく糸商品の例
        ~「絣(かすり)」も先染めです~
        写真は絣の一例ですが、これも糸染めの一種です。江戸時代 に生まれた絣ですが、経糸、緯糸をまとめて一定間隔に別の糸で 縛って防染しています。染色後に柄を合わせて織りあげた生地です。
        絣

        (2)先染め用染色機について
         先染め用染色機には、図12のように、「かせ」染色機と「チーズ」染色機があります。
         「かせ」とは、糸を連続して一定の長さの輪にして束ねたもので、チーズのようにがっちり巻かれていないため風合いが柔らかい仕上げとなります。「チーズ」とは欧米の食するチーズの形状に糸を多数の穴の開いた円筒管に巻いたもので、かせ染めに比べると加工効率に優れています。
        (1)かせ染色機
        (1)かせ染色機
        (2)チーズ染色機
        (2)チーズ染色機

        図12.糸染め染色機



    2. 後染め
      1. 浸染とは
         後染めは、先染めに対して織編物にした後に染めることです。浸染は、生地を染色液に浸漬し、単一の無地色に染められるため、「無地染め」とも呼ばれています。後染めを分類すると、図13のように大きく浸染と捺染に大別できます。また、製品染めもこれに含まれています。

        図13.後染めの分類
        図13.後染めの分類


      2. 後染め用染色機について
         後染めとは、生地全体を均一に同色に染めるもので、近年、染色機は「液流染色機」が主流になっています。
        液流染色機は、ニットや織物の染色に使用されますが、以下のような特徴があります。
        1. 染料液の噴射とともに生地も回って染めるので、色むらが発生しにくい。(図14参照)
        2. ポリエステルの染色には高圧液流染色機を使用し、 ナイロンや綿などは常圧で対応できる。
        3. ロープ状で染色されるため、しわ発生は素材により要注意となる。
        4. 加工効率がよく、現在、染色業界ではこの液流染色機が主流である。

        図14. 液流染色機の原理と写真
        図14.液流染色機の原理と写真


          <バッチ式の特徴と品質管理>
          液流染色機などバッチ式の染色では、反数単位で染色される。
          • 例えば、E100%ニット生地で、紺400m赤800mグレー1200mの加工発注があれば、1反が50m、その液流染色機の適正反数が8反(400m)であるとして、染色バッチ(回数)は、紺は1バッチ赤は2バッチグレーは3バッチとなる。
          • 時として、縫製工場で生地の色違い事故が発生するが、同一反内や反間だけでなく、バッチ間の色違いが生じることがあり、そのロット管理の対策が求められる。


      3. 捺染
         捺染は、染料プリントとも呼ばれ、版型を用いて染料を含んだ色糊を印捺し、単色または多色柄を印刷する手法です。京都や金沢の友禅染めも、伝統的な捺染のひとつです。近年、増加している版のいらないインクジェット、昇華方式も捺染の中に分類されています。

        図15.捺染生地の例
        図15.捺染生地の例

        (1)捺染とは
         捺染工程は、染料を含んだ色糊を印捺し、加熱工程で染料を繊維上に固着した後、余分な色糊を水洗して除去する工程です。柄を生地上に印捺するには、図16のようないろいろな方法があります。

        図16.捺染方法による分類
        図16.捺染方法による分類


        (2)捺染用染色機について
         捺染機には、表3のように、ロータリースクリーン機、フラットスクリーン機、ローラー機、インクジェット機、昇華捺染機などがあります。インクジェット機と昇華捺染機は製版が不要な方式です。
        表3.捺染機の分類
        捺染の種類捺染の概要
        ロータリースクリーン円筒型のロータリースクリーンを用いた捺染方法である製版必要
        フラットスクリーン平板状のスクリーンを使用する
        ローラー表面に柄模様を彫刻した銅製ローラーを使用する
        ハンドスクリーン手捺染のこと。基本フラットスクリーンと同様の手法である
        インクジェット無版型の捺染手法。セーレン/ビスコテックスが代表的である製版不要
        昇華分散染料の昇華性を利用した転写式捺染手法である。水を使用しない環境対応染色とも言われる

        1. フラットスクリーン
           フラットスクリーン捺染機は、版が平面であることが特徴です。スキージと呼ばれる「へら」を用いて、捺染糊をスクリーン型から生地面に押し出して印捺します。スキージングが自動の「オートスクリーン」と手動の「ハンドスクリーン」があります。もちろん、版を複数準備することにより、多色刷りが可能です。

          図17.フラットオートスクリーン機の例
          図17.フラットオートスクリーン機の例


        2. ロータリースクリーン捺染
           版が円筒形になっているタイプの捺染機です。多くの小穴のあいた円筒にスクリーンを巻き付け、円筒の中から色糊をしみ出させ、生地面に色糊を塗布する方式です。連続染色式で高速のため生産性が高いのが特徴で、円筒が回転し印捺するため、ストライプ柄や連続柄に適しています。

          図18.ロータリースクリーン捺染機の例
          図18.ロータリースクリーン捺染の原理と捺染機1)


        3. インクジェット捺染
           パソコンプリンターように、画像や写真出力として微粒子の特殊インク(染料や顔料)によって、柄が生地に印捺されます。印捺型を使用しないため、写真柄やグラディエーション柄など、型を用いるスクリーン機では再現できない柄が可能となっています。小量生産、短納期、精密柄、多色化、画像データの長期保管などの長所がある。印捺後のスチーミング、ソーピングによる染料などの固着は必要です。

          図19.インクジェット捺染機の例
          図19.インクジェット捺染機の例


        4. 昇華捺染機
           熱昇華性の高い分散染料の絵柄を離形紙に印刷した転写紙を作成し、ポリエステル生地に、約200℃で30秒~60秒間圧着し、分散染料を熱転写させる方式で、方式はバッチ式と連続式があります。身近なところでは、街の店頭などにおかれている広告用のぼり旗があります。これはポリエステルタフタ地に昇華捺染したものです。昇華捺染では、印捺後の加熱やソーピングが不要なため、環境にやさしい、小ロット、短納期という長所があり、最近需要が伸びています。
          図20.昇華捺染(バッチ式)
          図20.昇華捺染(バッチ式)
          図21.昇華捺染(連続式)の原理
          図21.昇華捺染(連続式)の原理


      4. 製品染め
         縫製後、白い製品を仕上げてから最後に色を染めること。生地から縫い糸まで、すべてが同じ染料で染められることで、独特の風合いが出ます。製品染めは「ガーメントダイ」とも呼ばれています。


  5. 準備工程
     染色工程では、外観品位、色相、品質が適正に管理できるよう、繊維の種類、形態、糸の特性、織物やニットの組織などを考慮した工程が準備工程として事前に設定されています。

    準備
    工程
    染色
    工程
    仕上
    工程
    1. 主な準備工程
      1. 毛焼き
         綿、レーヨンなどの短繊維の糸及び織物やニットの表面上の毛羽を燃焼により除去し、風合いや光沢を改善するとともに、後加工工程での処理剤の浸透性を高めています。火炎上を高速で糸や生地が通過し、表面の毛羽が処理されます。ポリエステル混紡品では、毛焼きはピリング(毛玉)の改善に有効ですが、合成繊維は毛焼き条件によっては溶融して風合いが硬化するので注意を要します。

        図22.毛焼き工程のイメージ
        図22.毛焼き工程のイメージ



      2. 糊抜き
         織物工程では、製織時の経糸切れ防止のため、事前に経糸に糊がつけられています。経糸に付けられたでんぷん等の糊剤は、製織後の染料や仕上げ剤の浸透を妨げるため、染色加工の最初の段階で除去されます。糊抜き工程では、水に界面活性剤、アルカリ剤、でんぷん分解酵素、酸化剤などを加えた温水で処理されます。


      3. 精練
         繊維には色々な不純物が含まれています。特に天然繊維は、自然物のため、不純物が多く含まれており、さらに紡績や織布工程での油剤や糊剤、ほこりなどの付着も含まれています。これらの不純物は、染色加工の効果を高めるために、この精練工程で事前に除去されます。
        図23.精錬工程の概要
        繊維名精錬の種類
        綿アルカリと界面活性剤を用いる。
        羊毛原毛は紡績前の染毛工程で実施し、毛織物では製織後に洗絨する。羊毛はアルカリや酸化剤に弱いので、pH9〜10、50℃程度でおこなう。
        絹の精錬は本煉(ほんねり)とも呼ばれる。生糸の表面を構成するセリシンたん白質を除去し、絹の光沢や風合いを出す工程である。
        セリシンはフィブロインと同様のたん白質だが、弱アルカリ性の熱処理で除去される。
        絹の構造
        絹の構造


      4. 漂白
         精練工程で除去しきれなかった微量の不純物の色素を除き、より白度を上げる工程のことです。薬剤は、酸化漂白剤や還元漂白剤が使用されます。処理はバッチ式の単独工程の場合もありますが、精錬→漂白の連続工程で処理されることが多いようです。
        図24.漂白工程と漂白剤
        漂白剤概要
        酸化漂白剤酸化漂白剤には次の2つに大別される。綿などに適し、薬剤の漂白作用によって繊維を白くする。
        塩素系・・亜塩素酸ナトリウムなど
        酸素系・・過酸化水素水など
        生地に鉄サビなどが残留していると、この部分で酸化作用が進行し、生地を傷めることがある。
        還元漂白剤羊毛、絹、ナイロンなどに使用される。
        ハイドロサルファイトの還元作用で繊維を白くする。


      5. 減量加工
         ジョーゼットのブラウスなど、ポリエステル織物で風合いを柔らかくする加工のことです。アルカリ剤による加水分解作用を利用しているため、アルカリ減量加工ともいわれています。ポリエステル繊維表面を5~20%程度溶解し、繊維を細くして、生地風合いをソフトにしています。水酸化ナトリウムの熱水溶液で処理されますが、過度な減量加工は、生地スリップが生じやすく、滑脱抵抗力の低下は要注意です。
        ~減量加工~ 減量とはポリエステル糸の表面を溶かして、糸を瘦せさせること。これにより、糸間の接圧が低下し、糸間の空隙が増加します。その結果、生地はソフト化し、ドレープ性が向上します。婦人ポリエステルブラウスなどに使用されます。


      6. マーセライズ加工
         綿素材を高濃度の水酸化ナトリウム水溶液中で引っ張った状態で処理し、染色性の向上、寸法安定性、光沢の発現、引張強度を改善させています。この加工を発明したジョン・マーサーに因み、これをマーセライズ加工と呼び、絹のような光沢が発現するので、シルケット加工とも呼ばれています。図25のように、もともとの綿繊維はつぶれたストロー状ですが、図26のようにアルカリ処理によって、そのつぶれた断面形状がきれいな円形に変化することで、光沢の光沢性の向上など、物性が向上します。

        図25.綿繊維の断面と外観
        図25.綿繊維の断面と外観
        図26.マーセライズ加工の原理
        図26.マーセライズ加工の原理2)


      7. 羊毛防縮加工
         羊毛は、スケールと呼ばれる鱗片状の外観をしています。染色加工や着用中・洗濯時に、水分などを含んだ状態で揉まれたり摩擦されたりすると、スケール同士が絡み合い、縮絨やフェルト化が生じることがあります。 このため、羊毛素材では、羊毛原綿やスライバー(糸の前段階の繊維のロープ状の束)や織物の段階で、薬剤(次亜塩素酸ナトリウムなど)によってスケールを取り除いたり、樹脂加工による表面凹凸の平滑化などを行ない、ウォッシャブルウール化を実現しています。
        図27.羊毛繊維の側面(スケール)
        図27.羊毛繊維の側面(スケール)
        正常な状態のウール
        正常な状態のウール


        水・酸・アルカリの影響を受け、スケールの開いた状態
        水・酸・アルカリの影響を受け、スケールの開いた状態
        摩擦を受け、立ったスケール同士が絡み合った状態(フェルト化)
        摩擦を受け、立ったスケール同士が絡み合った状態(フェルト化)

        図28.フェルト化のメカニズム



      8. プレセット
         ナイロンやポリエステルの合成繊維の織編物を染色する前に行うヒートセット(熱固定)のことです。
        合成繊維の織編物は、原糸、加工糸、織編などの段階で各種の歪みを受けているため、この歪みを取り除き、染色時の縮みやしわ発生を防ぐために実施されます。生機または精練漂白後、ヒートセッターによって、ポリエステルでは150~190℃、15~60秒程度のプレセットが行われます。


  6. 染料について
     ナイロン、綿、ポリエステルなど、各種繊維を染色する際、一種類の染料ですべての繊維が染められるのではありません。染料には、繊維と染料の化学構造上、表4のような組み合わせがあります。したがって、綿とナイロンの混用素材を無地に染める場合は、反応染料と酸性染料の2種類の染料が必要になります。
    表4.繊維と染料
    繊維主な染料
    セルロース系(綿・レーヨンなど)反応性染料
    ナイロン酸性染料
    アクリルカチオン染料
    酸性染料
    ポリエステルレギュラー分散染料
    カチオン可染カチオン染料

    • ナイロンと毛が同じ酸性染料が用いられているのは、ナイロンと毛の化学構造が似ているからです。
    • アクリルを染めるカチオン染料は、鮮明色が可能で、湿潤堅ろう性に優れています。
    • 綿などセルロース系の繊維は、主に反応染料が使用されます。染色堅ろう性に優れていますが、経時劣化して染色堅ろう性が低下するものもあるので注意してください。ジーンズ素材などは、スレン染料が使用されます。
    • ポリエステルにはレギュラータイプとカチオン可染タイプがあります。レギュラータイプは、分散染料で染色されますが、染料移行や昇華汚染が弱点となっています。カチオン可染タイプとは、カチオン染料で染まるという意味です。「カチオン染料」とは「プラス電気を持った染料」のことですから、ポリエステル繊維の分子構造にマイナス電気をもった座席を取り付けることによって、カチオン染料が先着するポリエステルのことです。このタイプは、当然、染料移行や昇華汚染のリスクはありません。


  7. 色合わせ
    1. 色合わせ(カラーマッチング)とは
       染色工程での色合わせで重要なことは、色見本と同じ濃度、色相の染色物を再現することです。
       染色加工場は色見本が提示されると、ビーカー染めを行い、色相と染料レサイプを決定します。この時の色相を数値化し、本生産加工と比較検討する色目管理が実施されます。


    2. 色合わせの方法
      1. CCMについて
         かつては勘と経験で染料の配合処方(レサイプ)を決定していた時代もありましたが、近年では測色技術とパソコンの発達によって、色を数値化して管理する「コンピュータカラーマッチング(CCM)」が一般化しています。
        しかし、最終的には、人間の目による色の判定は大切であることは変わりません。


      2. ロット間のばらつき
         同一ロット内では、色のばらつきは発生しにくいですが、染色のロットが異なると、色相のばらつきが生じることがあります。特に継続加工では、直近の色目に合わすことを数年繰り返すと、当初の色相とかけ離れたものになることがあり、常に基本カラーとの比較が重要となります。継続性の高い各種ユニフォームや、学販衣料は、特に配慮していただきたいと思います。


      3. 演色性について
         演色性とは、光源の分光分布が変化すると、人間の目には異なる色相に感じる現象です。例えば、北窓自然光、白熱ランプ、蛍光灯で生地を見ると、色相が違って感じることがあります。光源が変われば色が合わないケースもあり、色相のチェックは、標準光源など一定の光源で確認し、比較検討することをお勧めします。


(参考文献)
1) 文化出版局「アパレルの素材と製品」P.130より引用
2) ダイセン株式会社「知っておきたい繊維の基礎知識524/繊維加工編」P.205より引用

(次回のアパレル散歩道 / 5月1日発行)

次回は、ものつくり原点回帰シリーズ~染色2~を予定しています。

コラム : アパレル散歩道40
~魅力ある商品を開発するために~
テーマ : ものつくり原点回帰シリーズ ~染色2~


発行元
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター 事業推進室 マーケティンググループ
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp URL:https://nissenken.or.jp

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Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)

清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)

43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウェアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。趣味は27年間続けているマラソンで、これまで296回の大会に参加。



社外経歴
日本繊維技術士センター理事 技術士(繊維)
文部科学省大学間連携共同教育事業評価委員
日本衣料管理協会理事 TES会西日本支部代表幹事
(一財)日本繊維製品消費科学会 元副会長

アパレル散歩道

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