2015/01/30
No. 33 「製品プリントにもいろいろな手法があります…」
思いつきラボ
2016/01/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2016年1月30日時点の内容です。
高視認性安全服の規格、JIS T 8127 が発行されてから3ヶ月ほどの時間が経過しましたが、問い合わせやセミナーも頻繁に行われるようになっています。
作業従事者の安全が最優先の規格なのですが、すでに反射素材や蛍光素材を使っている商品は多くあるので、新たな基準ができたこの機会に見直そうという動きにもつながっています。学童の通学時や課外授業用の衣服や夜のジョギングウェアや高齢者向けの外出着など、さらに雑貨にも検討が進められていて、ランドセル・バッグ・シューズ・傘・帽子など多種多様におよびます。
特徴的な規格として蛍光色の検査があるのですが、基準となっている色は蛍光イエロー・蛍光オレンジレッド・蛍光レッドの 3 色のみの指定になっています。蛍光色ならグリーンやピンクなど他にも目立つ色があるのに・・・と疑問に思われるかたも多く、質問をよく受けることがあります。
これは高視認性と同時に国際ルールとして、 赤色は禁止、黄色は注意、緑色は安全、青色は案内という取り決めがあり、高視認性安全服は車両などの運転者から見たときの警告色ということで、イエローとレッドとその中間色のオレンジが 指定色となっているのです。
決して蛍光グリーンや蛍光ピンクが目立たない色という意味ではないのです。
また、蛍光レッドの基準を満たす生地は、いまのところまだ数点しか検査で通ったものはないのですが、経験的にも鮮やかな蛍光のレッドというものをあまり目にすることはありません。
もの造りの人たちからすれば蛍光レッドの生地を造ってもあまり輝度があがらないので、蛍光イエローや蛍光オレンジと比べると視認性は低いのではという質問もあがります。その通りなのですが、先ほどの説明どおり色としての役割からはどうしても必要な色目ということになっているのです。
筆者の所属している防災・安全評価グループはもともと標識や塗料などの検査を行っているのですが、反射素材や蓄光素材と同様に蛍光素材も安全素材としての扱いになっています。
ところが繊維の業界では、蛍光の生地を生産していても染色堅牢度試験などは一般色と同じ扱いで検査をすることが多いのです。これは蛍光色に関して今までは特別な基準や試験がなかったからなのですが、今回の規格が安全服として定められたものなので、ようやく蛍光色についていろいろな基準が設けられたことになっているのです。
ということで、繊維業界でも蛍光色は馴染みのある色なのですが、試験や基準となると一般色と同等に扱われているので、ちょっと“蛍光”について整理しておきましょう。
今回制定されたJIS T 8127 高視認性安全服の中に記載されている“蛍光”の定義は
蛍光材料(fluorescent material)
吸収された波長より長い波長の可視域の電磁波を発する材料。
注記:可視光線以外の光にも反応して 一般色よりも鮮やかに発色する。
とあります。
要は、可視光に反応する電磁波のほかにそれより低波長の電磁波にも反応してより鮮やかに見えるものということなのです。注記にある可視光線以外とは紫外線のことを指しています。
染色に関していえば、染料の中に蛍光物質の入っているものが蛍光染料となるのですが、ポリエステルを染める分散染料を例にとると、分散染料で市場に出回っている蛍光物質入りのものとなると、蛍光イエローと蛍光オレンジと蛍光ホワイトくらいしかありません。
蛍光のグリーンは一般色のグリーンに蛍光イエローを加えているのです。よく見かける蛍光グリーンの色はイエローグリーンに寄ってしまうのはそのためなのです。
蛍光ピンクは一般色のレッドに蛍光のホワイトを加えれば可能です。
蛍光ブルーの生地を見かけないのは、もともと蛍光物質入りの分散染料がないからということも理由にあげられるのです。
蛍光色の測色試験も一般色を調べる積分球方式ではなく、45/0°方式が指定されています。蛍光色は反射機能が加わって鮮やかに見えるのですが、一般的な積分球方式だと積分球の内部で拡散反射が起るので、反射光を繰り返し拾う可能性があり実際の輝度率よりも高く表示されることになります。
45/0°方式は45°の角度で光が入って0°の角度でしか観測しないので、繰り返し反射光を拾うことがないのです。
興味がないと何の話か理解しにくいですが、蛍光色は反射現象によってより鮮やかに発色するので、積分球内でダブッて試料に光が当たらないようにして、反射光を除去して計測しなさいということなのです。
JIS T 8127 高視認性安全服の蛍光色は、色度座標と輝度率によって規定されています。色度座標はCIE 1931 色度図を使用します。最もよく使われる xy色度図です・・・と書くと別の色度図があるようになりますが、CIE色度図にも CIE 1964 色度図というものがあり、x₁₀ y₁₀色度図と表記されているものです。
なんで色度図がいくつもあるの?・・・ということになるのですが、人間の目で色を見たときに、小さい面積で見るものと大きな面積で見るのでは異なって見えるという結果に基づいています。
こむずかしい話になってきたので、色度図は一つではないことだけ覚えておいてください。
もうひとつの輝度率ですが、イエローの輝度率が 0.70 以上、オレンジレッドが 0.40 以上、レッドが 0.25 以上という基準になっています。
輝度率という表現になっていますが、理論的な白色に対してどれくらいの明るさがあるかということで判断してもらってかまいません。要は白を1としたときにイエローは70% 以上の明るさがあればいいですよ、という基準なのです。レッドが25%以上となっているのであまり明るくないことが理解できます。
新しい規格ができたことで、蛍光色は一般色と同じ扱いにはできないという考えが出てきたことと、蛍光色の基準を満たせば安全性が向上するということになるので、いままで色目の判断だけで蛍光色を選んでいたのが少し目先が変わってきています。
JIS T 8127 高視認性安全服では蛍光色は3色だけですが 、EN 1150 高視認性衣服 – 一般向 という欧州規格には蛍光グリーンから蛍光ピンクまでの 8 分類の記載があり、この規格も注目されはじめているので蛍光色がファッションのトレンドになるかもしれません。
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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp
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