思いつきラボ

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No. 22 「化学繊維には13種類の合成繊維があります…」

2014/08/15

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2014年8月15日時点の内容です。

繊維の雑学的な基礎知識の4回目になります。前号 No.21 では再生繊維と半合成繊維のお話をしたので、今回は合成繊維からになります。家庭用品品質表示法の指定用語は29種類なのですが、そのうち13種類が合成繊維に区分されています。繊維のグループでは合成繊維が最も種類が多いということになります。

一覧を見ても衣料品業界に携わっている人には馴染(なじ)みのない名称がいくつもあると思います。一般衣料品で使用される主要な合成繊維は、ナイロン・ポリエステル・アクリル・ポリウレタンくらいで他はあまりお目に掛かりません。とはいえフィルムや樹脂では聞き覚えのある名前なので違和感は感じにくいかもしれません。合成繊維は化学的に合成した高分子で作られています。天然繊維の蛋白質も高分子で形成されていてその組成を真似てつくられています。

さまざまな合成繊維 その1

ナイロンは工業化に初めて成功した合成繊維で、1938年アメリカ デュポン社がナイロンと命名して工業化されたというのが定説になっています。あくまで合成繊維で初ということで、化学繊維では再生繊維のレーヨンが1880年代には生産を始めています。化学繊維で初はレーヨンで、合成繊維で初はナイロンということです。ナイロンは天然繊維の絹を模(も)して造られたもので、この発明によって日本の絹産業の衰退が始まるのです。若い人には通じにくいかもしれませんが、戦後強くなったものは「女性と靴下」と言われていてこの“靴下”がナイロンストッキングのことを意味しています。ナイロンが酸性染料で染まるのは絹の組成を真似て造られたからで、見た目だけでなく分子構造まで似せた技術はすごいことなのです。

ストッキングが出てきたのでナイロンのタイプについて触れておきますと、ナイロン6・ナイロン66・ナイロン11・ナイロン610などナイロンには後ろに番号がつけられているものが多いです。特にストッキングはナイロン6 使用とかナイロン66使用とか表記されていますが、この番号は化学組成の違いを表わしています。ナイロン6と11は1種類のモノマー(単量体)の炭素数を表わしたものになっています。ナイロン66やナイロン610は2種類のモノマーの炭素数をそれぞれ示したもので、ナイロン66は6個の炭素と6個の炭素を意味し、610は6個の炭素数と10個の炭素数ということになります。

ナイロン6とナイロン66の違いですが、糸段階ではまず違いがわかりません。ストッキングでナイロン6は綿に近い肌触り66はシルクに近い感触などと表現されることがありますが、筆者はストッキングを穿(は)いたことがないので(当たり前です!!)その違いが分かりません。実際には66のストッキングの方が生産量が多いところをみると、違いは認知されているのかもしれません。生産量は66の方が少ないので価格的には66の方が高価になります。ナイロンの資材用途は漁網・テニスラケット用ガット・釣り糸・ギター弦・テグスなどがあります。

さまざまな合成繊維 その2

次にアラミドですが、ナイロンとは同じグループの繊維になります。どちらもポリアミドという重合体なのですが、結合構成が異なることでナイロンとは分類されています。アラミドは高耐熱性や高強度であることが最大の特徴で、消防服・宇宙服・防弾チョッキなどの用途に使われています。衣服ではありますが、一般衣料ではありませんので着用する機会はほとんどなく、身近な繊維ではありません。資材用途は車のタイヤ・ヘルメット・光ファイバーケーブルなどに使われています。

ビニロンはナイロンに次いで世界で二番目に工業化された合成繊維です。しかも発明したのは日本なのです。1939年とありますので、ナイロンとほぼ同時期に開発されたことになります。合成繊維の中では唯一といってもいい吸湿性の高い素材です。綿に近い風合いを持つことで、以前は学生服やレインコートなどの衣料品用途もあったのですが、現在ではまず見ることがありません。資材用途としては漁網・ロープ・ホースや濾過布(ろかふ)などで見受けられます。ビニロンには水溶性ビニロンという水に溶ける性質を持った糸があり、昭和50年代中頃にはこの糸を使ったニット生地が大流行したことがありました。まだダブルニット編機の性能や編技術が未熟だった頃に、例えば綿糸と水溶性ビニロンを引揃えて編み染色時に高温度で染めることで、水溶性ビニロンが溶けてパイルを構成するような生地が作られました。これが、当時では今までにない新しい素材として特にスポーツウェアで取り上げられました。水に溶ける糸もあるのです。

ビニリデンも衣料品には使われることのない繊維で、資材用途としては耐薬品性にすぐれていることが特徴で、薬品を塗布する防虫網やロープなどが主な商品になります。ビニリデンという言葉は聞き慣れないかもしれませんが、フィルムのサランラップはよく知られていると思いますが、このサランは旭化成のビニリデンの商標なのです。そういえばクリスマスツリーに飾る雪に見立てた白い綿をサランの名前で旭化成さんが取り扱っています。ビニリデンはあまり馴染みがないように思われますが、実は身近なところで使っているのです。

ポリ塩化ビニル、いわゆる塩ビでビニールと呼ばれるフィルムは、本来は塩化ビニルのことなのです。塩ビやビニールやPVCは頻繁に使っている言葉と思いますが、繊維となるとこれもあまり見かけることがありません。数年前に焼却炉施設からダイオキシンが検出され繊維業界でも使わない方向になってしまったので、さらに繊維では見なくなりました。資材ではビニールハウスやビニールテープ等々市中にはいくらでも出回っていますが、資材繊維という意味合いでは少ないかもしれません。

ポリエステルはナイロン、アクリルと並んで繊維業界ではもっとも多く使われている素材です。ポリエステルが発表されたのが1941年となっているのですが、実のところはナイロンよりも先に開発はされていたのです。1930年にナイロンを開発したカローザスという人がポリエステル系の繊維を造ることに成功していたのですが、実用に適さないと判断して研究を取りやめたとあります。時代背景からすると、合成繊維は石炭から造られていて、その後石油を原料とするようになりました。ポリエステルの研究開発はイギリスで継続されて工業化にたどりついたのですが、どうもポリエステルは石油を原料にすることのほうが相性がよかったのかもしれません。後発ではあるものの、国内ではナイロンよりも生産量はポリエステルの方が多くなっています。

次回も繊維の基礎話

またまた長くなってしまったので今回の原稿はこの辺りで終えたいと思います。
文字数の制限を意識せずに書いているので、どうしても長くなる傾向にあります。次号は合成繊維のつづきとなります。
夏季休暇の時期ですが、暑さ対策や急な気象変化にはくれぐれも気をつけてお過ごしください。

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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp

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