2015/09/30
No. 49 「“特定芳香族アミン”って何のこと…」
思いつきラボ
2014/10/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2014年10月30日時点の内容です。
ようやく過ごしやすくなってきたなと思っていたら、10月27日午後に近畿地方で木枯らし1号が、そして27日夜に東京都心でも木枯らしが吹いたと発表がありました。東京都心の木枯らしは昨年より15日も早いとのことで、冬の足音が近づいています。紅葉を楽しむような快適な時期が年々減っているような気がします。
さて今回のテーマですが、10月に体育の日があったからということでもないのですが、タイトルのようなちょっとした疑問を感じた方からの質問です。
まず、筆者の小中学生時代を思い起こしても体操着・体操服という呼び方で横文字はほとんど使った記憶がありません。高校時代(昭和40年代前半)にトレパンという白いパンツを穿いていた気がしますが、ニットではなく織物の長ズボンでした。病院で見掛ける看護師さんのパンツが近いイメージかもしれません。ただ1964年(昭和39年)の東京オリンピック以降スポーツブームとなり、ウォームアップスーツをジャージと呼び始めたところがあったような気もします。頼りない原稿で申し訳ないですが、アバウトな記憶です。体操服から入ってしまったので自信のない文章になりましたが、ジャージは本来は平編み生地の名称です。
ニット生地の平編みの英語表記を調べてもらえば分かりますが、プレーンスティッチ(plain stitch)とジャージースティッチ(jersey stitch)と出てきます。ジャージは和製語でそのもとになっているのがジャージーということです。ニットの平編みとは天竺(てんじく)のことですが、イギリス海峡のジャージー島で作られていた厚手の編地のことを指していて、その組織が平編みだったということからジャージーと呼ばれるようになったと考えられています。
とはいえ、ニット生地担当の筆者でもジャージはニット衣料の意味合いでとらえています。というのも、スポーツウェアでラグビーのユニフォームをラグビージャージと呼ぶのでその影響が強いのかもしれません。今のラグビーシャツはフィットタイプになってしまったので、生地は天竺ではありませんが、数年前までは先染めボーダー天竺の生地を使っていたのです。ラグビースポーツも歴史のある競技ですし、発祥がイギリスであることからジャージー島の厚手の平編み生地を使っていても不思議なことではありません。
ということで、ジャージはスポーツ衣料で、ジャージーは平編み生地という解釈でいいと思います。質問の“ジャージ”は体操服という意味では合っていますが、体操服だけに限定することはできないと思います。ファッション用語として使われる場合はジャージ風なカジュアルウェアもジャージと呼ぶこともあるので、現在の解釈としてはスポーツライクなニット衣料という感じだと思います。また時代が変われば意味合いも変化するかもしれませんが、感覚的なとらえかたになっていて、厳密な定義付けはできないと思います。
ジャージと呼んでいるトレーニングウェアはまず天竺生地で作られたものは少ないです。一般的なトレーニングウェアはダブルニットの生地を使用しますので、シングルニット組織の天竺生地を使うことはほとんどありません。シングルニットとダブルニットの違いは、針の配列が1列か2列の差によります。説明が伝わりにくいかもしれませんが、ダブルニットは両面から生地を編んでいるとイメージしてください。ジャージーの本来の意味である平編み生地が、ジャージになると全く意味の違うものになっています。ファッション用語の恐さを感じます。
一方で、ニット生地業界の方でも平編み生地ではない使われ方をしています。ジャージを編物・メリヤス・ニットと同義語として扱われている場合も多く、タテ編ジャージとかヨコ編ジャージとかシングルジャージなどの文字を見掛けます。天竺ジャージとなるとさすがに抵抗を感じますが、ジャージ=編生地と考えれば天竺編生地となるので意味は通じます。ファッション用語に限らず、日本語英語には本来の意味とかけ離れた意味で使われているものがあるということです。
ややこしいので今一度まとめておきますと、“ジャージ”とは本来はイギリス ジャージー島で作られていた厚手の天竺編のニット生地のことですが、現在ではスポーツ衣料やカジュアル衣料のニット製品のことを指すようになっています。またニット生地のこともジャージと呼ぶことがあります。というようなまとめとなります。繊維業界の用語にはこんな曖昧な表現をする言葉が多くありますので、小さな疑問を持たれたら、是非この思いつきラボに連絡ください。一緒に考えたいと思います。
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