2022/07/01
MADE IN GREEN by OEKO-TEX®を知ろう 第2回 エコテックス® メイド イン グリーンの仕組みとは
おさえておきたい基礎知識
2026/05/27
初夏の気配が濃くなり、衣替えの季節がやってきました。新しい素材や機能性をうたう製品が増える中で、製品の安全性や環境配慮への関心も高まり、アパレル業界では化学物質管理の重要性が一段と高まっています。国際的な規格として知られる「エコテックス®認証」や「ブルーサイン認証」、そして多くのグローバルブランドが参照する「AFIRM RSL」など、化学物質管理に関する枠組みを目にする機会も増えてきました。しかし、名称はよく聞くものの「結局どう違うのか」が分かりにくいという声も少なくありません。

今回の「化学物質のいろは」では、主に繊維製品を対象としたRSL(制限物質リスト)に焦点を当て、それぞれの特徴や規制物質の比較、そして実務で押さえておきたいポイントまで、化学物質規制の迷子にならないために3者のRSLが「どう違うのか」を紐解いていきます。
RSL(Restricted Substances List:制限物質リスト)とは、製品に含まれる有害な化学物質の使用を制限・禁止するリストで、各ブランドや認証団体などが独自に設定しています。製品づくり全体を通して化学物質リスクを管理するための基盤として活用されています。
具体的には、消費者の安全を守るための製品基準として、各国法規制への適合を確認するチェックリストとして、ブランド独自の品質・サステナビリティ方針を示す指標として、さらにサプライチェーン全体で一貫した化学物質管理等に活用されています。
エコテックス®認証とは、エコテックス®国際共同体が運営する、製品に残留する有害化学物質の安全性を評価する国際的な製品認証です。ニッセンケンは日本国内で唯一の認証機関としてこの国際共同体に加盟しています。
エコテックス®認証は、国際的な要件や各国の法規制に準拠しており、規制対象物質の幅が広い点が特徴です。製品サンプルを認証機関で試験する必要があるため、「実際に試験された製品である」という高い信頼性を消費者に提供できます。また、世界的に普及しており、店頭でラベルとして“見える安心・安全”を伝えられる点も大きなメリットです。さらに、用途別に4つのクラス分けがあり、乳幼児向け製品には最も厳しい基準が適用され、カーテンなどのインテリア製品では、肌に触れる製品よりも緩やかな基準が設定されているため、使用シーンに応じて安全性を合理的に評価することが可能です。
エコテックス®国際共同体は、化学物質規制の最先端をいく欧州で発祥した組織であり、毎年認証に適用する試験基準、規制値、ガイドラインの更新を行っています。そのため、SVHC(高懸念物質)をはじめとする最新の規制対象物質にも幅広く対応できる仕組みが整えられています。

図1 エコテックス®ラベル
ブルーサイン認証とは、繊維業界において、環境・労働・消費者の観点における持続可能なサプライチェーンを経た製品に付与される国際的な認証です。化学物質規制の最先端をいく欧州で発祥した国際的環境認証機関 bluesign® technologies ag により運営されています。認証を取得することで、消費者の安全性の確保、労働者や環境への影響の最小化、資源の節約を担保できます。
この認証では、製品の使用状況に応じて3つの使用範囲(A / B / C)が定められています。Aは乳幼児向けや強い発汗が想定される肌接触製品に適用され最も厳しく、Bは一般的な肌接触製品、Cは肌に触れない製品に適用されます。使用シーンに合わせて規制値が段階的に設定されている点が特徴です。
AFIRMとは、アパレル&フットウエア国際RSL管理グループであり、サプライチェーンへの参加者が製品の品質や安全性の向上、また環境負荷を低減することを目的としています。基準は法規制及びブランド要求に基づいています。また、推奨される試験方法に加えて、各化学物質がどの工程や素材で使用される可能性があるかもRSL内に明記されており、サプライチェーンの現場でそのまま活用しやすい構成になっています。
ここでは代表的な規制物質を例に、各RSLの特徴を比較します。
表1 RSL比較表
| 規制物質 | OEKO-TEX® (スタンダード100) Textile(Annex 6) | AFIRM Textile | bluesign® Textile |
|---|---|---|---|
| ホルムアルデヒド | クラスⅠ(乳幼児用):16 クラスⅡ(肌接触大):75 クラスⅢ(肌接触小):150 クラスⅣ(装飾用):300 | 乳幼児:16 大人/子供:75 | 乳幼児:15 肌接触あり:75 肌接触なし:300 |
| フタル酸エステル類 | 各100/計250 | 各500/計1000 | 各50/- |
| PFOAおよびその塩 | 25 | 25 | 25 |
| PFOA関連物質 | 25 | 1000 | 1000 |
| PFOSおよびその塩 | 25 | 25 | 25 |
| PFOS関連物質 | 25 | 1000 | 1000 |
【単位】ホルムアルデヒド・フタル酸エステル類:mg/kg
PFOAおよびその塩・PFOA関連物質・PFOSおよびその塩・PFOS関連物質:µg/kg
※本表では、2026年5月時点の一部の規制物質を抜粋して記載しています。
最新の規制値及び規制物質に関しては、各団体が公表する最新のRSLをご参照ください。
乳幼児向け及び肌に触れる製品については、エコテックス®RSL、ブルーサインRSL、AFIRM RSLのいずれも厳しく同等の規制値を設けています。また、肌に触れない用途まで細かく基準区分を設けているのはエコテックス®RSLとブルーサインRSLになります。
フタル酸エステル類について、REACH規則では制限対象となるフタル酸エステル類の規制値を1000 mg/kgと定めています。これに対し、エコテックス®RSLは各国の法規制よりも厳しい100 mg/kgの基準を採用しています。これは、製品中に残留する化学物質のリスクを最小化することを目的として規制値が低く設定されています。AFIRM RSL は法規制レベルに準拠した基準を設定しており、ブルーサインRSLは3者の中で最も厳しい管理体系となっています。
PFASについて、POPs条約ではPFOA・PFOSとその塩について25 µg/kgを超える含有、またPFOA・PFOS関連物質について合計1,000 µg/kgを超える含有が原則禁止されています。エコテックス®RSLは、この国際規制を踏まえつつ、フランスのPFAS規制厳格化を考慮し、PFOAおよびその塩・PFOA関連物質・PFOSおよびその塩・PFOS関連物質を25 µg/kgに設定し、より高いレベルの製品安全性を確保する基準となっています。一方で、ブルーサインRSLと AFIRM RSL は国際規制との整合性を重視し、PFOA関連物質・PFOS関連物質について規制値1000 µg/kgを採用しています。
化学物質管理の基準は、国際規格・法規制・ブランド要求が複雑に絡み合うため、現場では「どれを優先すればいいのか」、「どの基準を見れば正しいのか」と迷う場面が少なくありません。ここでは、日々の問い合わせでも特に多い“つまずきポイント”を整理し、実務で押さえておきたい視点をまとめます。
▶ どの基準を優先すべきかわからない
複数の基準が存在すると、現場では「結局どれを満たせばいいのか」が曖昧になりがちです。基本的な考え方としては、まず各国の法規制に適合していることが重要となります。そのうえで、ブランド独自のRSLや国際認証の基準が追加されるイメージです。
エコテックス®認証は世界各国の法規制を包括的にカバーしているため、認証を取得している製品は、海外展開もスムーズになります。一方で、ブランドRSLはブランド独自の方針やサステナビリティ要求が反映されているため、法規制より厳しい値を設定し、“より高い安全性”を求めるケースもあります。そのため、海外向け製品では、国ごと・ブランドごとに要求が異なることを踏まえ、最も厳しい基準に合わせて設計するという考え方が実務ではよく採用されています。
▶ エコテックス®RSLは、ブルーサインRSLやAFIRM RSLをカバーしている?
エコテックス®RSLは、ブルーサインRSLやAFIRM RSLと多くの共通点を持っていますが、これらを完全にカバーしているわけではありません。各RSLは目的・対象範囲・更新頻度が異なるため、相互互換ではなく「重なりが多い別体系」として理解することが重要です。 また近年、エコテックス®RSLではブルーサインRSLやAFIRM RSLを考慮した規制の更新が加速しています。エコテックス®RSLの最新動向をおさえる事や、エコテックス®RSLに基づく化学物質管理が、今後ますます重要になってくると考えられます。
エコテックス®、ブルーサイン、AFIRMは、いずれも化学物質管理において重要な役割を果たしていますが、どれが優れているかを比較するものではありません。最終的には、製品の用途や顧客の要求に応じて、どの基準を採用するかを判断する必要があります。
企業としては、 「どの基準を満たすべきか」ではなく、「どの基準をどの目的で使うのか」 を明確にすることが、化学物質規制の迷子にならないための第一歩になります。
エコテックス®RSLは、公式ホームページからダウンロードしていただけます。自社のRSLとしての活用や、エコテックス®認証の規制値・規制対象物質の確認に非常に便利ですので、ぜひご利用ください。
また、昨年スタートしたニッセンケン公式Instagramでは、化学試験の裏側や日々の業務に加え、化学物質に関する豆知識や最新トピックスを発信しています。ぜひこちらもチェックしてみてください。
【有害化学物質に関するお問い合わせ先】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
ライフ アンド ヘルス事業本部 化学試験事業部
E-mail : oeko-tex@nissenken.or.jp
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