2013/10/18
No. 1 「防風と透湿の矛盾について考えてみましょう…」
思いつきラボ
2017/04/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2017年4月15日時点の内容です。
新年度となる 4月を迎えました。桜が咲きほこって春らしくなったり、雪が積もったり、夏日を記録したり相変わらず気候は気まぐれのようですが、新社会人や新一年生を見掛けることが多くなりました。
4月というだけでなんとなく気持ちが明るくなります。やはり桜の淡いピンク色がウキウキ気分にさせてくれるのかもしれません。
桜色といいながらも4月の陰暦の呼称は“卯月(うづき)”で、卯の花が咲くころの月という説があります。卯の花は空木(うつぎ)の花で白い花をつけるのですが、春の色のイメージとしては白ではなく、桜色か菜の花の黄色といったイメージの方が強い気がします。卯月は陰暦の 4月なので 6月の初夏くらいの時期にあたりますので当然の話なのですが・・・。
今回のテーマは 4月 1日から繊維製品品質表示規程の変更があったのですが、その中で繊維名の指定用語から外れた“プロミックス”と“ポリクラール”のお疲れさま原稿にします。改正後の表示についてはアナウンスも多いと思いますので充分理解して取り組んでいただきたいと思いますが、廃止となった繊維について今後話題となることも少ないと思いますので、どんな繊維だったかくらいは思いつきラボでは残しておきたいと思い取り上げておきます。
2016年 12月に洗濯表示の改正があったばかりですので、続けて家庭用品品質表示法の改正がなされたということになります。
“プロミックス”は半合成繊維に区分されている繊維でミルクと合成物であるアクリロニトリルと混ぜ合わせて結合させた動物性たんぱく質系繊維のことです。1970年代前半に開発された繊維で、筆者が紡績に入社したころには話題の繊維ではありました。絹に似た繊維をカイコ以外で作ろうとしたもので、絹と同じ動物性たんぱく質のミルクカゼインが主原料になっています。絹を目標にしているので風合いや光沢感はシルキーなタッチで、さらに絹よりも軽いという特徴がありました。絹と同じ動物性なので絹を染める染料で色付けができ、しかも発色性も優れているものになっています。吸水拡散性に優れているのでベトツキ感がなく、直接肌に触れる肌着や靴下などに適していた商品でした。もちろん絹織物と同じく和装品にも使われていました。
その後シルキータッチのナイロンやポリエステルなどの合成繊維が開発されて、価格的な競争力のない“プロミックス”の出番がなくなり、現状では市場から姿を消してしまいました。
“ポリクラール”は合成繊維に区分される繊維で、ポリビニルアルコールという合成樹脂が主原料となっています。衣料品の用途で使われることはまずありませんので、繊維業界やアパレル業界にいてもあまり馴染みのない繊維です。
最大の特徴が難燃性でカーテンやカーペットなどのインテリア商品に使われていました。防災・安全評価グループの立場でいえば、災害時の持ち出し袋や手持ち式金庫などの用途に使用されています。燃えにくいということを目的にした用途にしか注目されないので、市場性の少ない繊維ではありました。
難燃性繊維よりも防炎剤の開発が進んでしまい、他の合成繊維に防炎加工や難燃加工をすることで燃えにくい生地が作れるようになったため、繊維自身が燃えにくい“ポリクラール”の需要も減ってしまったということなのです。
ということで、今回の家庭用品品質表示法の改正で“プロミックス”と“ポリクラール”という指定用語は廃止になりました。ちなみに代表的な商標でいえば“プロミックス”は東洋紡の「シノン」で、“ポリクラール”は興人の「コーデラン」が有名なところになります。名前くらいは聞いたことがあるかもしれませんが、市場ではあまり見掛けない繊維になってしまいました。お疲れさまでした・・・。
指定用語に関する改正としては“指定外繊維”という表記もなくなります。指定外繊維が増えてしまったことも要因かもしれませんが、繊維の由来がわかるように
「植物繊維」「動物繊維」「再生繊維」「半合成繊維」「合成繊維」 「無機繊維」「分類外繊維」「羽毛」「複合繊維」
の9種類の指定分類用語になりました。
消費者がよりイメージしやすい言葉を用いて表示するために、用語の整理を行ったということになっていますが、慣れるまで少し時間がかかりそうです。2017年 4月 1日施行ですが、経過措置として 2018年 3月 31日まで猶予期間がありますので、この1年はどちらでも良いということになります。
当社にも新人が入ってきて華やいだ雰囲気になっています。新人研修セミナーで筆者も“繊維の基礎知識”という講話を担当したのですが、皆さん真剣に聞いてくれていました。
筆者が新社会人になったのはもうすでに 40数年前の話なのですが、久々に当時のことが思い出されました。ベテランにありがちな取り組む姿勢がちょっと雑になっているかもしれません。
新人さん達を見習って 気分一新 明日からガンバロー・・・。(今から頑張れ!!)
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp
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