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アパレル散歩道 第93回 : シリーズ【アパレルのモノつくりQ&A】⑦ / 「糸編」その1

2026/10/01

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アパレルのモノつくりQ&Aでは、今回から4回シリーズで「糸」に関する内容を取り上げます。

2026.10.1

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 アパレルのモノつくりQ&Aでは、今回から4回シリーズで「糸」に関する内容を取り上げます。
 私たち繊維・アパレル業界関係者は、以前に比べて糸そのものをしっかり見たり、触れる機会が少なくなっているように感じます。しかし、仕事をする上で、糸の種類や性質を知っていることはとても重要であり、本コラムで改めて糸に関する認識を深めていただきたいと思います。

■ 糸編(その1) ―【Q&A9 繊維の集合体である「糸」を知り、業務に役立てよう】 ■
 糸は繊維の集合体であり、テキスタイル(布)を構成する重要な材料となります。糸の性質が、テキスタイルの性質を決定すると言っても過言ではありません。
Q&A-9
アパレルメーカーで材料仕入を担当しています。糸は繊維から作られて、また繊維には天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維があり、それらの種類の違いによって、糸の製造方法や特性が異なると聞いています。糸の製造について、具体的に教えてください。

図1.糸のイメージ
図1.糸のイメージ1)



  1. はじめに
     繊維の集合体である「糸」は、古代より私たちの生活や社会と密接に関係する貴重な生産物でした。その証拠の1つが私たちの使用している「糸編の漢字」です。先人達は文字が無い遥か昔から繊維製品を使用していました。その繊維製品に長く濃厚に関わった記憶が、紀元前1300年頃考案された漢字にも色濃く残っています。
     「糸編がつく漢字」の一部を表1に紹介します。いずれも繊維に関連するものです。
    図2.古代エジプトの衣服例(筆者撮影)
    図2.古代エジプトの衣服例
    (筆者撮影)

    表1.糸編がつく漢字の例とその意味

    紡
    つむぐ
    経
    たて糸
    絹
    きぬ
    繊
    細い繊維
    紗
    薄い織物
    綛
    糸を巻いた束(かせ)
    綿
    めん、木綿
    絽
    薄地の絹織物
    綾
    あや織
    緬
    やわらかい絹
    緞
    厚地で光沢のある絹織物
    纖
    「繊」の旧字体
    緯
    よこ糸
    縞
    しま模様
    羅
    あみ、薄く透ける織物
    紺
    藍染めの色

  2. 紡績、製糸、紡糸について
     さて、糸製造の関連用語に「紡績」、「製糸」、「紡糸」があります。それぞれよく似た意味と感じるかもしれませんが、最初にこれらの用語の違いを整理しましょう。
     まず「製糸」ですが、日本における「製糸」は、群馬県の世界遺産「富岡製糸場」のように、絹糸(シルク)業界独特の用語と理解ください。続いて「紡績」は短繊維から作る糸、そして「紡糸」は高分子から作る糸のことを指します。表2でそれぞれの特徴等を詳しく説明します。



    ~繭の漢字~
    繭まゆ
    繭

    「まゆ」という漢字は、漢字検定にもよく出題される会意文字と言われるもので、2文字以上の漢字の形・意味を組み合わせています。
    餌になる桑の葉の「草かんむり」、かいこの幼虫の「虫」、そして絹糸の「糸」の3つが組み合わされた非常に興味深い漢字です。ちなみに、繭のことを英語では、コクーン(cocoon)と言います。


    表2.紡績と製糸と紡糸の違い
    意味 工程の概要 原料など 特徴 糸の例
    紡績 短い繊維を平行に並べ、引き伸ばしながら撚りを加えて、1本の糸にまとめる 開繊→混打綿→カード※1→練条→粗紡→精紡 綿、羊毛、ポリエステル短繊維、レーヨン短繊維
    • ふくらみ感
    • 柔軟
    • 毛羽あり
    • 強度はフィラメント糸より弱い
    紡績糸
    • 綿糸
    • 毛糸
    • 混紡糸
    製糸 蚕の繭(まゆ)から生糸を取り出す工程で、絹糸を作る 温水中で繭から連続したフィラメントを引き出し、数本合わせて1本の糸にする 繭(本稿ティータイム参照)
    • 非常になめらか
    • 毛羽はない
    • 光沢と高級感
    絹糸
    紡糸 高分子から繊維を形成する ①溶融紡糸
    樹脂を加熱溶融し、細孔(口金)から押し出し、細い長繊維を作る
    • ポリエステル樹脂
    • ナイロン樹脂
    • アクリル樹脂
    • ポリプロピレン樹脂
    など
    • 強度や平滑性に優れる。毛羽はない
    • 一度紡糸した長繊維を切断して短繊維化が可能である
    • 生産性が良好
    • 比較的低コスト
    • 大量生産に適す
    合成繊維糸など
    • ポリエステル糸
    • ナイロン糸
    • アクリル糸
    • ポリプロピレン糸
    など
    ②湿式紡糸
    凝固水溶液中で固めて維化する
    • 木材パルプ
    • コットンリンター※2
    など
    • 熱で溶けないポリマーでも紡糸可能
    • 生産効率やや低い
    再生繊維糸など
    • レーヨン糸
    • キュプラ糸
    など
    ③乾式紡糸
    溶剤を蒸発させて繊維化する
    • アセテート樹脂(溶剤:アセトン※3)
    • ポリウレタン樹脂(溶剤:DMF※4)
    など
    • 湿式紡糸より高速
    • 細い繊維が可能
    • 柔らかい風合い
    • 溶剤管理が必要
    半合成繊維など
    • アセテート糸
    • トリアセテート糸
    • ポリウレタン弾性糸
    など
    ※1カード
    ※2コットンリンター
    綿花の採取後、綿の種子表面に残っている短い毛羽状の綿繊維のこと。
    ※3溶剤アセトン
    有機溶剤のひとつ。アセテート繊維の乾式紡糸に使われる。(第84回アパレル散歩道「事例47 除光液による穴あき」参照)
    ※4溶剤DMF
    有機溶剤のジメチルホルムアミドのこと。ポリウレタン繊維の乾式紡糸に使われる。


    ≪紡績・製糸・紡糸のまとめ≫
    1. 紡績とは、短繊維を紡いで糸にすること。(主に原料は天然繊維)
    2. 製糸とは、絹糸を作ること。
    3. 紡糸とは、熱や溶剤で溶かしたり、水中で凝固させて、長繊維糸(フィラメント糸)を作ること。(主に原料は化学繊維)
    1. 紡績
       紡績とは、短い繊維を平行に並べ、引き伸ばしながら撚りを加えて1本の糸にまとめる工程のことです。また、すべての種類の繊維が同じ紡績工程ではなく、それぞれの繊維の物性や外観を考慮した紡績方法が考案されています。ここでは、綿紡績と毛紡績を採り上げます。

      1. 綿紡績
        (1)綿紡績工程
         綿繊維はしなやかで、外観がねじれた形状(図3)をしているため、適度な摩擦が生じて紡績性は良いとされています。その工程は図4及び表3の通りで、紡績工程が進むにつれて、原綿の繊維が平行化しながら細く撚られて1本の糸になっていきます。(第35回アパレル散歩道「5.1綿繊維」参照)
        綿繊維の外観 綿繊維の断面

        図3.綿繊維の外観と断面2)

         コーミングとは、櫛くしの原理で短い綿繊維を除去し、長い綿繊維だけで糸を作る工程のことで、高級なコーマ糸を製造する工程です。ちなみに、コーミングを省略した糸はカード糸と呼ばれています。したがって、コーマ糸はカード糸よりもコスト高となります。

        ①混打こんだ綿めん ⇒  ②梳りゅう綿めん ⇒  (③コーミング) ⇒  ④練れん条じょう ⇒  ⑤粗紡 ⇒ ⑥精紡

        図4.綿紡績工程と糸外観変化のイメージ
        図4.綿紡績工程と糸外観変化のイメージ3)



        表3.綿紡績の各工程の意味
        工程意味
        ①混打綿原綿の塊をほぐし、葉やごみなどを除去する
        ②梳綿綿繊維をほぐして、一定方向に並べてシート状にする。カーディングとも言う
        ③コーミング短い繊維を除去し、長繊維だけにする。コーマ糸製造のみの工程
        ④練条綿(わた)を均一化し、太いロープ状(スライバー※1)にする
        ⑤粗紡軽く撚りをかけて、スライバーよりやや細いロープ状にする
        ⑥精紡リング精紡機などで撚りをかけて本格的に綿糸が完成する
        ⑦糸巻必要に応じて、糸を複合化する(双糸や三子、カバードヤーン※2など)
        ※1スライバー
        紡績工程で繊維を平行に揃えて束ね、撚りをかけていない太いロープ状の繊維束のこと。
        ※2カバードヤーン
        「被覆された糸」のこと。異種の繊維を組み合わせて複合化し、機能を向上させる目的で用いられる。(例:ポリウレタン弾性糸に綿糸やフィラメント糸を巻き付けた糸のこと。伸縮性や強度が期待できる)
        図5.カバードヤーンのイメージ

        図5.カバードヤーンのイメージ


      2. 毛紡績
         毛繊維は図6のように捲けん縮しゅく(クリンプ)し、さらに図7のように側面はスケールと呼ばれる鱗片に覆われています。羊毛は綿より繊維長がばらつきやすく捲縮もあり、油脂分も含んでいるため、その紡績は特徴的です。
        図6.毛繊維の捲縮

        図6.毛繊維の捲縮 4)

        図7.スケール(鱗片)

        図7.スケール(鱗片) 2)


         毛紡績には、大きく梳毛紡績と紡毛紡績があります。表3にその特徴を示します。(第35回アパレル散歩道「5.2毛繊維」参照)

        表4.毛紡績の特徴
        分類用途特徴
        梳毛紡績(そもう) 高級背広、制服、高級ニット用生地
        など
        • 主に長い毛繊維を使用する
        • 繊維方向を揃え、比較的細番手の糸にする
        • 表面は滑らか
        • 工程 洗毛(土砂、ごみ、油脂除去)⇒カーディング(繊維方向の高度な平行化)⇒コーミング(短繊維除去)⇒前紡(太い粗糸)⇒精紡
        • 比較的細く均一な糸
        紡毛紡績(ぼうもう) セーター、毛布、ツイードジャケット生地、紡毛フラノ
        など
        • コーミング工程はなし(短い繊維も使用する)
        • 繊維方向を梳毛ほど揃えない⇒ざっくり調
        • 空気を含みふくらみがある⇒暖かい
        • 比較的太番手の糸


      3. 混紡糸の場合
         糸には「100%綿糸」や「100%ポリエステル糸」など単独の繊維からなる糸もありますが、各繊維の弱点を補完するために、2種以上の繊維を混紡した糸も多く商品化されています。混紡糸には、ポリエステル/綿、毛/ナイロン、レーヨン/ポリエステルなど多くの種類と、その混紡比があります。表5は、①綿糸、②ポリエステル糸、③その混紡糸を例に挙げて、それぞれの糸の性能を示しています。
         表中の「ポリエステル50% 綿50%」を見ていただくと、混紡することにより、個々の繊維の弱点が補完されていることが分かります。実際の紡績工程では、2種以上の原綿を採取して均一に混ぜることから始まります。
        表5.単独糸と混紡糸(筆者評価)
        ◎非常に優秀 ○優秀 △やや劣る ×劣る
        性質綿100%ポリエステル100%ポリエステル50%
        綿50%
        強度△◎○
        縮み△◎○
        吸水◎×○
        風合い◎△○
        しわ×◎○

    2. レーヨン糸の製造
       再生繊維の代表であるレーヨンは、「ビスコースレーヨン」とも呼ばれています。レーヨンは、木材パルプを特殊な工程で液状化(ドロドロ状に)して、この紡糸原液を細孔から凝固水溶液中に押し出して、糸状に固めたものです。この液状化する工程を「ビスコース法」と言うため、完成した糸は「ビスコースレーヨン」と呼びます。
       同様に、液状化する薬品や方法の違いで、銅アンモニアレーヨン(キュプラ)やリヨセルなどがあります。以下に、ビスコースレーヨンの製造工程の概略を示します。

      <ビスコースレーヨンの製造工程>

       図8にビスコースレーヨンの工程概略を示します。
      1. 紙状パルプ原料(成分はセルロース)をアルカリ処理したアルカリセルロースを二硫化炭素(CS2)で硫化し、ザンテートを作る。
      2. これに水酸化ナトリウムと水を加えて、紡糸原液(液状のビスコース)を作る。
      3. ビスコースを細管から凝固水溶液中に押し出す → これが湿式紡糸法に相当する。
      4. ビスコース繊維中の水分が水溶液中に流れ出て、ビスコースが固化して、レーヨン繊維ができる。

      図8.ビスコースレーヨンの製造工程概略

      図8.ビスコースレーヨンの製造工程概略


      ~レーヨンの歴史~
      再生繊維のレーヨンは、まだ合繊繊維が登場しない1930年代に人造絹糸(人絹)として産業化され、日本は代表的なレーヨン生産国になりました。当時も、東洋レーヨン(現・東レ株式会社)、帝国人造絹糸(現・帝人フロンティア株式会社)、三菱レイヨン(現・三菱ケミカル株式会社)などの企業がありました。
      ≪なぜレーヨン繊維の断面は、シワシワなのか?≫
      図8で、ビスコースが凝固水溶液中で固化する時、ビスコース内部から水分が外部の凝固液中に逃げていくため、ビスコースの体積が収縮し、結果として断面がシワシワになります
      図9.レーヨンの断面
      図9.レーヨンの断面2)

    3. 精紡工程
       2.1.1綿紡績と2.1.2毛紡績でも紹介しましたが、糸製造の最終工程に「精紡」があります。
       精紡とは、紡績工程の中で、粗紡糸を細く引き伸ばしながら撚りをかけ、最終的に所定の糸に仕上げる工程となります。綿糸では代表的な手法がリング精紡ですが、近年、粗紡と精紡を同時に行い、生産性にも優れた「オープンエンド精紡」、「ボルテックス精紡」も一般化しています。これらについては、第69回アパレル散歩道「3.2.5紡績方法の違い(綿糸)」をぜひ参照してください。
      ≪糸の製造のまとめ≫
      糸は繊維の特性を考慮して、色々な手法で作られます。
      • 短繊維は、紡績(綿紡績、毛紡績、麻紡績など)
      • 長繊維は、紡糸(溶融紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸など)

  3. 糸に起因する品質事故
     関連する情報として、糸の種類や性能に起因する品質事故を2点紹介します。
    1. ピリング
       ピリングとは、擦れにより毛玉ができることです。織物やニット(編物)の表面繊維が摩擦などによって毛羽立ち、この毛羽が絡み合い、小さな球状の固まり(毛玉)が生じる現象です。
       ピル(毛玉)の生じやすさは、①毛羽立ち、②毛羽の絡みつきやすさ、③ピルの脱落しやすさの、主に3つのバランスによって決まります。したがって、テキスタイルを構成する糸外観が「毛羽立っている」場合や、「撚りが甘い」などの性能が大きく影響します。(第48回アパレル散歩道「3.1ピリングとは」参照)

      図10.ピリングの例

      図10.ピリングの例

    2. 斜行
       斜行とは、綿のニットシャツなどで、洗濯後に外観がねじれる現象です。斜行の要因には、繊維の種類、糸種、編み組織、染色仕上げ加工、縫製準備工程などが関係します。
       今回のテーマである「糸」の関連事故例では、綿単糸の平編み素材で、撚り戻りのトルクで編地がねじれることがあります。このため、Z撚りとS撚りを合糸した双糸、また下撚り※と上撚り※の撚り方向が異なる双糸を使うことによって、撚り戻り力を相殺して、斜行防止を防いでいます。
      ※下撚り・上撚り
      下撚りは単糸の撚りのこと、上撚りは双糸にするときの撚りのこと。

      図11.シャツの脇の斜行

      図11.シャツの脇の斜行



(参考資料)
1)
「アパレルの素材と製品」:学校法人文化学園・文化出版局、P42
2)
「被服材料実験書」:株式会社同文書院、石川欣造編、P14 一部引用
3)
「知っておきたい繊維の知識524(テキスタイル編)」:ダイセン株式会社、一般社団法人日本繊維技術士センター編、P103 一部引用
4)
同上、P28 一部引用

…次回予告
(第94回 アパレル散歩道 – 2026年11月1日公開予定)

 アパレルのモノつくりQ&A⑧【糸編その2】として「綿糸の規格」をお送りします。
著者Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
S51年京都工芸繊維大学卒業。43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウエアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。
清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
社外経歴
一般社団法人日本繊維技術士センター
理事 技術士(繊維)
一般社団法人日本衣料管理協会
理事 TES会西日本支部顧問
   TES会マイスター
大学非常勤講師
一般社団法人日本繊維製品消費科学会
元副会長
【発行】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
事業推進室 マーケティンググループ
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp
URL:https://nissenken.or.jp
※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

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