アパレル散歩道

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アパレル散歩道 第92回 : シリーズ【アパレルのモノつくりQ&A】⑥ / 「繊維編」その3

2026/09/01

アパレル散歩道 シリーズ アパレルのモノつくりQ&Aアパレル散歩道 シリーズ アパレルのモノつくりQ&A
繊維編その1(第90回アパレル散歩道)・その2(第91回アパレル散歩道)として、生産量世界一を誇る繊維「ポリエステル」を2回にわたりじっくりと、しっかりと取り上げました。

2026.9.1

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 繊維編その1(第90回アパレル散歩道)・その2(第91回アパレル散歩道)として、生産量世界一を誇る繊維「ポリエステル」を2回にわたりじっくりと、しっかりと取り上げました。そして今回は繊維編の最終回として、わたしたち業界人にとって興味が尽きない「機能性繊維」を取り上げます。

■ 繊維編(その3) ―【Q&A8 機能性繊維の種類や加工方法から、その特徴まで徹底解剖】 ■

Q&A-8
アパレル企業で機能性を重視した衣料を担当しています。衣料に使用される機能性繊維にはどのような種類があり、また、それらはどのように作られるのですか。各種機能性繊維の特徴等も併せて教えてください。


  1. 各種機能性繊維とその実現方法について
     衣料品の「機能性」は、着用時に求められる快適性・安全性・利便性などを実現するための性能で、主に素材そのものの特性と後加工技術によって実現されます。
     衣料に機能性を付加することは、その商品価値創造の観点から望ましいことです。一方、衣料の機能性は、主に、①素材開発、②製品開発で実現されます。機能性を実現するには、まず、この2つの方法があることを認識して下さい。特に、今回は①素材開発のa.原糸改質、b.仕上げ加工、c.構造設計の3つの機能性の実現方法を中心に紹介します。
     まず表1では、2つの機能性実現方法を紹介します。また表2では、代表的な機能性を採り上げて、その実現方法を紹介します。

    表1.機能性の実現方法と特徴
    実現の主体実現方法の分類特徴
    ①素材開発
    =素材で機能を実現する
    a.原糸改質(製糸、紡績設計など)
    • 機能の耐久性が高い
    • 糸開発のためやや時間かかる
    • 開発主体は素材メーカー
    b.仕上げ加工(後加工)
    • 加工コストは低い
    • 加工による機能発現のため、耐久性は比較的低い
    • 開発に比較的時間かからない
    c.構造設計(テキスタイル設計など)
    • 開発主体は織編メーカー
    ②製品開発
    =製品で機能を実現する
    d.製品設計
    (パターン、縫製仕様、色彩、ウェアラブル) など
    • 製品開発・設計で実現する
    • 開発主体はアパレルメーカー


    表2.素材の機能性の主な実現例
    機能性
    の種類
    項目a.原糸改質などによる実現例b.加工による実現例c.構造設計に
    よる実現例
    生理的
    快適
    吸水速乾、
    吸湿
    • 親水性繊維使用(綿、レーヨンなど)
    • 合成繊維の異形断面化(毛細管現象)
    吸水加工(親水化仕上げ)
    通気性・
    透湿性
    微多孔膜加工(透湿防水膜) 織編設計
    (通気性管理)
    保温/断熱
    • 中空繊維
    • 発熱繊維
    • 遠赤外線放射繊維
      起毛加工 製品開口部
      中綿仕様
      吸水/速乾
      • 親水性繊維の使用
      • 合成繊維の異形断面化(毛細管現象)
        吸水加工 編物設計
        クーリング
        冷感・涼感
        • 熱伝導率の高い素材
        • 親水性繊維
        • 接触冷感素材 など
          吸熱加工 通気性付与
          ファン付仕様
          運動機能 伸縮性
          • 弾性繊維(ポリウレタンなど)混用
          • 伸縮加工糸の使用
            柔軟加工 織編物設計(伸縮)
            軽量
            • 中空糸
            • 細番手糸、極細繊維
              織編物設計(密度)
              衛生・
              安全機能
              抗菌/防臭
              • 銀系/有機系抗菌剤
              • 繊維への練り込み(原糸改質)
                後加工(抗菌加工)
                防汚 はっ水、はつ油加工
                親水化で洗濯性向上
                防炎/難燃
                • 難燃繊維(アラミドなど)
                難燃加工
                UVカット
                • 紫外線吸収剤の練り込み
                • 酸化チタンなどの添加
                紫外線吸収加工 高密度織物
                耐久性・メンテナンス向上機能 防シワ/
                形態安定
                • ポリエステル混紡など
                樹脂加工(形態安定)
                耐久性
                (耐摩耗性)
                • 高強度繊維(ナイロン、アラミド)
                • 高密度構造
                シリコン加工など 織編物設計
                (密度や目付)
                イージーケア性
                • 速乾素材
                • ポリエステル混紡など
                W&W加工(ウォッシャブル) 衣料設計
                特殊・高機能 はっ水/耐水 はっ水加工
                膜加工(透湿防水膜など)
                織物設計
                (高密度など)
                帯電防止/
                導電性
                • 導電繊維の混用
                帯電防止加工
                スマート
                テキスタイル
                • 導電糸の織り込み
                ウェアラブルデバイスとの複合


              • 機能性繊維の実現の例
                 表2の中で紹介した「発熱繊維」並びに「吸熱繊維(吸熱加工)」、「弾性繊維」、「アラミド繊維」「導電繊維」及び「接触冷感素材」について、もう少し具体的に説明します。

                1. 発熱繊維
                   発熱繊維は衣料の保温性に大きく貢献する素材で、寒冷期の保温衣料だけでなく、低温環境下の作業等にも役立つ繊維素材です。発熱繊維の原理は、大きく外部エネルギー熱変換方式人体の水分・運動エネルギー利用方式に分類できます。表3では、発熱繊維の種類を紹介しています。

                  表3. 発熱繊維の種類
                  タイプメカニズム実施例特徴
                  ①吸湿発熱型 繊維上に水分(汗や水蒸気)が吸着する時に発生する吸着熱を利用する
                  • アクリレート系繊維
                    (ミズノ/ブレスサーモ®)
                    (東洋紡/エクス®) など
                  • レーヨン系改質繊維 など
                  • 発熱は持続性あり
                  • 肌着やインナー用途に使用されることが多い
                  ②太陽光熱変換型 太陽光(可視光や近赤外線)を吸収し、光エネルギーを熱エネルギーに変換する
                  • 合成繊維中に炭化ジルコニウム(ZrC)などの機能物質を練り混む など
                  • 屋外で効果は大きいが、夜間は機能が低下する
                  ③相変換型 パラフィンなどが固体⇔液体に相変化する際、吸熱や放熱反応が生じ、身体表面温度を一定温度帯に調整する
                  • 繊維に練り込まれたマイクロカプセルを使用(アウトラスト®) など
                  • 急激な温度変化を緩和する調温機能がある
                  ④遠赤外線放射型 人体から発生する熱(赤外線)を吸収し、遠赤外線として再放射して体に戻す
                  • セラミックス練り込み繊維 など
                  • 蓄熱と再放射による保温性向上
                  • 寝衣や寝具に多い
                  ⑤電気発熱型 電流を流すことで発熱する熱を利用する
                  • 導電繊維(カーボン繊維、金属繊維) など
                  • バッテリーが必要
                  • 電熱ウェア、電熱手袋 など

                2. 吸熱繊維
                   水分と反応して熱を吸う成分(多くは糖アルコール系など)を加工した繊維のことです。汗などの水分によって吸熱反応を起こし、周囲から熱を吸収し、清涼感を付与しています。糖アルコール系の成分には、ソルビトール、エリスリトール、キシリトールなどがあります。

                3. 弾性繊維(ポリウレタンなど)
                   高い伸長弾性があり、伸びても元に戻る性質を有する繊維のことです。この優れた機能から、弾性繊維は、私たちの運動パフォーマンスを支える伸縮衣料の大切な材料となり、ストレッチパンツ、タイツ、水着、靴下など、主に身体に密着して使用される衣料に使用されています。
                   表4では、代表的な2つの弾性繊維=「ポリウレタン系」と「ポリエステル系」=についてその特徴を紹介します。
                   また、表5でポリウレタン系弾性繊維とポリエステル系弾性繊維の特性を比較します。

                  表4. 弾性繊維の種類の種類と特徴
                  弾性繊維の種類特徴など
                  ①ポリウレタン系弾性繊維
                   (スパンデック)

                  ウレタン結合
                  ウレタン結合

                  1940年頃ドイツで開発された伸縮性に優れた伸縮性繊維で、今日では代表的な弾性繊維である。分子構造にウレタン結合を有する。

                  • 伸長率は、600%前後と非常に大きい
                  • 弾性回復率も高い。また軽量で柔軟である
                  • 単独使用せず、他繊維と混用して使用する(交編、コアヤーン使いなど)
                  • 熱、紫外線、塩素、日光などで加水分解して劣化しやすい
                  ②ポリエステル系弾性繊維
                   (PBT・PTT系)
                  ポリエステル構造をした伸縮弾性を有する繊維のこと。通常のポリエステル繊維(PET、ポリエチレンテレフタレート)はほとんど伸びないが、この弾性繊維は分子構造の違いにより伸縮性が付与され、ポリウレタン繊維の弱点をカバーしている。代表的な繊維に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)「ソロテックス®」などがある。

                  • 自然なストレッチ性(ただし、ポリウレタン繊維より伸びは小さい)
                  • ウレタン結合を有しないため、加水分解や熱・光による劣化に対して強い耐性がある
                  • 軽量でメンテナンスが容易である

                  表5.ポリウレタン系弾性繊維とポリエステル系弾性繊維の比較
                  適用:◎非常に優秀 〇優秀 △劣っている
                  性質ポリエステル系弾性繊維
                  (PBT・PTT)
                  ポリウレタン弾性繊維
                  (PU)
                  伸び
                  回復性
                  耐久性
                  風合い自然的ゴム的

                   以上のように、代表的な2つの弾性繊維を紹介しましたが、要約しますと以下になります。
                   ポリエステル系弾性繊維は、通常ポリエステル繊維と比べると伸びるのですが、ポリウレタン繊維よりは伸びが少なく、フィット性やコストの課題もあり、現在、弾性繊維としてはポリウレタン系が多用されています。
                   しかし、ポリエステル系弾性繊維の長所として、
                  1. ポリウレタン系より加水分解しにくく耐久性が良い
                  2. ポリウレタン繊維と他の繊維との混用生地はリサイクルが難しく、ポリエステル系であれば比較的リサイクル性が良い
                  などの特性があり、今後の産業資材用途も含めた貢献が期待されています。

                4. アラミド繊維
                   アラミドは、芳香族ポリアミドである「アロマチックポリアミド(Aromatic Polyamide)」の略で、高強度・優れた耐熱性を持つ高機能繊維の一種です。通常のナイロン繊維は、脂肪族ポリアミドと呼ばれますが、アラミドは分子構造に六角形のベンゼン環を持つため、芳香族ポリアミドや芳香族ナイロンと呼ばれます。
                   このベンゼン環構造を持っていることで、非常に高い強度(鋼鉄の数倍の強度/重量比)、優れた耐熱性(分解温度 約400℃以上)、難燃性(燃えにくく自己消火性あり)、耐薬品性、軽量性を示します。このため産業資材用としても幅広く使われています。

                  図1.脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの構造

                  脂肪族(左)は炭化水素、芳香族(右)はベンゼン環で構成される

                  図1.脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの構造



                  ~パラ系アラミドとメタ系アラミド~
                  アラミド繊維には、ベンゼン環に結合する場所によって、メタ系とパラ系の2種類があり、それぞれの特徴も異なります。
                  ●メタ系:
                  耐熱性が高く(400℃でも分解しない)、難燃性が高い。消防服、絶縁材、バグフィルターなど耐熱性用途に使用される。
                  • メタ系アラミド高分子は、ネットワーク状に広がり、耐熱性に優れる。
                    ノーメックス®、テイジンコーネックス®などがある。
                  ●パラ系
                  軽量かつ高強度(鉄鋼材の1/5の重さで、引張強度は約7倍)で防弾・防刃性が高く、耐薬品性・耐摩耗性も高い。防弾チョッキ、ブレーキパッド、タイヤ補強材、光ファイバーケーブルなどに使用される。
                  • パラ系のアラミド高分子は、直鎖状につながり、引っ張り強さに優れる。
                    ケブラー®、テクノ―ラ®、トワロン®などがある。

                  メタ系とパラ系について
                  ベンゼン環に結合する場所によって、メタ系とパラ系に分類されます。
                  (図2参照)
                  図2.メタ系とパラ系の違い

                  メタ     パラ

                  図2.メタ系とパラ系の違い



                5. 導電繊維
                   導電繊維とは「電気を通す機能を有する繊維」です。通常の綿繊維やポリエステル繊維は、非導電繊維です。導電繊維は、衣料用より、むしろ産業資材用機能繊維として使用されています。表6で、導電繊維の種類、特徴、用途を説明します。

                  表6.主な導電繊維の種類
                  分類種類特徴用途
                  ①金属系導電繊維
                  • ステンレス繊維
                    など
                  • 非常に高い導電性
                  • 耐熱性/耐久性が高い
                  • 硬くて重く柔軟性に欠ける
                  • 電磁波シールド材
                  • 静電気除去ブラシ
                  • など
                  ②金属被覆繊維
                  (メッキなど)
                  • ナイロン繊維やポリエステル繊維に銀や銅メッキ処理など
                  • 柔軟性と導電性のバランス良好
                  • 表面の金属層で導電
                  • メッキ耐久性にリスクあり
                  • 導電手袋
                  • タッチパネル対応手袋
                  • シールド衣料
                  • など
                  ③導電性ポリマー系繊維
                  • 導電性高分子
                    (例:ポリピロール系導電繊維など)
                  • 軽くて柔らかい
                  • 染色や加工が比較的容易
                  • 導電性は金属より低い
                  • センサー素材
                  • ウェアラブルデバイス
                  • スマートテキスタイル
                  • など
                  ④カーボン系導電繊維
                  • カーボン練り込み繊維
                  • カーボンナノチューブ(複合繊維)
                  • 炭素繊維(カーボンファイバー)
                  • 軽量で耐久性が高い
                  • 導電性は中程度
                  • 静電気防止性能に優れる
                  • 高機能であるがコストは高い
                  • 帯電防止衣料、床材
                  • 複合材料(CFRP)
                  • など
                  ⑤導電粒子分散型繊維
                  • ポリマー中に金属粉/カーボン粒子を分散
                  • 均一な導電性、柔軟性維持
                  • 導電性は比較的低め(粒子量による)
                  • 特殊作業用帯電防止
                  • など


                6. 接触冷感素材
                   接触冷感繊維とは、着用したり、触れたりすると「冷感」を感じる繊維のことです。一般に、水分率が高く、毛羽が少なく、肌と接触面積が大きい繊維がこの性能を有しています。例えば、長繊維のレーヨンやキュプラなどが該当します。肌と生地が触れて冷感を感じるのは、肌から生地に熱が移動しているからです。
                   この熱移動の量は、接触冷温感評価値としてQmax(W/cm²)で評価され、数値が高いほど冷感が大きくなります。一般的に0.2W/cm²以上がアパレル業界の機能性基準の目安になっています。
                   また合成繊維では、水分率の低さを補うために、芯鞘構造にして水分率の高い物質を複合した繊維や、接触面積を上げるために扁平フィラメントを使用した繊維があります。その一部を図3で紹介します。なお、接触冷温感評価試験(Qmax測定)については、ニッセンケン品質評価センターにお問い合わせください

                  クラレトレーディング「ソフィスタ®」

                  クラレトレーディング
                  「ソフィスタ®

                  親水性のエチレン・ビニルアルコール共重合体を鞘部に、疎水性のポリエステルを芯部に使用しているため、両方の特徴を合わせ持つ。
                  KBセーレン「アクシアⓇ」

                  KBセーレン「アクシア®

                  ナイロンフィラメントの開口芯鞘構造型で、芯部の特殊な親水性化合物により吸水・吸湿・制電・冷感効果を付与している。

                  図3.接触冷感素材(合成繊維)の例



                  ≪接触冷感性の高い繊維の要件とは≫
                  • 水分は熱伝導率が大きく、熱が移動しやすい。
                  • 水分率の高い繊維であること(レーヨン、キュプラなど、また水分率の高い成分を持った特殊な合成繊維など)。
                  • 毛羽は空気がたまり断熱性が高まるため、毛羽のないフィラメント系繊維素材であること。
                  • 扁平フィラメント繊維使いであれば、肌との接触面積が増え、熱移動が増える。


              …次回予告
              (第93回 アパレル散歩道 – 2026年10月1日公開予定)

               アパレルのモノつくりQ&A⑦【糸編】をテーマにお送りします。
               糸は繊維の集合体であり、織物やニットは、その糸から作られます。糸についても、改めてしっかり勉強しましょう。
              著者Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
              S51年京都工芸繊維大学卒業。43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウエアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。
              清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
              社外経歴
              一般社団法人日本繊維技術士センター
              理事 技術士(繊維)
              一般社団法人日本衣料管理協会
              理事 TES会西日本支部顧問
              大学非常勤講師
              一般社団法人日本繊維製品消費科学会
              元副会長
              【発行】
              一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
              事業推進室 マーケティンググループ
              E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp
              URL:https://nissenken.or.jp
              ※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

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