おさえておきたい基礎知識

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〖試験担当者のひとり言〗~ お役立ちな独白26 防災の日に思う「お風呂の残り湯は災害時の備えになる?」― 残り湯の生菌数を調べてみました

2026/09/05

災害時の課題の1つが「水確保」

 9月1日は「防災の日」。1923年の同日に関東地震が発生して10万人以上の市民が亡くなったと言われており(いわゆる「関東大震災」)、この日を中心に防災週間が設けられ、各地で防災に関する取り組みが行われています。みなさんは、災害時の備えとしてどのような準備をしていますか?

 災害の種類や状況によって異なりますが、災害時に困ることの1つとして、「水不足」が挙げられます。飲み水だけではなく、調理や手洗い、トイレなどあらゆる場面で必要になります。そのため、災害への備えとしては飲料水だけではなく、「生活用水」を確保しておくことも大切と言えます。

その時、お風呂の残り湯は利用できるか?

 生活用水の確保方法の1つとして、以前から「お風呂の残り湯」の利用が言われています。入浴後のお湯をすぐに排水せず浴槽に残しておけば、断水した際にトイレの洗浄や掃除などに使えるため、災害時の生活用水として活用できます。また、突然の断水に備えて、すぐに使える水を確保しておけるというメリットもあります。

 一方で、残り湯を長時間にわたり貯めておくことには、注意点もあります。時間の経過とともに細菌が増殖する可能性があるほか、小さなお子さんがいるご家庭では、浴槽に水を貯めておくことによる事故が発生する恐れもあります。そのため、残り湯を災害時の備えとして残しておく場合には、これらのメリットとデメリット及びリスクを併せて考える必要があります。

 そこで今回は、残り湯を貯めておく場合に気になる「衛生面」に注目し、実際にお風呂のお湯の生菌数を測定してみました。

検証その1 – 残り湯に含まれる生菌数は?

 我が家のお風呂のお湯を「入浴前」、「3人が入浴した直後」、さらに「入浴後24時間放置」の各タイミングで採取し、それぞれの生菌数を測定しました。結果は下表のとおりです。

採取したタイミング 生菌数(個/mL)
入浴前 <10
入浴直後(3人入浴後) 540
入浴後24時間放置 750,000

 入浴前のお湯では生菌数が10個/mL未満だったのに対し、3人が入浴した直後には540個/mLとなりました。さらに、入浴後の残り湯を24時間放置すると、生菌数は750,000個/mLまで増加しました。これは入浴直後と比較すると、約1400倍の数値です。24時間でこれほど生菌数が増加する結果となったことからも、残り湯を長時間貯めておく場合には、衛生面への注意が必要だと分かります。そのため、残り湯を生活用水として利用する場合は、手洗いや洗顔など直接身体に触れる用途ではなく、トイレの洗浄や掃除など、用途を限定して使用するのがよさそうです。

検証その2 – 携帯式浄水器によって菌は減る?

 それでも状況によっては、手洗いや洗顔等に使わざるを得ない場合があると思われます。そこで、菌を取り除く手段の1つとして考えられる【携帯用浄水器】の使用でどれくらい菌が減るかも検証してみました。

 先ほどの24時間放置した残り湯を携帯用浄水器でろ過し、実際に生菌数を測定してみました。その結果、生菌数は750,000個/mLから17個/mLまで減少しました。入浴直後よりもさらに菌が減っています。

 今回使用した浄水器等を含めた試験条件下では、たしかに大部分の菌を除去することができました。ただし、浄水器は製品によって除去できる微生物や成分が違うことを含め、性能がそれぞれ異なるため、ろ過したからといって即、残り湯を飲料水や調理用水として使用するには注意も必要です。ぜひ慎重に判断してください。

 可能であれば、飲用を目的とした水も備蓄しておくほうが安心ですね。

飲料水はどれくらい備蓄すればいい?

 万が一、水道が使えなくなった場合、通常時のちょっとした備えが強い味方になることを理解いただけたと思います。

 さてそれでは、災害への備えとして実際にどれくらいの飲料水を確保しておけばよいのでしょうか。

 【政府広報オンライン】では、1人あたり1日約3Lを目安に、少なくとも3日分、できれば1週間分程度の備蓄が推奨されています。

 例えば4人家族の場合・・・

  3L×7日×4人=84L 2Lペットボトルで42本分!?

  6本入りケース7箱分になります。

 「そんなに置く場所がない・・・」と思われるかもしれません。それでも、飲料水は命を守るために欠かせない備えです。

 一方で、お風呂の残り湯を生活用水として確保しておけば、備蓄したペットボトルを飲むことや調理に優先して使うことができます。うまく使い分けることで、限られた備蓄を有効に、長く活用できます。

「水」だけではなく「衛生」や「ニオイ」への備えも

 もう少し、災害時の備えについて考えてみましょう。

 断水すると、普段何気なく行っている手洗いや掃除なども十分にできなくなり、衛生環境を保つことが難しくなります。

 例えば、手を洗うための水が十分に確保できない場合には、ウェットシートや除菌シートなどが役立ちます。また、断水によってトイレの清掃が十分にできなかったり、ゴミの収集が一時的に止まったりすると、微生物の増殖やニオイの発生も気になりやすくなります。

 こうした状況に備えて、携帯トイレや除菌グッズ、防臭袋、消臭剤など、用途に応じた衛生・ニオイ対策用品を防災用品として準備しておくと安心です。

 特に避難生活では、窓を開けたり、こまめに換気したりすることが難しい場合もあります。普段から使用している消臭剤や防臭袋などを防災用品に加えておけば、限られた環境の中でもニオイの拡散を抑え、不快感を軽減することにつながります。

 防災用品を選ぶ際には、価格や使いやすさだけでなく、「どのような性能があるのか」「その性能について、どのような(試験)方法でエビデンスを確保しているのか」に注目してみるのもお勧めです。

 9月は、防災対策について考えるための、適した時期と言えます。

 この機会に、飲料水の備蓄量だけでなく、「生活用水はどう確保するか」「衛生管理をどうするか」「ニオイ対策に何を用意しておくか」までを含め、ご家庭の防災用備品を見直してみてはいかがでしょうか。

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コラム執筆担当
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
ライフ アンド ヘルス事業本部 バイオケミカルグループ

本コラム「試験担当者のひとり言」は、毎月2回(5日・20日)更新しています。

次回もお楽しみに!

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