2014/02/28
No. 11 「ニットとカットソーの違いはなんですか…」
思いつきラボ
2019/12/24
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2019年12月15日時点の内容です。
今年の10月に吉野 彰(よしの あきら)氏がノーベル化学賞受賞という嬉しいニュースが届いて、この思いつきラボでも触れておこうと思っていたのですが、異常な台風災害が続いたことなどがあって取り上げる機会が遅れてしまいました。
12月10日にスウェーデンでの授賞式があったので、テレビや新聞などマスコミが報道する機会が再び多くなったので、関心が高まりました。特筆すべきは“企業研究者”の受賞ということです。しかも「旭化成株式会社名誉フェロー」という肩書で受賞対象になったのは電気化学分野ですが、旭化成といえば繊維業界でも大手の素材メーカーですので繊維業界でも誇らしいニュースとなりました。
ノーベル賞受賞者となると大学や国立研究機関に所属している研究者がほとんどで、“企業研究者”となるとノーベル賞の長い歴史でも 世界全体でも10名足らずと思います。日本はその中でも2002年にノーベル化学賞を受賞した株式会社 島津製作所の 田中 耕一氏についで 2回目となるのですが、これは企業の場合もちろん利益を生む可能性のある商品開発が主たる目的となる為で、企業が継続的に業績良好であれば問題はないのですが、経営陣の入れ替えがあっても業績が悪化しても研究を続けるというのは企業内ではなにかと難しいのです。ということで、研究者と同様に所属している企業も表彰に価(あたい)するのです・・・と筆者は思ってます。
受賞対象の研究内容より企業研究者の話がさきになってしまいましたが、今回の 吉野 彰氏の受賞は「リチウムイオン二次電池の開発」で、テキサス 大学オースティン校のジョン・B・グッドイナフ(John Bannister Goodenough)とニューヨーク州立大学ビンガムトン校のスタンリー・ウィッティンガム(Stanley Whittingham)との3名での共同研究受賞となってます。
話はちょっと逸れますが、ノーベル賞のひとつの賞の対象者は 3名以内と規定があるようで、もちろんこの 3名だけでの研究ということではないのです。ジョン・B・グッドイナフ氏は 97才ということで、ノーベル賞最高齢受賞者ということでも話題になりました。
二次電池というのが、一般的には蓄電池とか充電式電池いわゆるバッテリーと呼ばれるものなのです。
一次電池:放電完了後まで使用可能な使い捨てタイプ
二次電池:充電して繰り返し使用可能な継続利用タイプ
携帯電話や電気自動車などの電源コードなしで使用する電化製品は稼働時間が長いほど充電回数が少なくてすむので、蓄電容量能力が大きいものが市場で求められるようになってます。災害が起こるたびに非常電源の確保が話題になりますが、電気は長い間ストックできないので長時間使用可能な蓄電池は、これからもっと需要度の高いものになってきます。今回受賞したリチウムイオン二次電池がまさにその要望に応えたもので、実際に携帯電話の利用者は充電量の進歩に気がついていると思います。以前はすぐ充電が切れるという話もよく耳にしていました。リチウムイオン電池のおかげでスマートフォンの普及が加速したといってもいいような気がします。
吉野 彰氏がリチウムイオン電池の原型を開発したのが 1983年(昭和 58年)とのことで、受賞までは35年の時間を要しています。今回のテレビ放映や新聞報道で「ストックホルム街全体でお祝いをしてくれているようです。」と語ったのと、授賞式の当日の会見で「リハーサルのときのファンファーレに感動しました。」というコメントが面白く、さぞ本番ではもっとすごい感動があったに違いないと、筆者は勝手に想像しています。ともあれ、今年も日本人のノーベル賞受賞者がでたこととそれが“企業研究者”であることに誇らしさを感じさせてもらいました。歴代の受賞者たちが述べる「これからの日本国内での科学者の育成に不安を感じる」ということには真剣に耳を傾け、科学者や研究者が育つ環境を期待したいと思います。
吉野 彰氏の受賞で外国籍取得者も含めて28人目とのことで、歴代の偉大な研究者たちの名前を忘れないように氏名を列挙しておきます。
1949年 湯川 秀樹 物理学賞
1965年 朝永 振一郎 物理学賞
1968年 川端 康成 文学賞
1973年 江崎 玲於奈 物理学賞
1974年 佐藤 栄作 平和賞
1981年 福井 謙一 化学賞
1987年 利根川 進 生理学・医学賞
1994年 大江 健三郎 文学賞
2000年 白川 英樹 化学賞
2001年 野依 良治 化学賞
2002年 小柴 昌俊 物理学賞
2002年 田中 耕一 化学賞
2008年 小林 誠 物理学賞
2008年 下村 修 化学賞
2008年 南部 陽一郎 物理学賞
2008年 益川 敏英 物理学賞
2010年 鈴木 章 化学賞
2010年 根岸 英一 化学賞
2012年 山中 伸弥 生理学・医学賞
2014年 赤崎 勇 物理学賞
2014年 天野 浩 物理学賞
2014年 中村 修二 物理学賞
2015年 大村 智 生理学・医学賞
2015年 梶田 隆章 物理学賞
2016年 大隅 良典 生理学・医学賞
2017年 カズオ イシグロ 文学賞
2018年 本庶 佑 生理学・医学賞
2019年 吉野 彰 化学賞
筆者が小学生の時には“湯川 秀樹先生”だけ覚えておけばよかったのですが、今では 28名の受賞者・・・とくに2000年以降の多さはすごいことです。研究者の環境づくりには優良企業も一役担うことも期待されます。“企業研究者”の受賞者が増えることを願っています。
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