2020/05/15
No. 160 「“難燃”“防炎”“不燃”の区別がわかりにくい…」
思いつきラボ
2015/12/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2015年12月30日時点の内容です。
思いつきラボも2015年最後の原稿となります。
クリスマスのにぎわいも落ち着いたところですが、ふとした会話から「サンタさんはなんで赤い服を着ているの?」という単純な質問が出てきました。
誰もがサンタさんの服は赤いと思い込んでいるので一見して認識できますが、いつごろからこのスタイルがサンタさんのイメージとして定着したのでしょうか・・・姿を見ただけでサンタさんだと分かるのもやはり衣装のもつイメージ効果で成り立っています。
サンタさんの言い伝えで4世紀頃の司教 聖ニコラウス(セントニコラウス)がモデルというのが有力な説となっていて、サンタクロースもこのセントニコラウスが転じたものというのが語源となったとされています。カトリックの司教なので祭服の中に赤色はもちろんあるのですが、赤いナイトキャップをかぶることはないので、やはりどこかでイメージづけられたことと思われます。現に1800年代から1900年代初頭のクリスマスカードには、緑や青や紫や茶色の毛皮のサンタさんが描かれているものが多く残っているそうです。
ふくよかでにこやかなサンタイメージが定着したのは、アメリカの清涼飲料水メーカーの広告が火付け役となったのも有名な話ですが、コーポレートカラーが赤であったことで浸透していったのは間違いないようです。
さて、サンタクロースのモデルになった司教の時代背景を考えれば、衣料の素材になりうるものは“麻”・“綿”・“毛”・“毛皮”くらいしかありません。麻や綿といっても現代のように植物の分類ができていたわけではありませんので、繊維になったものを“麻”と呼んでいるだけです。
サイザル麻やマニラ麻などは“麻”の名前がついてはいますが、リュウゼツランやバショウフの仲間なのです。“綿(めん)”も同様で、綿状(わたじょう)の花になる植物も含んでいます。“毛”も動物の種類は特定しませんが、動物の毛ということになります。“絹”も紀元前から作られてはいましたが、シルクロードで貿易品としていた貴重なものだったのでヨーロッパという地域的なことから候補からは外しています。
いずれにせよ、化学繊維は当然なかった時代ですので、植物繊維か動物繊維の 天然繊維から作られていることになります。綿織物にしろ麻布(あさぬの)は紀元前数千年前の文明遺跡からその切れ端や生地そのものが出土していますので、西暦300年前後であればかなりのレベルのものが作られていたと考えられます。
羊飼いも聖書に出てくるくらいですから、羊の毛から糸をつくり生地に仕上げていたのも出土品から考察すると、紀元前2200年くらいからだと考えられています。
寒い地域でしかも12月の冬であれば、ウール100%の薄手の毛布みたいな生地で縫製された服であろうと考えられます。羊の毛皮はこのころは色付けすることもないので鮮やかな赤色に色をつけるのは困難と考えられます。
白の縁取りの部分は白い毛の動物の毛皮でないとあのフサフサ感は出せませんので、シロウサギの毛皮と考えます。あとは赤色に染める方法ですが、ウールを赤く染めるのはアカネという植物の根やカイガラムシの体内の赤色色素をつぶして乾燥させて染めることは今でも出来る手法なので、染めることもさほど難しいものではなかった時代と考えます。
ここまでくると。筆者だったらサンタさんの衣装をつくるならどうするという推測になってしまいますが、当然、正解も確かめられないのでまとめますと
素材は 羊毛100%
組織は 平織 フラノ(ちょっと厚手の毛織物)
染色は 赤の天然染料の糸染め
加工は 湯洗で生地の目を詰まらせ厚みを出す
縫製は 白ウサギの毛皮で縁取り
ということで、当時は作っていたと思います。
筆者の思い込みですが再現はできる手法です。冬のクリスマスの日にあまり寒々しい恰好(かっこう)もできませんので、こんないでたちが相応(ふさ)わしいのではと思います。
またちょっと話が逸れてしまいますが、日本では歴史的に毛織物について書かれた文献がほとんど見当たりません。もちろん交易品として持ち込まれものはあるのでしょうが、物造りとしての毛織物は明治以降でないと記述がありません。もちろん羊が生息していたわけでもありませんので、動物の毛を糸にするという発想はなかったのだと思います。
動物は毛皮として加工されるもので防寒服にはなっていたのですが、綿織物や麻織物と絹織物しか国内では作られることはなかったようです。
筆者が知っている話としては、平安時代の歴史書“扶桑略記(ふそうりゃくき)”という本の中に、越後の国では「兎褐(とかち)」という綿織物に兎の毛を混ぜて織られた生地の生産が盛んで、704年に朝廷に献上したと書かれているということです。越後は現在の新潟県あたりで寒い地域なので、防寒対策として生活の知恵で綿に兎の毛を混ぜたのかもしれません。
しかしこれも毛織物とは呼びにくく、分類的にはウール混の綿織物ということになってしまいます。伝統品として今また再現すれば話題になるかもしれません。
2015年最後のコラム 今年もありがとうございました
今年最後のコラムですが、筆者の勝手な想像原稿になってしまいました。「この 内容ならクリスマス前に書いといてよ」という声も聞こえてきそうですが思いつきなもので・・・。
ともあれ今年も読んでいただき感謝しております、ありがとうございました。
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