アパレル散歩道

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第40回 : ものつくり原点回帰シリーズ ~染色 その2~

2022/05/01

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2022.5.1

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 前回の第39回アパレル散歩道では、「染色 その1」として、染色のメカニズム、染料、染色機などを取り上げました。今回の第40回アパレル散歩道「染色 その2」では、染色後の「仕上加工」について紹介します。染め上がりの生地は、仕上工程で付加価値を向上させる加工が施されます。しかし、仕上工程の機能加工も、決して万能ではなく、いろいろな課題もあります。その課題をぜひご確認ください。


  1. 仕上加工
     染色工程には、図1のように、「準備工程」、「染色工程」、「仕上工程」があります。本稿では、「仕上工程」を中心に話をすすめます。仕上工程は、染め上がりの生地に対して、ちょうど「お化粧」を施すようなものです。生地に各種の機能性を付与することにより、求められる価値を創造します。また、仕上工程には、「一般整理加工」「機能加工」の2つがあります。表1で、この「一般整理加工」と「機能加工」の概要と種類を紹介します。

    準備
    工程
    染色
    工程
    仕上
    工程

    図1.染色工程の流れ



    表1.仕上工程の種類
    分類概要仕上加工の種類(抜粋)
    一般整理加工物理的や化学的処理によって、生地外観や風合いを調整するカレンダー加工
    エンボス加工
    しわ加工
    起毛加工
    洗い加工
    オーガンジ加工
    オパール加工  など
    機能加工物理的や化学的処理によって、生地に新たな機能性を付与する防縮加工
    W&W加工(ウォッシュ・アンド・ウェア加工)
    はっ水、防水加工
    透湿防水加工
    はつ油、防汚加工
    難燃加工
    防虫加工
    抗菌防臭加工、制菌加工  
    消臭加工
    紫外線遮蔽加工(UVカット加工)  など


  2. 一般整理加工
     物理的や化学的処理によって、生地の外観や風合いを調整する加工で、カレンダー加工、エンボス加工、 しわ加工、起毛加工、洗い加工、オーガンジ加工、オパール加工などがあります。
    1. カレンダー加工
       カレンダーローラーで生地表面を高温加圧し、平滑にして光沢を付与する加工のこと。対象素材、ローラー材質、温度、圧力によって、得られる光沢外観も異なります。羽毛製品用の表地で、羽毛の吹き出しを防ぐダウンプルーフ加工も、この加工のひとつです。薄地織物素材では、過度なカレンダー加工によって、ペーパーライクになり、引裂き強さが低下することがあるので注意が必要です。また、素材やカレンダー条件によっては、経時的な光沢の消失も考えられるため、事前に洗濯試験で外観変化を確認しておくとよいでしょう。

      図2.カレンダー加工生地の一例
      図2.カレンダー加工生地の一例



    2. エンボス加工
       所定の柄を刻印した金属ロールと加熱したローラーに生地を通して、表面に凹凸の柄を与える加工のこと。
      ポリエステルなどの合成繊維は熱可塑性のため、洗濯などの耐久性は期待できますが、綿などセルロース生地では、熱セット性に乏しく、樹脂加工などが併用されます。薄地素材のエンボス加工では、カレンダー加工と同様に、引裂き強さや破裂強さが低下することがあり、加工後の物性チェックが必要となります。
      図3.エンボス加工生地の一例
      図3.エンボス加工生地の一例
      図4.しわ加工生地の一例
      図4.しわ加工生地の一例


    3. しわ加工
       生地に積極的に「しわ」を与え、独自の感性を発現する加工のこと。合成繊維では、板締め、袋詰め、箱詰め状態で、熱水、スチーム、乾熱処理でしわがセットされます。手法によって、さまざまな形状のしわが再現されます。(図4参照)
       綿素材では、アルカリ浴中で自然な「しわ」がセットされますが、洗濯などの耐久性を与えるため、樹脂加工が併用されることがあります。また、製品洗いで、独自なウォッシュアウト(洗いざらし)感を表現することも、しわ加工と呼ばれています。
      表2.起毛加工の種類
      起毛の種類概要
      針布起毛フリースなどで使用される。起毛ドラムに取り付けられた針布で起毛される。折れた針が生地に残る可能性があるため、注意を要する。(図5. 図7参照)
      エメリ起毛研磨布(サンドペーパーなど)を用いた起毛。毛足は短かいのが特徴でピーチスキン調となる。
      あざみ起毛天然のあざみの実の細くてしなやかな棘で起毛する。カシミヤなど特殊な起毛に使用される。(図6参照)


    4. 起毛加工
       生地表面から、針布などを用いて、毛羽立たせる加工のこと。生地のボリューム感、肌当たり感、保温性、風合いを向上させます。起毛後、起毛長さを揃えるためにシャーリングされるため、浮遊毛の残留による毛羽付着の消費者クレームにつながることがあるので、事前に毛羽付き試験などを実施し、毛羽付きの程度を確認しておくことが重要です。場合により、取り扱い表示で消費者にリスクを伝えることが大切です。起毛を生じさせる方法には、表2のように、主に「針布起毛」、「エメリ起毛」がありますが、また特殊用途として「あざみ起毛」などもあります。

      図5.針布起毛機の針布の例
      図5.針布起毛機の針布の例



      図6.あざみの実とあざみ起毛機
      図6.あざみの実とあざみ起毛機
      図7.起毛素材(フリース)の外観例
      図7.起毛素材(フリース)の外観例


    5. オーガンジ加工
       綿や綿混用の生地を硫酸などの強酸で処理し、綿繊維を溶解し、透明感のある硬い風合いを付与する加工のことです。婦人用ドレス、ウェディングドレス、ブラウス、シャツなどに使用されています。 次の2.6のオパール加工も同様ですが、薬剤で一部溶かして柄を表現しているため、生地の強度は決して強くありません。このため、厳しい運動が想定される用途やタイトシルエットには適さないことがあり、要注意となります。

      図7.オーガンジ加工生地の例
      図7.オーガンジ加工生地の例



    6. オパール加工
       綿/ポリエステルなど、耐薬品性の異なる繊維の混用生地に薬剤をプリントし、一方の繊維を薬剤で除去し、透明感のある柄を得る加工のことです。前述の綿/ポリエステル混用生地では、強酸を含む色糊をプリントして、高温で綿成分を炭化・脱落させ、ポリエステル繊維だけが残り、透明感のある特殊な素材が完成します。

      図8.オパール加工生地の例
      図8.オパール加工生地の例



  3. 機能加工
     染色工程における機能加工は、物理的や化学的に処理によって、生地に新たな機能性を付与するために行われます。特に最近のアパレル製品では、付加価値向上のため、多くの機能加工が採用されています。機能加工には、防縮加工、W&W加工(ウォッシュ・アンド・ウェア加工)、はっ水加工、防水加工、透湿防水加工、はつ油・防汚加工、難燃・防炎加工、抗菌防臭加工、制菌加工、消臭加工、UVカット加工などがありますが、ここでは、この一部を紹介します。

    1. 防縮加工
       天然繊維製品が、洗濯などで収縮することを防ぐ加工のことです。合成繊維素材は、合繊の軟化点以上の温度で熱セットし、形状を固定し安定化させるのが一般的です。熱セット性の乏しい綿などの天然繊維では、次のような方法が取られます。

      表3.防縮加工の種類
      加工の種類加工の対象素材概要
      マーセライズ加工
      (シルケット加工)
      綿(糸・織編物)緊張下で苛性ソーダ処理して、繊維の構造を変化させ膨潤しにくくしている。近年では、液体アンモニア加工も使用されている。
      樹脂加工(注1)綿・レーヨン
      (糸・織編物)
      繊維の非結晶部に樹脂加工し、架橋結合によって、繊維の膨潤を防ぐ。
      サンフォライズ加工綿織物綿織物のたて方向に機械的な強制収縮を施し、濡れても緩和収縮しないようにする。
      スケールオフ加工羊毛
      (トップ、織編物)
      表面スケールの除去や樹脂加工を施し、フェルト収縮を防止する。
      (注1) 加工樹脂の種類により、遊離ホルムアルデヒドが溶出し、かぶれなどが発生することが あるため、特に直接肌に触れる衣料や乳幼児衣料では、事前の品質チェックが大切です。


      1. サンフォライズ加工
         表3のサンフォライズ加工は、伸ばしたゴムベルトとローラーの間に織物生地を挿入して、ゴムベルトの収縮戻りを利用して、生地を縦方向に押し込こむ加工です。高級綿織物素材などに使用されます。


      2. スケールオフ加工
         羊毛は、その外観のスケール(鱗片)の絡まりにより、フェルト化して縮みやすい性質があります。スケールオフ加工は、そのスケールを薬剤処理し、変質除去させ、水洗いをしても縮みにくいウール素材(ウォッシャブルウール)を目指す加工です。

        乾燥状態

        羊毛の収縮 乾燥状態

        湿潤状態

        羊毛の収縮 湿潤状態

        図10.羊毛の収縮のメカニズム1)



    2. W&W(ウォッシュ・アンド・ウェア)加工
       綿のワイシャツなどは吸水性に優れていますが、しわになりやすい弱点があります。綿製品に形態安定加工を施し、洗濯後もノーアイロンで着用できる性能は「W&W性」と呼ばれています。洗ってすぐ着れるという意味です。ポリエステル素材は、もともと熱セット性があるため形態安定性がありますが、綿などのセルロース織物では、以下のような手法で、W&W加工が施されます。ワイシャツ、ドレスシャツ、ポロシャツ、ブラウスなどに応用されます。製品には、図11のような機能下げ札がついていることがあります。
      1. 縫製後にホルマリンを主体としたガスを吹き付け、繊維分子同士を結び付ける方法(VP加工法)
      2. 液体アンモニア処理した生地に樹脂加工剤を施し、縫製加工した後に加熱処理する方法(ポストキュア法)
      3. 生地に樹脂加工を施す方法(プレキュア法)


      この製品には、W&W
       (ウォッシュ・アンド・ウェア)加工を施しています

      形態安定加工
      を施しています。
      (W&W加工)


      防しわ加工で
      アイロン要らず(W&W加工)

      図11.W&W加工 機能性表示の例



    3. はっ水、防水加工
       「はっ水」とは、水を弾く性質で、「防水」は、はっ水、漏水、耐水の総称です。アパレル製品の防水加工は、生地の裏面などにポリウレタン樹脂などをコーティングやラミネートして、激しい雨に対して生地目から雨が浸入しない機能を実現しています。短時間のしとしと雨などを防ぐ程度ならば、はっ水加工だけで対応できる可能性がありますが、長時間の雨や雪、激しい風雨が想定されるレインウエア、ブルゾン、ブレーカー、テント用グランドシートなどには、はっ水加工と防水加工が併用されています。
       「はっ水加工」は、図12のように、糸の表面にはっ水剤が塗布されているため、強い水圧や圧力がかかると、雨滴は糸の隙間を通り抜けて、衣服内に浸入し衣服内が濡れる場合があることを理解してください。
      また、はっ水加工に使用される薬剤の耐久性は、繰り返し洗濯や汚れの付着で低下します。特に、汚れが付着すると、はっ水剤が残っているのにはっ水性が低下して問題になることがあります。これを確認するためには、一度製品を水洗いして、はっ水性が復元するか否かを確認するとよいでしょう。表示対策では、必要に応じて、「はっ水が低下したらクリーニング店で再はっ水加工をお勧めします」など、消費者に情報提供することが大切です。 

      図12.はっ水のメカニズム
      図12.はっ水のメカニズム



        はっ水が低下する原因
        原因1.
        洗濯や摩擦で、はっ水剤が脱落する。
        このケースは、水洗いではっ水性は復元しにくい。
        原因2.
        はっ水剤は残っているが、汚れが付着してはっ水が低下する。
        このケースは、水洗いではっ水性は復元する。
        汚れには、手の皮脂なども含まれます。


    4. 透湿防水加工
       透湿防水とは、3.3の防水加工の項で、透湿機能のある防水樹脂を使用することで実現します。
      「アパレル散歩道~第29回」で、「透湿防水性」についてお話しました。改めて見返ししていただきたいと思います。この時の「道しるべ」でも記載しましたが、透湿防水素材も完璧ではなく、使用条件によっては、以下の課題があることを認識していただきたいと思います。
      1. 高湿度環境では、逆に外部の湿気が衣服内に侵入することがある。
      2. 透湿能力以上の発汗があると、衣服内が結露することがある。
      3. ポリウレタン樹脂が多用されているため、経年劣化が基本的に避けられない。
       私の現職時代にも、お客様から「スキーをしたら、雨や雪も降らなかったのに、スキーウエア内がとても濡れた」というご指摘をいただいたことがあります。このケースは、上記②に該当し、比較的暖かいゲレンデ環境でハードな運動をされたため、大量の発汗があったものと推定しました。また、生地加工のトラブルによって、透湿性の低い生地が混入する可能性もあることもご承知おきください。
      「透湿防水性」は、「透湿性」と「防水性」で構成されます。試験方法について、以下に紹介します。
      1. 透湿度試験
         繊維製品の透湿性は、「JIS L 1099繊維製品の透湿度試験」で規定され、A-1法とB-1法などがあります。
        いずれも、吸湿剤である塩化カルシウムや酢酸カリウムを用いて、試料の透湿度を評価する方法です。試験の詳細は、一般財団法人ニッセンケン品質評価センターにお問い合わせください。

        表4.JIS L 1099透湿度試験の種類
        試験法結果と単位
        A-1法塩化カルシウム法透湿度 (g/m²・h)
        B-1法がA-1法より大きな数値がでる
        B-1法酢酸カリウム法


         表4のように、透湿度の単位であるg/m2・hは、1時間当たりの生地試料1m2 を透過する水蒸気量(g)の意味ですが、アウトドア、スポーツ業界などでは、1時間当たりではなく、24時間当たりの数値に換算して、表示することを慣習にしているところがあります。また、B-1法のほうが、A-1法より大きな数値が得られるため、あえてB-1法を採用しているメーカーやブランドもあります。いずれにしても、透湿性が付記されたデータを見て試験結果を比較する場合は、「試験法」と「単位」をよく確認することが大切です。また、製品に表示をする場合も、消費者が誤認しないように、試験法や単位を明記することが必要と考えます。
         私の現職時代の経験で申し上げますと、一般的な管理基準が4000g/m²・24hに対して、お客様から「このウエアは蒸れ易い」とご指摘を頂き、測定したら加工のばらつきで3500gしかなかったという経験がありました。

          透湿性のデータの見方
          以下の2つをしっかり確認してください。
          ①試験法は、A-1法か、B-1法か、またはそれ以外か
          ②単位は、 (g/m²・h)か (g/m²・24h)か


      2. 防水試験
         日本産業規格(JIS)では、防水性は、耐水性・はっ水性・漏水性の総称とされています。この中で、耐水性試験は、生地試料に水圧をかけると、どの程度で水が反対面から染み出すかを評価するものです。
        本項では、「JIS L 1092 繊維製品の防水性試験方法」の耐水度試験をご紹介します。
         A法(低水圧法)は、比較的耐水性の低い一般レインウエアやウインドブレーカーなどに使用されます。生地の片面に水柱による水圧をかけて、水漏れが発生したときの水柱高さをmmで示します。B法(高水圧法)は、アウトドアレインウエア、スキーウエア、作業服などに使用されます。生地の片面に強制的に水圧をかけて、水漏れが発生したときの水圧をkPa(キロパスカル)で示します。試験の詳細は、(一財)ニッセンケン品質評価センターにお問い合わせください。
        表5.透湿度試験(JIS L 1092)の種類
        試験法用途結果と単位
        A法低水圧法一般レインウエア、ウインドブレーカー など耐水度(mm)
        B法高水圧法アウトドアレイン、スキーウエア、作業服 など耐水度(kPa)

        ※2つの単位の関係は、「1kPa=101.972mm」となります。



         最近のスポーツウエア用の素材は、裏面に透湿防水コーティングやラミネートが施され、その耐水度は、5000mmから10000mm以上のものまで多種多様となっていますが、この数値はあくまでも生地の実力であり、縫製品であれば、縫い目部の耐水性は1000mm以下であることを認識ください。衣料品で防水性を期待するなら、縫い目のシームシーリングが不可欠で、ポリウレタン系のフィルムを専用の接着機を使用して実現します。


    5. 防汚加工
       防汚加工には、①汚れが付きにくい(SG加工)、②汚れが落ちやすい、汚れが再汚染しにくい(SR加工)、などがあります。商品企画する衣料品の用途によって、防汚加工のタイプを検討することが望ましいといえます。
       スポーツウエアの用途でも、野球ユニフォームの泥汚れ、サッカーパンツの天然芝生汚れなどが、検討されていました。
       防汚性の評価は、JIS L 1919(繊維製品の防汚性試験方法)で規定されています。試験の詳細は、一般財団法人ニッセンケン品質評価センターにお問い合わせください。

      表6.防汚性の種類
      タイプ説明
      SG
      (Soil Guard)加工
      汚れがつきにくくする加工で、フッ素系加工剤等により、はっ水性とはつ油性を与える加工のこと。はっ水・はつ油加工によって、親水性及び親油性の汚れが付着しにくくなる。
      SR
      (Soil Release)加工
      付着汚れを洗濯で落ちやすくする加工のこと。生地を親水化処理することによって、汚れは落ちやすくなる。


    6. 難燃加工
       一般の衣料品やアパレル製品では、この加工は施されませんが、高層ビル、地下街、劇場や病院などで使用されるカーテンやカーペットなどでは、消防法で防炎素材を使用することが求められています。難燃加工は、染色仕上げ工程で、特殊な薬剤を用いて繊維原料の高分子を合成反応の段階から燃えにくくする加工のことです。作業用衣料品の用途であれば、この加工が求められることがあるかもしれません。
      評価方法には、「JIS L 1091繊維製品の燃焼性試験方法」があり、製品の用途やアイテムによって、A法からE法まで規定されています。
      表7.燃焼試験方法2)
      試験の種類試験に適する繊維製品
      A法(燃焼試験):燃焼の広がり(面積および長さ)、残炎・残じん時間の測定A-1法(45°ミクロバーナ法)薄地(質量450g/m²以下)の繊維製品(カーテン、幕類)
      A-2法(45°メッケルバーナ法)厚地(質量が450g/m²超)の繊維製品(カーテン、幕類)
      A-3法(水平法)特殊な用途に用いる繊維製品(シート類)
      A-4法(垂直法)特殊な用途に用いる繊維製品(寝衣類など)
      B法(表面燃焼試験):表面の燃焼の広がりを測定厚地の繊維製品(敷物類)
      C法(燃焼速度試験):燃焼の速さの程度を測定薄地の繊維製品(スカーフ類、衣料品など)
      D法(接炎試験):燃焼しつくすまでの接炎回数を測定加熱によって溶融する繊維製品
      E法(酸素指数法試験):酸素指数による燃焼性の測定一般(試料の支持方法に3種類ある)


    7. 抗菌防臭加工
       抗菌防臭加工は、「繊維上の細菌の増殖を抑制し、防臭効果を示す」加工のことです。
      JIS L 1902「繊維製品の抗菌性試験方法および抗菌効果」で評価されます。運動などで汗をかいたまま放置すると、細菌が増殖し老廃物として異臭が発生することがあります。最近では、女性用だけでなく、全般的なデオドラント機能として、これらの加工が求められています。
       抗菌防臭加工は、繊維上で黄色ぶどう球菌などの増殖を抑え、汗や汚れから発生する悪臭を軽減する加工で、一般社団法人繊維評価技術協議会(JTETC)による抗菌性や防臭効果の性能と耐久性、安全性の規格としてSEKマーク制度があります。夏物インナー全般、スポーツシャツなどに使用されています。


    8. 制菌加工
       制菌加工は、病院衣料、シーツなどに適用されます。肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、MRSAの増殖が抑制される加工です。同様にSEKマークで認証制度があります。特殊な医療用途の製品に適合する加工です。


    9. 消臭加工
       われわれが、平生気になる悪臭には、①アンモニア(糞尿臭)、②メルカブタン(生ごみ臭)、③硫化水素(腐卵臭)、トリメチルアミン(魚臭)などがあります。消臭加工とは、繊維が臭気成分に触れることによって不快感を減少させる効果を持たせる加工のことです。ソックスや下着などに付着した汗分解物、体臭などの不快な臭気を消す機能を付与したり、スポーツバッグなどの内装材にこれらの消臭加工が施されることがあります。


    10. 紫外線遮蔽加工(UVカット加工)
        「アパレル散歩道 第29回」の3.5で、紫外線遮蔽性について説明しました。紫外線遮蔽加工とは、太陽光の中の人体に有害な紫外線をカットして皮膚を保護する加工のことです。以前から、白や淡色の夏物衣料は、光を透過する弱点がありました。最近の安全健康の意識の高まりとともに、白物や淡色生地でも、紫外線対策が施された商品が求められています。対策には、①繊維内部に酸化チタンなど紫外線を散乱させる物質を配合した合成繊維を使用、②染色加工時に紫外線吸収剤を使用などが考えられますが、今回のテーマからすると、②が本テーマに該当します。




(参考資料)
1)「染色加工学」日本衣料管理協会、P102図12-1引用
2)「繊維製品の基礎知識:家庭用繊維製品の製造と品質」、日本衣料管理協会、 P129引用

(次回のアパレル散歩道 / 6月1日発行)

次回は、ものつくり原点回帰シリーズ~縫製 その1~を予定しています。

コラム : アパレル散歩道41
~魅力ある商品を開発するために~
テーマ : ものつくり原点回帰シリーズ ~縫製 その1~


発行元
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター 事業推進室 マーケティンググループ
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp URL:https://nissenken.or.jp

※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)

清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)

43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウェアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。趣味は27年間続けているマラソンで、これまで296回の大会に参加。



社外経歴
(一財)日本繊維製品消費科学会 元副会長
日本繊維技術士センター理事 技術士(繊維)
文部科学省大学間連携共同教育事業評価委員
日本衣料管理協会理事 TES会西日本支部代表幹事

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