アパレル散歩道

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第63回 : 「テキスタイルの寸法安定性」

2024/04/01

テキスタイルの特性を学ぼうアパレル散歩道 テキスタイルの特性を学ぼう
テキスタイル(生地)、衣料品の寸法安定性はとても大切です。縫製生産工程で適正に裁断した完成品が、消費者の取り扱いやクリーニング、洗濯、プレス、アイロンで大きく縮んだり、また伸び切ったりすることがあります。

2024.4.1

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  1. はじめに
     テキスタイル(生地)、衣料品の寸法安定性はとても大切です。縫製生産工程で適正に裁断した完成品が、消費者の取り扱いやクリーニング、洗濯、プレス、アイロンで大きく縮んだり、また伸び切ったりすることがあります。繊維や糸で構成されるテキスタイルは、金属製品、プラスチック成型品、ガラス製品などと比較すると、家庭洗濯や熱処理で若干縮むことは避けられません。このような性質は、繊維・テキスタイルの持つ技術限界と考えられますが、アパレルに関わる私たちは、「これらは当然で仕方がない」と是認するのではなく、消費者目線で、収縮トラブルをいかにミニマイズできるかを検討すべきであり、素材の品質管理、商品設計、取扱い表示、縫製仕様などの各段階で対策を講じることが重要です。
     本項では、テキスタイルの寸法安定性の視点から、基本的な寸法安定性の考え方を整理します。


  2. テキスタイルの寸法安定性
    寸法安定性とは、着用や洗濯で形崩れや寸法変化が少ない性質のことです。関連した単語を寸法安定性も含めて表1に紹介します。

    表1 寸法変化に関する関連の単語例
    単語説明
    寸法安定性 (dimensional stability)着用や洗濯で形崩れや寸法変化が少ない性質
    寸法変化率 (dimensional change ratio)家庭洗濯やドライクリーニング、プレスなどで生じる縮みや伸びを百分率(%)で示したもの
    寸法安定加工 (dimensional stability finish) 寸法安定性を実現するための染色仕上げ時の加工

     また、寸法変化率とよく似た単語で、収縮率という単語がありますが、この2つはどのような関係でしょうか。
     それは過去の日本産業規格(JIS)改正に関係しています。1999年に、それまでのJIS L 1042「織物の収縮率試験方法」JIS L 1018「ニット試験方法」が統合され、現在のJIS L 1096「織物及び編物の生地試験方法」が制定されましたが、統合にあたり、収縮率の項は寸法変化率に改訂されました。寸法変化率では、伸びるとプラスの数値になり、縮むとマイナスの数値となります。現在、アパレルメーカーの品質管理基準は、基本的に寸法変化率(%)で統一されています。
     参考までに、それぞれの計算式を表2に示します。また、品質基準の表記例を表3に示しました。

    表2 収縮率と寸法変化率の計算式
    項目計算式備考
    収縮率収縮率
    =(処理前の寸法-処理後の寸法) / 処理前の寸法 ×100
    マイナスは伸び、
    プラスは縮みを示す
    寸法変化率寸法変化率
    =(処理後の寸法-処理前の寸法) / 処理前の寸法 ×100
    マイナスは縮み、
    プラスは伸びを示す

    表3 品質基準の表記例
    織物の例ニットの例
    寸法変化率
    (%)
    タンブル乾燥 ±3%以内タンブル乾燥 -6~0%
    吊干し    ±2%以内吊干し    -4~2%
    注 : 基準の数値は例です

      ~吊干しの特徴は?~
      ニット製品を吊干しすると、水分を含んだ製品は重くなり、その自重で、たて方向に引張られながら乾くので、たて方向の縮みはタンブル乾燥よりは軽微になる傾向があります。また、その傾向は水分率の大きい天然繊維系衣料のほうが、合繊系衣料より大きいと言えます。
      ~試験結果を見る時の注意~
      品質試験結果で、寸法安定性を確認する時は、
      • 試験はJISの何法で実施されているか
      • 項目が寸法変化率か収縮率か
      • 乾燥方法は吊干しか、タンブル乾燥か
      により、試験結果の意味が大きく異なり、判断に影響を与えます ので、ご注意ください。


  3. 寸法安定性が衣料品に与える影響
     衣料品は、繰り返しの洗濯やアイロン、プレスによって、着丈や胸回り、襟などが縮んだり、場合によっては、逆に首回りのリブ編みなどが伸び切ることがあります。しかしその変化の程度は、テキスタイルの構造や糸種、洗濯乾燥条件、アイロンやプレスの熱条件などによって異なります。
     また、テキスタイル素材の中でも、ニットは織物に比べると洗濯寸法安定性は低く、綿ニットシャツなどでは、家庭洗濯で着丈などが大きく縮むケースもあります。一方、ナイロンなど合成繊維素材はアイロンなどによる熱収縮が生じるリスクも考えられます。

    1. 洗濯収縮のメカニズム
       衣料品の収縮は、主に素材の収縮に起因します。衣料品は、主に家庭洗濯時に水に濡れ、その後の乾燥で収縮しますが、洗濯収縮のメカニズムには、主に「緩和収縮」と「膨潤収縮」があります。また、ウール製品では素材特有の「フェルト収縮」もあります。(「アパレル散歩道 第49回」参照のこと)
       一方、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維製品は、熱セット性があるため、天然繊維に比べると洗濯収縮事故も少ないと言えます。緩和収縮・膨潤収縮のいずれも、綿や麻、レーヨンなど熱セット性の小さいセルロース製品で発生しています。
        • 寸法変化の事故は、天然繊維系、再生繊維系の衣料品に多い
        • 合成繊維系の衣料品では、事故は少ない
        • 天然繊維素材と合成繊維素材を縫い合わせた商品では、変形やパッカリングのリスクがあり、事前に洗濯テストを実施するのが良い


      (1) 緩和収縮
       綿などセルロース系生地では、染色加工中の過度な引張りによって生地に歪みが生じると、その歪みが糸や生地組織内部に残留し、製品完成後に家庭洗濯の水中でリラックスすることにより、内部歪みが緩和されて安定した状態に復元することがあります。これが緩和収縮です。一般的に、もともと伸びやすいセルロース系ニット素材で特に発生しやすいと言われています。
       編機や織機で作られた生機きばたは、染色加工工程で、適正な目付(g/m²)や密度(本/inch)に仕上げられますが、生産工程の何らかのトラブルにより、適正条件より幅を出し過ぎたり、長さ方向に大きく引っ張られて仕上がると、大きな歪みが内部に残留することになります。
       対策としては、染色加工場では適切な仕上げを実施するのはもちろん、アパレルメーカーでは試作時だけでなく、本生産時のテキスタイルの寸法変化率を試験して品質基準に合致しているかの確認が求められます。また、消費者への情報提供として、緩和収縮が懸念される商品については適正な取扱い表示、適正な乾燥処理情報の提供(吊干しの指定など)が望まれます。

      (2) 膨潤収縮
       膨潤収縮も、主にセルロース系など親水性織物で発生します。
       図1の膨潤収縮のメカニズムによると、綿繊維などが吸水して膨潤すると繊維の直径が太くなります。特に織物では糸が太くなっても糸長が変化しないので、糸の曲がり構造が大きくなって、織物構造が変化して収縮が発生します。
       これが膨潤収縮で、図1のAとBの差のA-Bが膨潤収縮の大きさになります。

      図1 膨潤収縮のメカニズム
      図1 膨潤収縮のメカニズム1)


      (3)フェルト収縮
       ウール素材に水分と熱を与えて機械的な摩擦を繰り返すと、図2のウール繊維特有の外観であるスケールによって、ウール繊維同士が絡まりあって、より緻密な構造に変化することがあります。この現象をフェルト化といい、長さ方向・幅方向ともにフェルト収縮が発生します。このフェルト化による収縮は、基本的に回復させることは難しい現象です。またフェルト収縮は、着用時でも生じることがあります。
       表4にフェルト収縮の事故事例を示します。

      図2 ウール繊維の外観
      図2 ウール繊維の外観



      表4 フェルト収縮の事故事例
      事例製品事故例要因
      1毛織物
      シャツ
      汗によって湿潤したシャツとリュック背面との摩擦の複合作用によって、背中部がフェルト収縮した着用時のリュックとの擦れ
      2ウール
      セータ
      家庭洗濯で丸洗いしたら、全体がフェルト収縮した
      中性洗剤も使用しなかった
      洗濯方法、洗剤液性
      3ウール
      背広
      クリーニング店でドライクリーニングされたが、溶剤の水分管理の要因で、水分が多かったため、フェルト収縮したクリーニング条件


    2. テキスタイルの洗濯収縮の対策
       上記3.1で、洗濯収縮には、緩和収縮、膨潤収縮、フェルト収縮があると説明しました。
       次に、これらの対策を表5に示します。この表では、a.潜在要因とb.付加要因を挙げていますが、これは、対象繊維の特性に起因する潜在的な要因がまずあって、これに加えて新たな付加要因が複合することにより、収縮現象が発現するケースが多いことを示しています。防止策として、製造段階、縫製段階、消費者への情報提供(表示など)のそれぞれの段階で、テキスタイルを構成する繊維・糸や組織を考慮した対策をすることが求められます。

      表5 洗濯収縮の要因と対策のまとめ2)
      分類対象となる繊維a.潜在要因b.付加要因防止策例
      緩和収縮天然繊維
      (綿・麻・ウールなど)
      糸や生地の内部の応力緩和
      • 水や水蒸気
      • 時間
      • リラックス加工
        (染色工程でのリラックス化、縫製時の放反など)
      • サンフォライズ加工
        (アパレル散歩道 第40回3.1.1 参照)
      合成繊維
      (ナイロン・ポリエステルなど)
      • 熱や時間
      • リラックス加工
        (染色工程でのリラックス化、縫製時の放反など)
      • 熱セット(プレセット、ファイナルセット)
      膨潤収縮綿・麻吸水による膨潤
      • 樹脂加工
      フェルト収縮ウール繊維表面のスケールによる摩擦や揉み
      • 水と機械力の複合作用
      • 洗剤の液性
      • スケール除去
      • 樹脂加工
      • 他繊維混用
      • 取扱い表示の適正化


  4. 熱収縮
     熱可塑性である合成繊維から作られているテキスタイル(織物やニット)では、アイロンやプレス機の高温で熱収縮が生じることがあります。

    1. 熱収縮のメカニズム
       ナイロンやポリエステルなどの合成繊維は、石油から作られた原料チップを熱で溶かして、微小な穴から押し出して作られています。このため、合成繊維は一定の温度で融けたり、熱収縮する性質があります。表6は、主な繊維の熱的特性を示しています。
       合成繊維を加熱すると、まず繊維は軟化点で柔らかくなり、やがて融点になると高分子が流動し融け出します。合成繊維は軟化点付近で収縮し始めると言われており、アイロンやプレス加工では、軟化点以下で取扱いをすることが求められています。これが「合成繊維は熱に弱い」「アイロンは低温アイロンで」と言われる所以です。

      表6 繊維の軟化点と融点
      繊維の種類軟化点融点
      ナイロン6180℃215~220℃
      ポリエステル238~240℃255~260℃
      綿なしなし


    2. 取扱い表示(アイロン)について
       製品に表示するJIS L 0001に基づくアイロン取扱い表示(表7)も、使用素材に応じた適正な表示が求められます。(「アパレル散歩道 第45回」2.2.4参照)

      表7 JIS規格のアイロンに関する記号
      JIS L 0001
      番号
      500510520530
      記号 JIS L0001 500 JIS L0001 510 JIS L0001 520 JIS L0001 530
      意味 アイロン仕上げはできない 110℃を限度としてスチームなしでアイロン仕上げができる 150℃を限度としてアイロン仕上げができる 200℃を限度としてアイロン仕上げができる


    3. スチームアイロンについて
       アイロンには、ドライアイロンとスチームアイロンがあります。通常、家庭用アイロンでは、用途によってスチームのON/OFFを切り替える方式が多くなっています。

      図3 家庭用アイロンの一例(スチームのON/OFFが切り替えられる)図3 家庭用アイロンの一例
      (スチームのON/OFFが切り替えられる)


       スチームアイロンとは、アイロン付属のタンクに入れた水を高温で蒸気にして「しわ」を伸ばす機能を持つアイロンのことです。最近では、アイロン台を使用するタイプのほかに、衣料品をハンガーにかけた状態でスチームをかけるスチーマータイプも市販されています。
      ~スチームアイロンの長所~
      • スチームでしわを伸ばすため、アイロンを浮かせて使用でき、ウール素材などの「当たり」、「てかり」などが軽減される
      • 綿スラックスなどのしわ取りやプリーツなど折り目をしっかりつけやすい
      • ウールセーターなどに水分を与えて、商品をふっくら仕上げられる
      • アイロン台以外で、ハンガー処理もできる
      • 高温スチームで、除菌や消臭効果が期待される


  5. 寸法変化率の試験方法
     JIS L 1096の寸法変化率試験は、表8・10・11のようにA法~H法、及びJ法が規定され、試験の目的に応じて使い分けられています。A法~G法が水洗い関連で、H法がプレス処理(熱収縮)関連、さらにJ法がドライクリーニング関連となります。
     なお、I(アイ)法は、表記的に「I」(アイ)と「1」(いち)が紛らわしいため、試験法として設定されていません。

    1. 洗濯寸法変化率試験
      (1) 洗濯方法
       A~D法は、基本的に静かに試験試料を浸漬し、その後、平干しで寸法変化率を算出します。
       E法・F法は、特殊な試験専用撹拌機を利用したシミュレーション試験法です。G法は、一般のタテ型家庭洗濯機を利用した実用試験といえます。筆者も現役当時は、G法を主体に品質管理をしていました。これは、合成繊維主体のスポーツウエア・作業服などは家庭洗濯の頻度が高く、実用性を考慮した家庭用洗濯機を使用するG法による品質管理が適していると考えられたからです。
       D法は洗濯機の攪拌による水流の影響がなく、生地が基本的に持っている寸法変化特性がはっきり分かる試験法であり、一般テキスタイルに適していると考えます。

      表8 洗濯寸法変化率試験の概要
      分類方法試験名備考
      浸漬処理A法常温水浸せき法25℃±2℃の水/30分浸漬
      B法沸騰水浸せき法沸騰水/30分浸漬
      C法浸透浸せき法25℃±2℃の非イオン系界面活性剤/30分浸漬
      D法石けん液浸せき法50℃±2℃の石けん液/20分浸漬
      家庭洗濯やクリーニングのランドリー処理E法洗濯試験機法50℃±2℃の石けん液
      F法ワッシャ法シリンダー形洗濯機 石けん液
      F-1(低温法) 40℃⇒すすぎ40℃
      F-2(中温法) 60℃⇒すすぎ40℃
      F-3(高温法) 100℃⇒すすぎ60℃
      G法家庭電気洗濯機法パルセーター形家庭用電気洗濯機


      (2) 乾燥方法
       乾燥方法では、基本的に、ライン乾燥(吊干し)、スクリーン乾燥(平干し)、そしてタンブル乾燥があります。JIS L 1096の寸法変化率試験には、各種の洗濯方法、乾燥方法の詳細は明記されていますが、その組み合わせは基本的に任意です。D法などは平干しが多いようですが、例えば、G法ではどの乾燥方法を採用するかは、商品の用途、テキスタイルの構造、混用率などを考慮して、アパレルメーカーが吊干しを指定するか、タンブル乾燥を指定するか、あるいは両方必要かを決定すべきであると考えます。
       特に最近は、消費者のライフスタイルの変化もあり、商業クリーニングでのタンブル乾燥機だけでなく、ドラム式洗濯機の普及により、家庭でもタンブル乾燥されるケースも増えています。また、海外では、日本よりも家庭用タンブル乾燥機が普及しています。これらは洗濯機器の普及による洗濯文化にほかなりません
       以上のことから、国内外の洗濯乾燥機器普及状況と商品性能をよく理解して、適切な品質管理と適切な取扱い表示の運用が求められています。

      表9 乾燥方法の概要
      乾燥方法概要
      ライン乾燥
      (吊干し)
      ライン乾燥脱水後に吊干し
      ドリップ・ライン乾燥脱水せずに吊干し
      スクリーン
      乾燥(平干し)
      スクリーン乾燥脱水後に平干し
      ドリップスクリーン乾燥脱水せずに平干し
      タンブル乾燥低温タンブル乾燥60℃を超えない温度で乾燥
      高温タンブル乾燥80℃を超えない温度で乾燥
      注 : ドリップは、干した衣料から水がしたたる意味で、俗に「だら干し」のイメージです

        ~見掛寸法変化率と正味寸法変化率~
        ニット製品では、洗濯で編目が大きく変形し、実際の収縮の実力以上に縮むことがあります。ニット素材によっては、引張れば容易に復元するものもあり、また復元しない素材もあります。このため、当該試験で、試料に一定の張力を加えて回復操作することがあります。回復操作をしないで測定した収縮率を見掛けの寸法変化率、回復操作を行なった後、測定した収縮率を正味の寸法変化率と呼んでいます。ニット素材の品質管理で、どちらを採用するかは、基準を運用するアパレルメーカーの判断となります。


    2. プレスによる寸法変化率試験
       表10は、プレスによる寸法変化率試験の概要です。H-1からH-4の種類が設定されていますが、これらは縫製工場のプレス仕上げの主なプレス処理方法が基本になって定められています。
       H-1法(乾熱加圧法)は、蒸気を使用しない乾熱処理です。H-2法(蒸熱オープン法)はプレス機の上ごてと下ごての間には隙間(オープン)があり、蒸気をふかすだけの処理です。「吸引」は生地付近をポンプで空気や蒸気を吸引し、急冷してセット仕上げ効果を高めています。
       H-3法(蓄熱加圧法)は、蒸気でふかして生地に温度と蒸気を与えた後に乾熱でプレスをします。そしてH-4法(蒸熱ロック法)では、プレスした状態(ロック)で蒸気をふかしており、スチームプレス試験としては厳しい試験といえます。

      図4 プレス機の例
      図4 プレス機の例



      表10 プレスによる寸法変化率試験の概要
      分類方法試験名試験の種類備考
      熱処理H法プレス法H-1法(乾熱加圧法)20秒間乾熱プレス⇒20秒間吸引
      H-2法(蒸熱オープン法)15秒間蒸気ふかし⇒15秒間吸引
      H-3法(蓄熱加圧法)20秒間蒸気ふかし⇒H-1法通りの圧力で20秒間プレス⇒20秒間吸引
      H-4法(蒸熱ロック法)H-1通りの圧力で20秒間蒸気をふかしながらプレス、20秒間吸引

      ~なぜプレス試験には4つ方法があるの?~
      プレスによる寸法変化率試験には、H-1からH-4までの方法があります。
      衣料品には縫い代段差があったり、コーデュロイのような立毛素材やツイードなどの毛乱れなど、プレス圧で注意すべき素材や縫製品があります。蒸気はセット効果が期待できますが、外観変化などのリスクがあります。また、ウール素材のハイグラルエクスパンションによる形態変化を防ぐためにも、速やかに排蒸気・排熱をする必要もあります。このように素材特性と縫製仕様などを踏まえて、複数のプレス条件が設定されています。
      (注) ハイグラルエクスパンション : 湿度変化によってウール繊維が水分を吸収または放出して伸縮する現象のこと


    3. ドライクリーニング(溶剤)処理
       ドライクリーニングによる寸法変化率試験は、専用のウォッシュシリンダ形洗濯装置を使用して試験します。使用溶剤により、J-1法(パークロロエチレン法)、J-2法(石油系法)があります。
       アパレルメーカーは、開発商品や使用素材を踏まえて、必要に応じて当該試験を実施し、品質管理に活用していただきたいと考えます。
      (「アパレル散歩道 第43回」ものつくり原点回帰シリーズ ~商業洗濯について~ 参照)

      表11 ドライクリーニングによる寸法変化率試験の概要
      分類方法試験名備考
      ドライクリーニング
      (溶剤)処理
      J法ドライクリーニング法J-1法(パークロロエチレン法)
      J-2法(石油系法)


(参考資料)
1)「業界マイスターに学ぶせんいの基礎講座」: 株式会社繊維社、一般社団法人日本繊維技術士センター編 P257
2)「繊維製品の基礎知識 第2部」: 一般社団法人日本衣料管理協会 P79 引用と加筆

(第64回 アパレル散歩道の予告 – 2024年5月1日公開予定)

 次回は、『テキスタイルの特性を学ぼう』の4回目として、④「水分に関する性質」を取り上げます。アパレル業界に携わる立場から、テキスタイル素材の特性を勉強しましょう。

著者Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)

清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)

43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウェアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。


社外経歴
一般社団法人日本繊維技術士センター
理事 技術士(繊維)
一般社団法人日本衣料管理協会
理事 TES会西日本支部顧問
大学非常勤講師
一般社団法人日本繊維製品消費科学会
元副会長
【発行】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
事業推進室 マーケティンググループ
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp
URL:https://nissenken.or.jp
※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

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