2022/03/01
第37回 : ものつくり原点回帰シリーズ ~織物~
アパレル散歩道
2023/08/01
2023.8.1
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色の変化の品質事故には、表1のように「黄変」の現象があります。黄変は、白色や淡色の繊維製品が外的作用で黄色、あるいは黄色っぽく変化する現象です。今回のアパレル散歩道では、この黄変の原因と対策について整理します。
大分類 | 中分類 |
---|---|
色の変化 | 変退色 |
汚染・色泣き | |
白化 | |
黄変 |
例 | 黄変事故例 | 原因要素 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 毛100%セーター(白色)黄変 長期間着用し保管していたら、セーターが黄ばんだ。洗濯はしていない。 |
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図1 黄変の例 (ナイロン製ブレーカーパンツ、左は新品) |
2 | ナイロン100%ブレーカー(白色)黄変 長期間着用していたら、ブレーカーが黄ばんできた。 |
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3 | ポリエステル100%ニット(白物)黄変 ポリ袋に入ったニットを店頭で出したら、畳み端がレモンイエロー色になっていた。 |
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4 | ポリエステル70% 綿30% ワイシャツ(白色)黄変 ワイシャツをクリーニング処理したら、襟とカフスのみ黄ばんだ。 |
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素材 | 原因の要素 | 説明 |
---|---|---|
天然繊維 (毛、綿など) | (1)染色加工 | 天然繊維はもともと不純物として黄みの成分を含むため、これを蛍光増白剤で純白に仕上げているが、外的作用によって蛍光増白剤が脱落することでもともとの黄みに復色することがある |
羊毛、絹、 ナイロン、 ポリウレタンなど | (2)繊維特性 | 毛、絹などのたんぱく質繊維やナイロン、ポリウレタンは、化学構造に窒素(N)を含み、紫外線による酸化などで黄ばみやすい |
(3)環境 | 日光や蛍光灯の紫外線で黄ばみやすい | |
空気中の酸化窒素ガス(NOx)によって黄ばみやすい | ||
全繊維素材 | (4)梱包資材 | 段ボール、木製棚板等との接触による黄変(バニリン黄変とも呼ばれる) |
ポリ袋やプラスチックハンガーに含まれるBHTとNOxガスとの複合による黄変(フェノール黄変とも呼ばれる) | ||
芯地など副資材 | (5)接着芯地の樹脂 | 芯地樹脂のタイプ、塩素系漂白剤との複合による黄変 |
工程 | 説明 |
---|---|
精錬 |
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漂白 |
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蛍光増白 |
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繊維本来の色
加工後の色
図2 白物衣料の復色のメカニズム
繊維の種類 | 化学構造上の特徴 | 化学構造 | 窒素(N)の有無 |
---|---|---|---|
羊毛、絹、ナイロン | アミド結合をもつ | 例 : ナイロン6の場合 アミド結合 : -CONH- | 有 |
ポリウレタン | ウレタン結合をもつ | ウレタン結合 : -COONH- | 有 |
ポリエステル | エステル結合をもつ | エステル結合 : -COO- | 無 |
綿、麻、レーヨンなど | セルロースの構造をもつ | 無 |
環境要因 | 発生源 | 備考 |
---|---|---|
酸化窒素ガス (NOx) | 自動車などの排気ガス、ファンヒーターの燃焼ガスなど | 「ガス黄変」とも呼ばれる |
光(紫外線) | 洗濯干しによる日光や店頭の蛍光灯など | 「光黄変」とも呼ばれる |
ガス黄変 | 光(紫外線)黄変 | |
---|---|---|
a.製品の在庫時など |
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b.消費者の取扱い時など |
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原因の要素 | 説明 | 備考 |
---|---|---|
梱包、包装資材 | 段ボール、木製棚板等との接触
(バニリン黄変とも呼ばれる) | 移染性物質であるバニリン汚染 |
包装ポリ袋やプラスチックハンガーなどと大気中のNOxガスとの複合作用 (フェノール黄変とも呼ばれる) | 酸化防止剤としてフェノール性化合物BHT(ブチルヒドロキシトルエン)と大気中のNOxガスとの複合作用 |
項目 | 対策内容 |
---|---|
段ボールなど 梱包資材の選定 | 可能であれば、リグニンやその分解物であるバニリンの含有量が少ない梱包資材を選択する。 |
段ボールなどとのバリア性 | 段ボールや木製棚板と白色製品が、直接接触しないよう工夫する。 |
包装仕様 | 梱包資材のバニリンが製品に触れないように、商品は個別にポリ袋に入れて、袋口を粘着剤で密閉できるタイプとする。 また、段ボール内側に大袋を使用し、商品はこれに収納する。 |
保管環境 | 製品を入れた段ボールなどは、高温多湿、直射日光での保管を避ける。また、長期間の保管や在庫は避ける。 |
店頭など | 未塗装の木製棚にポリ袋から出した白色衣料品を直接積み置きしない。 |
項目 | 対策内容 |
---|---|
フィルムの選定 | 可能であれば、BHTを含まない包装資材を選ぶ。 |
フィルムのガスバリア性 | ガスバリア性の高いフィルムなどを採用することが望ましい。しかし、事前に包装資材のガスバリア性を試験し把握することは、現実にはコストもありフィルムについては難しい。 |
包装仕様 | 包装資材のBHTが酸化窒素ガスと触れないように、商品は個別にポリ袋に入れて、袋口を粘着剤で密閉できるタイプとする。 |
保管環境 | 保管や在庫では、酸化窒素ガス濃度が高い環境での製品保管を避ける。もちろん長期間の保管や在庫も避ける。 |
生地の水素 イオン濃度pH | 染色加工で、生地の水素イオン濃度 pHが酸性になるように管理する。例えば、 pH 5.0±0.5など |
コラム : アパレル散歩道56
~品質事故を分析して原因と対策を考えよう~
テーマ : ケーススタディ ⑫機能性の低下
※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウェアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。
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