思いつきラボ

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No. 143 「太陽光だけで海水を真水にする 装置は救世主 …」

2019/08/30

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2019年8月30日時点の内容です。

8月28日に「大雨特別警報」が長崎県・佐賀県・福岡県に同時に発表されました。大雨特別警報は警戒レベル 5 の“命を守る行動を!!”というアナウンスで、避難指示対象者が 88万人を超える数字になりました。2019年 5月に運用が開始されてから 7月20日に長崎県 五島地区と対馬地区に出て、今回が新しい運用になって早くも 2回目となりました。
50年に一度くらいや今までに経験のない大雨が連続して起きています。こうなればここ数年が50年に一度の異常気象の年と考えたほうが受け入れやすい状況になっていす。
“50年に一度”が毎月のように起こっていることに違和感を感じてしまいますが、それほど深刻なことなのです。

もうひとつ触れておきたい気象現象が起きているのですが、8月16日の出来事で、秋田県にかほ市で午前 6時18分に 36.5℃を記録したということで、しかもこの日の最高温度だったということです。最高気温が朝の6時台とは考えにくいです。この日に新潟県胎内(たいない)市でも午前 4時56分に 34.9℃を記録しています。まだ日の出前の時間にです。前日の 15日には新潟県糸魚川(いといがわ)市で1日の最低気温が 31.3℃と筆者が知っている日本の気象と違ってきているようで・・・心配です。

原因は「フェーン現象」で、山から乾燥した高温の風が吹きおりる現象で温度が上がるのですが、どういうことかと言いますと、100m高低差があると温度差も 0.6℃ほどあると考えられています。山の上から斜面に沿って降りてくる風は 100m下がるごとに 0.6℃温度上昇します。

仮に 2000mの標高の山から空気が地表に降りてくると
0.6℃ × 20 = 12℃  ということになります。
頂上の温度が 24.0℃くらいあれば地表では、
24.0℃ + 12.0℃ = 36.0℃  に計算上なるということです。

夜中に頂上で 20℃を超すことも考えにくいですが、いままで経験したことのない気象現象が起きているということです。フェーン現象が起こりやすい北陸や東北では、今後も注意が必要になります。

地球にやさしい優れもの

異常気象の書き出しでなかなかテーマに入れませんが、今回の思いつきラボは地球にとって、とてもありがたい開発品の紹介になります。
タイトル通り海水を真水にする装置なのですが、海水淡水化装置は決して珍しくなく進化もしているのですが、今回紹介するのは太陽光だけがエネルギー源の装置というところにスゴさがあります。太陽光発電装置も使わず太陽光を あてるだけで海水淡水化ができるという優れものなのです。
開発したのはオーストラリアのモナシュ大学(Monash University)のシーワン・チャン(Xiwang Zhang)教授の研究チームです。日本国内ではきれいな水を普通に使用できていますが、世界ではきれいな状態の水を入手できずに泥水でも命を繋ぐために飲んでいる地域があるのです。

今回開発された海水淡水化装置は「水を引き寄せる性質をもつ超親水性の濾紙(ろし)をカーボンナノチューブでコーティングしてディスク状にしたもの」という説明で、「蒸発脱水ディスク」という名称で紹介されています。この「蒸発脱水ディスク」に海水を含ませて太陽光を照射するとカーボンナノチューブが吸収した太陽光の熱エネルギーを受けて蒸発する仕組みで、蒸発した水は蒸発脱水ディスクにとどまり真水となり、塩分は結晶となってディスクの外縁部から排出されるというものと解説されています。その生成の様子は“You Tube”で動画で見ることができました。

動画

引用: YouTube

この海水淡水化装置は海水からほぼ 100%の塩分を除去することが可能で、さらに製塩にも利用できるとの発表になっています。水も塩も人間には不可欠なものなのですが、かといって海水を飲料水にはできません。稼働試験も実証済みで「蒸発脱水ディスク」1㎡あたり1日に 6リットルから 8リットルの真水の生成が可能とも報告があります。なんといってもこの装置を動かす稼働エネルギーは太陽光だけでいいということです。海辺の近くに装置設備を用意すれば真水の供給が可能で飲料水の確保にできるということです。

さらに今回は海水淡水化装置として紹介されていますが、下水汚泥の浄化や処理が困難な液体廃棄物の固体化などに応用できるとあり、そうなれば個体物から有用な資源回収などにも利用が可能という期待も寄せられます。
とにかくスゴい開発です。筆者としても現物を見てみたいと思っております。

濾紙の素材…

この装置に超親水性の濾紙が使われていると説明がありましたので、濾過膜(ろかまく)に触れておきたいと思います。今は濾紙の文字も“ろ紙”と表示することが一般的なのですが、濾す(こす)という漢字が常用漢字として使わないので平仮名で表示します。
ろ紙の素材は字からみても判断できる通り、もとは紙で作られていたのですが、現在では化学繊維の不織布が使われています。もちろん除去する粒子の大きさによって進化してきたのですが、海水から脱塩するには 1㎚(ナノメートル)以下の膜が必要なのです。膜の孔(あな)の大きさで区分されています

この逆浸透膜の技術の進歩で海水淡水化装置が開発されて精度もあがってきているのですが、日本の不織布の技術も世界トップレベルで、逆浸透膜に関しても日本の技術がかなりの貢献を果たしているのです。この技術がさらに進展して価格面を含めて普及することができれば、世界の環境問題の対応策として利用されることになります。筆者としては地球環境の救世主となりうると期待したいです。楽しみなニュースです。

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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp

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