2014/03/30
No. 13 「Gパン から ジーンズ そして デニムへと…」
思いつきラボ
2019/01/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2019年1月15日時点の内容です。
2019年になりました。
また新しい年を迎えることができたのですが、“平成”は 4月30日までとなり 5月 1日からは新しい元号となります。“平成”という時代の区切りを迎えるということで、いつもの年とはなにか違う感覚があります。元号がかわるという出来事に立ちあえるのも貴重なことに思われます。今年は新年が 2回あるような感じになってます。思いつきラボも6回目の正月を迎えました。本年もよろしくお願いいたします。
正月早々の出来事ですが、交差点で信号待ちをしていると、不意に空から自転車が落ちてきて胆(きも)を冷やしました。空から実際に降ってくることはないですが、廃品回収のトラックか引越で荷物を積んでいたトラックからか分かりませんが、荷物を固定する紐が切れたか外れたかで、自転車が飛び出してきたのです。冷静になってみると筆者は被害に合う位置には立っていなかったので問題はなかったのですが、正月のいろはガルタの“犬も歩けばなんとやら・・・”で一歩外に出れば何が起こるか分からない、という体験をした新年のスタートとなりました。
筆者は普段あまりテレビを見ていないのですが、正月は家に居る時間が長いので、テレビをつけっぱなしにしていると思わぬ番組に目を惹かれることがあります。
旅番組のような内容でしたが、滋賀県長浜の紹介で和楽器の絃(げん)を作っている様子が映しだされていました。三味線や琴の絃が絹糸からできていることは知っていましたが、その生産の工程は全く知らず興味深く見ることができました。とくに“独楽撚り(こまより)”と呼ばれる工程は柄の長い独楽に絹糸の先端を結んで、その長い柄を職人さんが手で回して撚りを掛ける作業で均一な品質にするには、かなりの熟練が必要なんだろうなと思いながら見入ってしまいました。
また、三味線の絃は黄色のものが多いのですが、その染め工程も紹介されていて“ウコン”で染められていることを知りました。調べてみる、昔の繭は黄色味がかったものを使用していたようで、その名残で三味線にする糸は黄色く染めているとのことでした。
白い三味線の絃もありますので、全てを染めているわけではなさそうですが、三味線も種類や流派によって使い分けられているのかもしれません。ちなみに琴の絃も絹糸ですがこちらは白色が主流だそうです。かなり詳しい紹介が成されていたのですが、いずれにせよこの里で伝統的な工法で和楽器の絃が作られていることが素晴らしいことです。もちろんナイロンやポリエステルの糸もありますが、化学繊維が世に出回るまでは天然の素材でつくられていたのですから、和楽器の本来の音色(ねいろ)は絹糸が奏でる音ということになります。
日本だけでなく、西洋の楽器でも化合繊や金属繊維ができるまでは天然素材を使っていたはずなので調べてみると、歴史的にギターの原型となった楽器は古代の壁画や彫刻から紀元前 3700前には存在していたといわれていて、化学繊維はもちろん金属繊維もない時代でした。ツル植物のツルを張っていたものと考えられています。
ちょっと話は逸れますが、楽器の先祖は“弓”と言われていて、狩猟の道具として弓を使い初めて、矢を放つ時に響く音から発展したと考えられているそうです。弓の長さやツルの太さで音色は違ってくるので、興味を持った人間が遊び始めたのだと思います。
また話は逸れますが、音階を考えたのは古代ギリシャの数学者 ピタゴラス・・・あのピタゴラスの定理を発見した数学者です。ということで数学の本にはよくでてくるのですが 、1本の絃の1/2を押さえると1オクターブ高い音になることに気付き、また 2/3 の位置を押さえると 5度高い音になることと重ねて、音を出しても心地よい組み合わせであることを発見したのです。最初の音を“ド”とすると 5度高い音は“ソ”になります。こうして 5度づつ上げてピアノ音階の基になる「ドレミファソラシド」の原型は紀元前 500年に発見されていたのです。
ということで西洋楽器のギターの先祖の弦の話に戻りますが 、植物のツルから麻が用いられた記述もあるようですが、16世紀には今のギターに近いものに発展してきました。この頃にはギター弦には“ガット”と呼ばれる羊の腸を削って作られた弦が使われていたようで、クラシックギターで“ガット・ギター”としていまでも名前は残っています。
ちなみにテニスラケットのガットもこの羊の腸からつくられています。いまでも「ナチュラル・ガット」の名称で販売されているそうです。西洋では絹糸がポピュラーではなかったので、動物由来の弦は羊の腸が主流となったということです。
今年最初の思いつきラボは「こんなところにも絹糸が・・・」という感じで原稿にしてみました。
テレビもいい番組があります。話があちこちと飛んで・・・いつものことですが・・・まとまりのわるいものになりました。
これも思いつきですが和楽器を調べていると「絃」で、西洋楽器では「弦」という漢字が使われていたので、今回の原稿では使い分けしてみました。
いろはガルタという言葉もでてきましたが、ここ数年は子ども達が正月に遊びに来てもカルタをやっている光景を見ることもなくなりました。正月ならでは・・・といった遊びも変わってしまいました。和楽器の絃作りのように時代に流されずに伝統を守ることはだいじなことです。いろはガルタも忘れてしまいそうなのでおさらいしておきます。
“犬も歩けば~猫も歩く”・・・(それじゃことわざにならないでしょ!!)
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