2020/03/15
No. 156 「東日本大震災から9年の月日が経過しました…」
思いつきラボ
2018/10/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2018年10月15日時点の内容です。
思いつきラボを掲載しているといろいろな質問やご意見をいただくのですが、たまに予期していない問合せがくることがあります。テーマに書いている通りの質問なのですが、長いこと「蓄光」に関わっていますが、いまさらながらドキッとしてしまいました。
質問者によると
「蓄電」は電気を蓄えることで「蓄熱」は熱を蓄えるという意味ですが、「蓄光」は光を蓄えるだけではなく発光するという意味もあるのですか?
という内容のものでした・・・正直なところちゃんと考えたことがありません。
確かに通常会話では光るという意味を含めて使っています。では、蓄電ということばに放電の意味を含めることはありませんし、蓄熱を発熱するという意味で使用することもありませんので、質問者が疑問に思われたのも当然のことかもしれません。
「夜光と蓄光の違い」とか「蛍光と蓄光の違い」などの質問を受けることは多いですが、「蓄光」という単語にこのような疑問を抱(いだ)かれたことに感心してしまいます。
一度気になってしまうとずっと気になってしょうがないのは筆者もおなじなので、整理しておきたいと思います。
では辞書を調べれば・・・と本来はそのような手順になるのですが、当方の手元にある広辞苑6版には「蓄光」の記載はありません。今年の 2018年(平成30年)1月に発行された 7版は確認できていませんが、ほとんどの辞書には掲載がありません。JIS C 5600 電子技術基本用語の中にも「蓄光」についての説明はありません。
ということは「蓄光」を定義している公共性の高いものはないということになります。いつの間にか光を蓄えて光を放つもの総じて「蓄光」と呼ぶようになって現状に至ったと考えられます。物理用語では「りん光(燐光)」という言葉を使いますが、こちらは“物質が光を発する現象、またはその発する光のこと”という説明になっていますので、光を蓄えるという意味は含まれていません。
もともと「蓄光」という言葉が使われはじめたのは、蓄光式夜光塗料という文言で 1934年頃(昭和 9年頃)の夜光塗料の説明書の中で使われたものが文字として残っています。当時は夜光塗料に放射性物質ラジウム(Ra)を加えることで継続発光させていたラジウム式夜光塗料があり、その対比語として蓄光式夜光塗料という言葉ができたと考えられています。光を蓄えるタイプの夜光塗料ですよ、という意味合いで使われています。
その後ラジウムに代わって放射性物質プロメチウム(Pm)が使われたりもしたのですが、放射性物質の使用を止(や)めたあとは蓄光式夜光塗料だけになってしまい、いつしか簡略化していき「蓄光」だけで蓄光式夜光塗料を意味する単語になったのではと推測できます。
もちろん筆者の私見ではありますが、たしかに「蓄光」という漢字からは光を蓄えるとしか読み取れませんので、本来は光を発するという意味は持たないでしょうが、簡略化したものが慣例化して発光までを意味する言葉になったような気がします。
今回の質問は思いも掛けないものでしたが、答えとしては「蓄光」という言葉には光を蓄えて光を発するという意味を持って使われています。という回答にしておきます。
蓄熱発光や蓄圧発光という表現もありますので、蓄光発光というほうが正しいのでしょうが、簡略化されたもののほうが通例になっているということです。似たようなものに「静電気」という言葉がありますが、本来は帯電した動かない電気のことですが、普段の会話では放電する現象も含めて使われています。
とても面白い質問でした。このような疑問・質問がありましたらまた是非お問合せください。一緒に考えたいと思います。広辞苑の 7版には「蓄光」という単語は掲載されているのでしょうか・・・また余計なことが気になってしまいました。
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