2018/03/15
No. 108 「ストロンチウム(Sr)は放射性物質ですか?…」
思いつきラボ
2018/01/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2018年1月15日時点の内容です。
2018年 最初の思いつきラボとなりますが、なんと5回目のお正月を迎えたことになります。この間に興味を持ったことで簡易的な実験をしたり、体験作業をすることもたびたび取り組んできました。筆者にとってはありがたいことなので大歓迎なのですが、今回もまた面白い自由研究となりました。
ふとしたことから「手袋ってミトンの方が暖かいと思いませんか・・・?」と問われたものの、筆者は作業するときの軍手や水を使う作業用のゴム手袋くらいしか使うことはないので・・・ましてミトンには縁がありません。とはいうものの面白そうなので実験してみようということになりました。同一素材の手袋が見つかったので自由研究の報告となります。
あけましておめでとうございます。
寒い日が続くと、外出が辛くなりますよね。皆さんはどのような寒さ対策をされていますか?
厚手のニットを着たり、吸湿発熱機能のあるインナーを着たり、靴下を重ね履きしたり・・・様々な工夫をされていると思います。
着衣の暖かさを左右する要因として、①生地の熱抵抗②衣服間に含まれる空気の量③衣服の 被覆面積、被覆部位、等が挙げられます。
まず①生地の熱抵抗ですが、生地の素材(組成)、織り方や編み方の組織が影響します。
その中でも特に、布地が含んでいる空気の量が大きく関係します。空気は水や繊維などに比べて熱伝導率が低いため、空気を多く含む生地ほど保温性が高い傾向があります。例えば、同じ組成の薄手の布地と厚手の布地では、厚手の方が暖かいと思います。これは組織間に空気を 保持しているためです。
☆ちなみにニッセンケンでは生地の保温性の測定も承っております!
次に②衣服間に含まれる空気の量です。(空気が保温性に影響を与える点については、前述したとおりです。)
生地と違い、衣服の場合は人体との間に空気層ができます。この 空気層が静止した状態であれば、熱の放散を抑制します。逆に、衿ぐりや袖口などの開口部が開いていると対流(暖まった空気の 上昇)により外気との循環が発生し保温性が低下します。
暖かさを保つためには、開口部を閉じることで空気を静止した状態にすることがポイントです。また、ゆとりの大きい衣服を着用したり、重ね着をすることでも静止空気層が増え、保温性が向上します。
最後に③衣服の被覆面積、被覆部位です。衣服によって覆われる体表面積を被覆面積といいます。被覆面積の増大と熱抵抗の間にはほぼ比例関係が認められているため、被覆面積が増えるほど保温性が上昇します。
また、身体の細い部位ほど熱伝達性が大きく、その部位の放熱調節力が大きいことがわかっています。(例えば、体幹部分のみを衣服で覆った場合と腕や足のみを衣服で覆った場合では、後者の方が暖かいそうです!)
さて、前置きが長くなりましたが、今回は私が以前から気になっていた『手袋は五本指とミトンどちらが暖かいのか?』ということについて、上記の②衣服間に含まれる空気の量 ③衣服の被覆面積、被覆部位に着目して考察したいと思います。
まず、五本指手袋とミトンの静止空気層の量について考えてみましょう。
ミトンは掌全体を覆うゆったりした形状をしており、ほぼ指に密着するような形状をしている五本指手袋と比較して静止空気層の量は多いのではないかと考えられます。
次に、五本指手袋とミトンの被覆面積について考えてみましょう。
被覆面積=衣服によって覆われる体表面積 ですので、五本指手袋とミトンでは被覆面積に差はないことになります。
しかし、五本指手袋とミトンの表面積は、五本指手袋の方が大きいです。
表面積が大きいほど熱放出量が大きくなりそうですが・・・?
そこで実際に 空気層のミトンvs被覆面積の五本指 ~暖かさ対決~ について検証してみました!
※今回は①生地の熱抵抗 による誤差をなくすため、同素材を使用した型違いの製品を用意しました。
<被験者>
女性 3名
<検証方法>
手袋をはめ、コート未着用で10分間 約10℃の 屋外に待機した際の温度変化を、温度センサーにて測定。(温度センサーは左手中指の先端に貼付)
温度差に関しては、手袋の形による顕著な差は見られませんでした。
しかし、3名とも体感的にはミトンの方が暖かいという結果となりました。
また、サーモグラフィーで検証直後の掌全体の温度画像を撮った際も、温かい部位の面積が 多かったです。(若干ですが・・・)
<課題>
・検証の際、中指の先端(最も外側にある)にセンサーを貼付したため、ミトンも 五本指も温度に差がでなかったのではないか?
・手袋の形による保温性に有意差はみられないが、体感温度には差があった。体感温度を数値化することはできないか?
とても中途半端な結果となってしまいましたが、新たな課題がみつかりました。
また次の機会(あるのでしょうか?)に解決したいと思います!
ということで数字的には顕著な結果になってませんが、単に被験者のn数が少なかっただけだと思います。体感的にはみんなミトンの方が暖かいという感想になっているので、この自由研究は次の冬にも継続としたいと思っております。今回の報告も楽しいものになりました。
原稿担当:蔵前ラボ 中西 つばさ
自由研究協力者:蔵前ラボ 石塚 佑衣 立石ラボ 関本 有莉
Special Thanks to 蔵前ラボ 堀切 和行
監修:竹中 直(チョク)
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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp
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