2014/02/15
No. 10 「作業服が車両事故から身を守る保護衣 に・・・…」
思いつきラボ
2015/10/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2015年10月30日時点の内容です。
2015年10月26日に正式に“JIS T 8127 高視認性安全服”の規格が発行されました。思いつきラボでもたびたび取り上げている規格ですが、制定されたことであらためて今回のテーマといたします。
まずJIS T の分類になっていて、普段から馴染んでいるJIS L 繊維の分類ではないことに気をつけていただきたいのですが、JIS規格はJISの後につづくアルファベットで業種の分類がなされています。
JIS Aの土木及び建築から始まって、B の一般機械、C の電子機器及び電気機械・・と業種ごとに区分がされていて、このJIS Tは医療安全用具という分類になります。
医療の機械類の安全性を図る規格が中心になりますが、その作業に携わる人たちの衣服についても規格が作られています。具体的にいえば、熱や炎から身を守る衣服や鳥インフルエンザ消毒作業者用や放射性物質除染作業者などの化学物質防護を目的にする作業着などが対象になります。
今回の高視認性安全服も身を守る保護衣扱いとなりますので、JIS L 繊維ではなく、JIS T 医療安全用具になったと理解してください。
JIS L は一般衣料ですので洗濯性や耐久性などを考慮して造られますが、JIS T は安全性が優先しますので、耐久性や配色のことなどはあまり考慮されていません。JIS Lの感覚でいるとちょっと違和感を覚えるかもしれません。
この規格の特徴ですが基本的な部分は ISO 20471 高視認性衣服と同じで
デザイン
使用面積によってクラス分けがあり デザイン性にもル-ルが設けられています
蛍光生地
蛍光生地を使用する必要があり、色は蛍光レッド・蛍光オレンジレッド・蛍光イエローの3色に規定されています
再帰性反射材
再帰性反射材を使用する必要があり、耐久性試験前と耐久性試験後ともに適合が条件となります
となっています。
要は再帰性反射材と蛍光生地は必ず使いなさいという規格で、その素材の面積が多い方が安全性は高まりますよ、ということなのです。それぞれについてもう少し説明しておきます。
デザインでは、どこからの角度でも視認できるように蛍光生地・再帰性反射材とも胴部を一周していなければならないことや、反射材は 巾 50mm以上のものを使用することや、平行に2本の反射材を取り付ける場合は、その間が 50mm以上の間隔をあける必要がある、というような細部の規定も設けられています。
クラス分けは 3つに分類されていて、クラス 3が一番面積が多く、クラス 2・ クラス 1 と使用面積は少なくなっています。ベストタイプはもともとの生地使用量が少ないので、クラス 1に分類されるものが多くなります。面積計算は平置きメジャー測定では測定差が大きすぎるので、CAD による計算を実施します。
蛍光生地の色は、蛍光レッド・蛍光オレンジレッド・蛍光レッドと 3色に限定されているのですが、蛍光グリーンや蛍光ピンクもよく目立つのに、なぜ高視認に含まれないのかという質問を受けることがありますが、高視認性以前に色の国際基準として、赤は禁止・黄は注意・緑は安全・青は案内という意味合いになっているので、高視認性安全服という性質上“警告色”である赤色とオレンジ色と黄色のみが高視認性安全服では使用可能という規定になっています。
試験方法はISO 20471では 45/0°方式のみでしたが、 JIS T 8127ではJIS規格に定められている条件を満たせば積分球方式でもよいことになりました。
再帰性反射材は ISO 20471 と同じで、CIE(国際照明委員会)によって定められている規定 CIE 54.2 にそって測定を行います。光源と試料台が 15m以上離れている暗室内で入射角と観測角を設定して反射係数を測ります。先ほど説明した蛍光生地の測色試験も CIE 15による検査方法で、CIEの規格で試験方法が定められているのも繊維関連の試験ではあまりないことなのです。
ニッセンケンではもともと防災・安全評価グループで安全素材である再帰性反射材や蛍光素材や蓄光素材などの測定を行っているので、これらの設備が備わっているのです。誘導標識や交通標識と同様に、高視認性安全服も遠くからの視認性や暗所での見え方を考慮したものになっているのです。
この他にも、安全服とはいえ衣料品なので、堅牢度試験や物性試験についての基準もあります。ISO 20471 高視認性衣服に規定されている試験方法と基準値はそのまま JIS T 8127 高視認性安全服にも取り入れられていますが、国内事情に合わせた形で加えられた試験もいくつかあります。蛍光測色の積分球方式もそうですが、耐光試験も ISOはキセノン耐光のみでしたが、JISではカーボンアーク耐光も有効になっています。国際標準に合わせたものですが、国内標準にも考慮した規格になっています。
JIS T 8127 高視認性安全服の規格は作業従事者の身の安全を守るためのもので、従来は運転サイドの人が注意を払いなさいよという考え方だったのが、作業者の事故が減らないことで作業者も自ら身を守るようにしなさいということなのです。
この規格ができたことで、作業服にとどまらず、学童の通学服や高齢者の外出着 夜のジョギングウェアなどにも取り入れられる検討も始まっています。JIS規格ができたことで、今後は高視認性安全服の普及にも協力していきたいと考えております。
原稿の冒頭で JIS の分類に触れたので 業種分類を掲載しておきます。
こうやって書き出してみると一覧で見る機会はあまりないような気がします。参考にしてください。
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東京事業所 立石ラボ 防災・安全評価グループ
Tel. 03-5875-6055 Mail. bosai_anzen@nissenken.or.jp
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
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