2016/05/15
No. 64 「吹流しの鯉のぼりは手描き染か捺染プリントです…」
思いつきラボ
2015/10/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2015年10月15日時点の内容です。
「10月1日は衣替えの日です」というニュースがテレビから流れて、なぜか“衣替え”という言葉が新鮮に感じてしまいました。普段から使っている言葉のはずですが、ここ数年“クールビズ・ウォームビズ”という言葉に置き換わり、報道ではあまり聞かなくなっていたような気がします。筆者だけの話かも知れませんが・・・ともあれ10月1日は衣替えの日なのです。
学校や役所の制服を変更することなのですが、そもそも制服を取り入れているところが減っていますのであまり実感のある行事ではなくなっているのかもしれませんが、それでも電車に乗ると学生が一斉に冬物に替わった光景を目にすることがあり、季節感を感じるにはいい慣わしだと思います。
本来は 6月1日から夏服に10月1日からは冬服に切り替えることを衣替えと呼んでいるのですが、現在では空調環境も整ったことや2011年の東日本大震災以降電力不足になったこともあり、クール ビズ期間がここ数年 5月1日~ 9月30日までとなっているため、6月に衣替えという言葉が使われにくくなってしまいました。といいながらも、10月1日の切り替えは同じなのでこの時期には“衣替え”というアナウンスがされたのだと思います。
このまま続けば 5月1日と10月1日を衣替えの日と呼ぶようになるのかもしれません。
衣替えをするということは、冬物を引っ張り出し夏物を収納するという作業になります。誰もが経験することですが、ちゃんと仕舞っていたはずなのに虫食い・黄ばみ・カビなどの発生が起こってしまいます。原因はといいますと「ちゃんと仕舞ったはず」が「ちゃんと仕舞っていなかった」ということが多いのです。
ということで今回、夏物を収納するときの注意点ということをテーマにしたいと思います。お気に入りの服を大事にするということは大切なことなので、基本的なことだけでも覚えておきましょう。
まずちゃんと仕舞うには“ちゃんと汚れを落とす”ことからはじめます。
汚れを落とすのは家庭で水洗い洗濯かドライクリーニングに出すか、ということになるのですが、水洗いは水性系の汚れが落ち、ドライは油性系の汚れを落とすということで使い分けられています。夏は暑いので汗ジミが付きやすいですが、汗ジミは水性なので水洗いでは落ちますが、ドライクリーニングでは落としにくい汚れになります。ドライクリーニングに出せば水汚れも油汚れもキレイになるというのは勘違いなのです。もちろんクリーニング屋さんが持ち込まれた洗濯物を判断して水洗いをしてくれていることもありますが、ドライだけをして戻ってくると時間の経過で見えなかった汗ジミが黄ばんでくることがあります。
衣替えで取り出して黄ばみがある場合は、水系の汚れが落としきれてなかったのが原因で発生することが多いのです。保管による原因もありますが、黄ばみに関しては汚れ落としが不十分ということが主な原因になります。
つぎに片付けるときは“ちゃんと乾かしてから仕舞う”ということも必要なことになります。家庭洗濯で生乾きの洗濯物は嫌な臭いが残っているのを経験したことがあると思いますが、ちゃんと乾燥していないと 雑菌が繁殖して異臭の原因になることがありますし、またカビ菌も湿気を好みますのでカビ発生の原因になることがあります。
ドライクリーニングも戻って来たときには充分乾燥していると思ってしまいますが、最後の仕上げで蒸気プレスを掛けてから汚れよけのフィルムカバーをつけ密封した形で受け取りますが、乾燥が不十分だとフィルムの中は湿気が残った状態になっています。これも異臭やカビ発生の原因となりますので、クリーニング屋さんから戻った商品も袋からだして充分乾燥させてから収納するというのが大事なことになります。仕上がりがきちんとしているので袋から取り出したくない気持ちになりますが、乾燥させることを優先してください。
ちゃんと汚れを落としてちゃんと乾燥させてから収納する、ということは当たり前のことなのですが、これがなかなかできていないというのが実状なのです。これができればあとは防虫対策をして収納すれば保管中のトラブルはほぼなくなると思っていますが、最近の“衣料害虫”とよばれる繊維を食べる虫も手ごわくなっているので虫除け対策も大事な作業になります。
手ごわいといったのは合成繊維が出始めたころは、再生繊維や半合成繊維のようにセルロースなどの天然繊維も原料としている化学繊維はともかくとして、ポリエステルやナイロンなどの石油や石炭から造られる合成繊維は虫食いがないと考えられていたものが、合繊の虫食いのトラブルも多く発生しているのです。
遺伝子存続本能の進化で合繊を食べる虫ができてきたのか判りませんが、合繊でも食べ残しのシミや加工剤の油分が残っているものは衣料害虫が食べることは確認されていますので、綿や毛はもちろんですが合繊ものの製品も虫除け対策が必要となります。
防虫剤は空気より重いので、製品より上に置くのが基本となります。さらに空気の動きがないと防虫剤が隅々(すみずみ)まで行き渡りませんので、ハンガー収納するときはあまりぎゅーぎゅー詰めにすると効果が出にくいことになりますので注意が必要です。
防虫対策だけを考えれば密閉式の収納箱で保管するのがよい方法になりますが、シワの発生や製品の型くずれの原因にもなりますので、シルエットが大事な服は吊るしハンガー保管ということになります。
いずれにせよ、汚れ落とし・乾燥・防虫対策をしっかりしておけば、衣替えで保管中の商品もトラブルなく守れるということになります。今回の思いつきラボはよくある「生活の知恵 ワンポイントアドバイス」みたいになってしまいましたが、繊維業界やアパレル業界に所属している方たちには必要な情報なので、知識として持ち合わせておきましょう。
と言いながら、筆者もいまだに保管中の黄ばみ虫食いは出してしまっています・・・反省!!
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