思いつきラボ

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No. 35 「ではウールセーターはなぜ縮むのでしょうか?…」

2015/02/28

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2015年2月28日時点の内容です。

前号(No.34)では綿の縮みをテーマにして掲載させていただいたのですが、すぐさま 「では ウールはどうして縮むのか?」 という問合せをいただきました。
また厄介な質問ですが、綿の縮みとウールの縮みの違いも比較することができますので、今回のテーマとします。
ウールセーターも油断して家の洗濯機に放り込んでしまうと、驚くくらい縮んでしまうことがあります。経験者も多いのではと思いますが、ウールセーターの縮みはもとに戻せることはまずありません。

ウールの縮み 水洗いの回数分だけ・・・

綿の繊維は濡れただけでは縮むことはないと前号で述べましたが、ウールも濡れただけではほとんど縮みません。ですが、綿との違いは水に濡れると縮む準備ができてしまうのです。ウールはスケールというウロコ状のものが繊維自身を覆っています。スケールは乾燥時には閉じた状態にありますが、水に濡れるとこのスケールが開いてくるのです。開くとその隙間に水を含んでいきます。ウールは撥水性能をもっているのですが、公定水分率は15%というように、綿よりも吸水性が高いのです。これが乾燥時にはスケールが閉じているので水をはじき、濡れてくると徐々スケールが開き水を含んでいくという仕組みになっています。ウールは撥水性が高くて吸水性も高いといわれる素材というのはこのことを指しています。

スケールが開いている状態で洗濯機のように掻き混ぜられると、このスケール同士が絡み合って解(ほど)けなくなってしまいます。面ファスナーをイメージしてもらえば分かりやすいかもしれません。スケールが絡み合うことで製品がもとのサイズには戻れなくなり、結果縮んだ状態になってしまいます。綿は何度か洗うと綿の繊維が素(もと)の状態に戻るのでそれ以上は縮まなくなりますが、ウールはその都度閉じてたスケールが開きまたスケール同士で絡まってしまい、更に縮むということになります。縮みの度合いは小さくなってはいきますが、ウールの場合は洗えば洗うだけ縮んでしまいます。

綿とは縮む原因が違うことがお分かりいただけたと思いますが、では洗濯機で洗えるウールを謳(うた)い文句にしている “ウオッシャブル・ ウール” はどういう仕組みになっているかと言いますと、このスケールが水に濡れても開かない加工を施しているのです。要は、ウールの糸を乾燥時の状態でコーティングしてしまうという手法かスケールの先を切除する方法をとっています。

ついでに、ウール製品を家で洗いたい場合は、最初に書いたようにウールも水に濡れただけではほとんど縮むことはありませんので、そっと漬け置き洗いをして軽く絞って平干しすれば、縮ませることなく綺麗にすることができます。軽く絞るというのが力加減が判りにくいかもしれませんが、不安であればバスタオルの上に広げて水を吸わせるのもいいかもしれません。バスタオルという新たな洗濯物を作ってしまいますが家でも簡単に洗えます。

綿はあるところまで縮むとそれ以上縮まなくなりますが、ウールの場合は洗えば洗うほど縮んでいきます。ただ重量はほとんど変化しませんので、生地が厚くなっているということになります。自分のサイズより2周りくらい大きいサイズを買って、家で洗濯機で洗いサイズを小さくして生地厚の防寒セーターにアレンジするのも実用的なことかもしれません。サイズが大き過ぎて持て余しているウールセーターがありましたら、是非お試しください。

毛の紡績工程

前回は綿の紡績工程を紹介しましたので、毛の紡績工程も掲載しておきたいと思います。
今回も会社によっては呼称や製造工程もことなるかもしれませんが、筆者が在籍していた工場の工程となります。筆者は社会人の1年目のスタートは梳毛糸(そもうし)を紡績している工場で1年間実習生として過ごさせてもらい、知識を身につけていったのです。1年間の実習、その後営業で2年間の研修生で4年目に本配属という、教育には時間を掛けてもらったのです。いまではそこまで余裕のある会社は少ないと思いますが、40年前の紡績会社では珍しいことではありませんでした。
話が逸れそうなので工程紹介に入ります。

1 選別(せんべつ)
羊の毛を振り分ける工程です。羊の毛は部位によって太さや長さも違っています。さらにその年の気象環境でエサとなる草の成長や栄養価も変わってくるので、羊の毛の出来映えも毎年同じ品質のものができるわけではありません。繊維業界も機械化が進んではいますが、この選別工程は熟練者の目に頼るしかないのです。国内ではこの工程があまり見られなくなり、海外での作業となっています。

2 洗(せん)毛(もう)
選別で分けられた毛をグループごとに洗っていく工程です。羊の毛は脂を多く含んでいるので、かなり丹念な作業工程になります。ここで回収された脂は整髪料のグリースなどの原料となります。リーゼント派の方達は羊たちに感謝です。

3 カード工程
綿の梳綿(りゅうめん)工程にでてきたカーディングマシンを通して、篠(しの)と呼ばれるロープ状の束にしていきます。羊の毛の方向を揃えていく工程になります。

4 コーマ工程
カード工程を通ってできたロープ状の篠を“スライバー”と呼ぶのですが、このスライバーをまた何本かまとめてカーディングマシンを繰り返し通してから、さらに細かい櫛状の針を備えたコーミングマシーンでさらに細くて均一性のある“スライバー”を作り上げて巻き上げていきます。巻き上げたものを“ウールトップ”と呼び、この状態で染めたものをトップ染めと呼びます。

5 前紡(ぜんぼう)
ここで“紡ぐ”という漢字がでてきたので、この工程から撚りが掛けられるのですが、まだ本撚りの前段階ですので箸くらいの太さにまでするという工程です。

6 精紡(せいぼう)
精紡機と呼ばれる撚りを掛けながら、糸にしていく機械にかけられて“スピンドル”という精紡機についている巻取り装置で出来た糸を巻き取っていきます。これで“毛糸”という製品になりました。

7 糸蒸(いとむ)し
出来上がったウール単糸を蒸気で蒸しながら撚りをセットする工程で、このあと双糸にする場合は2本組み合わせながらさらに撚りをかけていきます。

ウールの糸はこうして作られていくのですが、綿の繊維みたいな中空糸ではありませんので、引っ張りながら糸になっていく工程を通っても綿糸ほどの伸びはみられません。ウールの縮みは、スケールが開いた状態で揉まれて絡み合うことで縮んでしまうというのがウールの縮みかたということです。綿に続いてウールの縮みについての原稿となりました。

また質問や疑問がありましたらお問合せください。一緒に考えたいと思います。

PDF版はこちらから

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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp

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