2018/06/30
No. 115 「震度4以上の地震が増えています…」
思いつきラボ
2015/01/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2015年1月30日時点の内容です。
前号では蓄光商品について取り上げたのですが、話の流れで製品プリントの紹介をしたところ、もう少し詳しく説明してほしいという要望がありましたので、今回のテーマは製品プリントを取り上げたいと思います。
プリントには、生地の製造段階でプリント加工するものと生地を裁断したのち、もしくは製品に仕上げてからプリントを載せる方法とがあります。生地段階でプリントするものは製品になったときにランダムな柄になってもよいものか、又はパターンの型入れが決まっているものになります。
製品プリントは、プリントの位置が生地段階では決められないものやユニフォームなどチーム名や会社名を小ロットで入れたい場合などに適しています。例えばスポーツユニフォームの場合、胸位置にチーム名を、背中に背番号を入れたい時には、出来上がった製品に入れた方が位置ズレの心配も少なくてすみます。手間は掛かりますが、思い通りにマーキングが可能になります。
前号で掲載したプリントの種類は
染料プリント 白もしくは淡色生地に染料をもちいた捺染プリント
顔料プリント 濃色生地に生地色より淡い色を載せる捺染プリント
ラバープリント ゴム系樹脂をもちいた顔料プリントで伸縮生地に対応
フロッキー フロッキーシートを用いて圧着する起毛プリント
ラメプリント 細かい金属箔をちりばめたプリント
グリッター さらに細かい金属箔を顔料に混ぜ込んだプリント
発泡プリント 顔料に発泡剤を混ぜて加工し加熱して膨らますプリント
蓄光プリント バインダーに蓄光原料を加えた暗所で光るプリント
芳香プリント 香り付き微小ビーズを混ぜた匂いのするプリント
アクアプリント 撥水差を利用して濡れた時に柄がでるプリント
感温プリント 温度変化によって色が変わるプリント
でしたのでそれぞれについてもう少し詳しく説明しておきます。
染料捺染プリント
染料を用いたプリントですが、“染料と顔料”の違いを先に説明しておきます。染料の定義はJIS L 0207 繊維用語(染色加工部門)に記載されていて、染料は「水などの媒体に溶解又は分散し、繊維などに親和性があって吸着され、ほぼ満足できる堅ろう性をもつ色材(番号 7032)」とあり、顔料の定義は同じくJIS L 0207 には「水に不溶で、繊維に対して親和性のない有色性の微粒子。これを繊維に適用するにはバインダーといわれる接着剤が必要。(番号 7014)」とあります。定義付けしようとするとこのような言い回しになってしまいますが、要は水に溶けるものが染料で水に溶けないものが顔料と理解しておけばいいと思います。
白もしくは淡色生地に使用としているのは、濃色の生地に染料を浸み込ませても濃色に吸収されてしまうので、色を表現できないからなのです。白生地にプリントするときのもっとも一般的な手捺染の方法です。
いきなり話が逸れますが、“捺染”は正しくは“なっせん”と読みます。会話では“なせん”と読み“手捺染”を“てなせん”と読んでいますが、正しくは“てなっせん”となります。そんな細かいこと言わないでよ、といった感じになりますが、“てなせん”と読ませるときは“手な染”と書くことになります。通常の文章では“手捺染”ですが JIS の規格書の中には“手な染”と出てきます。あまり役に立たない雑学ですが、正しい情報も知っておきましょう。
顔料捺染プリント
濃色の生地には染料は使いにくいので、顔料を使用します。染料は生地の中に浸透していきますが、顔料は浸透せずに生地の上にのっている状態になります。したがって生地の色より淡い色でもプリントができるのです。ただ、バインダー(接着剤)を使っていますので、乾燥するとプリント部分は硬くなってしまいます。白生地に黒色のプリントを刷るときは染料でも顔料でも使えますが、黒生地にプリントするときは顔料しか使いません。
染料プリントか顔料プリントかを見分けるのは、生地の裏を見たときに色が透っているのが染料で透っていないのが顔料とするのが基本になりますが、最近は加工技術も向上していて簡単には見分けられないものも出回るようになっています。
ラバープリント
顔料を使いますが、ゴム系の樹脂に顔料を混ぜてつかいます。ゴム系なので伸度はかなり出すこともできます。普通の顔料プリントだと、ニットのような伸びる生地にプリントすると、生地が伸びたときにプリントがついていかずヒビが入るように割れてしまいます。
とくにスパンデックス使いの生地だと、伸びについてこれるプリントが要求されますが、それに対応ができるプリントとなります。ゴム系の樹脂を使いますので、触ったときの感触は少し粘着性を感じてしまいます。
プリントの手法は数多くありますので、1回の原稿でおわるとも思ってはいませんが、3つの紹介だけで原稿がこれほど長くなるとは思ってもいませんでした。
次回はサンプル画像も入れるようにして説明したいと思いますが、今回はここまでと致します。
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