2019/02/15
No. 130 「再帰性反射材の輝度と光度について…」
思いつきラボ
2013/10/18
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2013年10月18日時点の内容です。
快適性というのは季節・環境・用途などなど条件によって異なってくるものです。冬に快適なウールセーターであっても、夏の炎天下では心地よいものにはなりませんし、スーツにネクタイ着用でサッカーやバレーボールをすることもありません。(がまん大会や仮装行列は別ですが・・・)
しかし、快適素材を説明に使われる快適域は温度32℃±1℃、湿度50% ±10% という表記になっています。「快適域の数字はどこからきているのか?」・・・今回はそんなお話です。
快適性素材という考え方が確立しはじめたのが、30年ほど前の1982年頃からです。“衣服内気候”という衣服と肌の間の温度と湿度と気流を調べて快適を定義づけたもので、東洋紡の合繊ニットのスポーツ部隊が発表しました。最初の展示会の時は生地を飾らずに理論とデータだけの内容で、当時のテキスタイルメーカーの展示会としては型破りなものとなりました。社内からも批判の声も上がったのも事実ですが、企画部隊のプロデュースで注目を集めることができたのです。正直なところ幕を開けるまではけっこうひやひやものでしたが・・・。
筆者も当時この衣服内気候のプロジェクトの素材開発を担当しておりまして、充実した時間を過ごすことができました。研究所の理論は理解できるものの、その機能を備えた生地を作ることは簡単ではありませんでした。なにせ理論は三層構造で、こちらはダブルニットの機械を使うも基本的には二層の生地なので、つなぎにナイロンの分繊糸を使ったりインレイ技法を考えたり・・・もの造りの話に逸(そ)れると長くなるので、思い出話はこれくらいにして本題に戻します。
衣服内気候でいうところの快適域の数字“衣服内温度32 ±1℃衣服内湿度50±10% 衣服内気流25 ±15cm/sec ”はどこからきているのか、という今回のテーマについて説明します。
まず人間が裸でいるときに、暑くもなく寒くもなく不快感を抱(いだ)かない温度環境は28~32℃と考えられているのですが、衣服内の環境下では衣服と皮膚の間の温度が32±1℃、湿度50±10%、気流25±15cm/secの条件のときに、裸でいるときと同じ快適感が得られると考えられています。したがって、裸で居られる環境下ということを快適の定義としているのでこの数値になります。いまだに快適域の図表を見かけることはあるのですが、理論上の数字みたいなことは記載があるのですが、ちょっと気になっていたのでこのコラムに書かせてもらっておきます。
本来人間は、本能的に暑ければ袖をまくったりボタンを外したりして、寒ければ重ね着をするとか不快感を解消するように努めます。スポーツの場合、自然環境とは異なり運動量も多くなりますので、ウェアの方にその機能を持たせて快適の補佐の役割をさせようという考え方です。いかに汗を早く吸って早く放湿するかという機能が優先されることになります。
衣服内気候より以前から、生地の風合いによる肌触りや生地の伸縮性や製品のゆとり率による動きやすさの快適性についての研究もされていました。肌触りが悪ければ不快ですし、着用している衣服のサイズが合っていなければこれもストレスが溜まります。衣服内の気候が快適域の範囲に入っていたとしても、肌触りが悪ければ不快さを感じてしまいます。快適性の定義は環境や着用条件などいろいろな要因によって異なりますので、快適について考える場合は条件もはっきりさせる必要があるということになります。条件下によって快適要因も変わってくるということです。
最後に“衣服内気候”に関する裏話をひとつ紹介しておきます。
“衣服内気候”は東洋紡の商標として登録されています。当時学会で使われていた用語としては“被服内気候”という言葉でして、学術用語をそのまま使うのもどうかということになり、“衣服内気候”という言葉に置き換えて展開していこうということになりました。学会に敬意を表したことと耳なじみも良かったことで“衣服内気候”となったのですが、当時の幹部から「新しい言葉なら商標登録申請しておけ」と指示がでました。
さすがに新しい言葉ではあるものの、学会学術用語を一文字置き換えたくらいでは無理では・・・と思いながら申請したのですが、結果、商標登録可能という返事がかえってきました。幹部のクリーンヒットとなり、何事も先に決めつけないほうが良いということを学びました。
それにつけても衣服内気候30周年とのこと・・・こちらも年齢(とし)とったということです。
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
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