思いつきラボ

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No. 97 「地震予知の考え方が見直されることに …」

2017/09/30

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2017年9月30日時点の内容です。

9月は防災月間ということもあって、毎年この時期には新聞やテレビで災害に関するものが多く取り上げられるのですが、とにかく驚いたニュースは  “ 地震予知を前提とした防災対応を見直す ”というものです。

関係者以外ピンとこないかも知れませんが、40 年以上の間「地震予知を前提とした大規模地震対策特別措置法」に基づいて防災対応を考えていたのが、中央防災会議で「地震の確度の高い予測は困難で予知に基づく防災対応は改める必要がある」という報告書が提出されたというものなのです。

地震予知と地震予測の違い

この思いつきラボでも、2016年 9月15日号 No.72で 「“地震予知”と “地震予測” の違いが分かりますか?・・・」というタイトルで地震予知と予測について取り上げています。

おさらいの意味で違いを掲載しておきますと

地震予測
「地震の発生時間」「地震の発生場所」「地震の大きさ」を地震発生前に推定すること

地震予知
地震予測の中でも特に確度が高く警報につながるもの

となっています。

今までは地震予知は可能という考えだったのが、実は無理だったということをここへきて発表したということなのです。
「そりゃ~そうだろう」や「いままでも大きな地震を予知できてないだろう」というのが世間の反応のようで、あまりニュースでも取り上げられていません。

予知とか予報とか予測とか言葉の定義があやふやになっていたので、2012年に地震予知と地震予測の違いをあらためて定義したところなのです。
この時点でも予知は可能と考えていて、“東海地震”だけは予知の対象として発表されていました。「確度の高い」という表現が 数ヶ月以内で80%以上の確率であれば信頼性も高まりますが、30年で80%といわれても明日なのか30年後なのか、緊迫感のない説明になってしまいます。筆者も 40年前から防災関連にかかわってたわけではありませんが、20年ほど前から地震予知を前提で防災は語られていました。ということがあったので筆者にとっては「いまさらながら・・・」というほど衝撃のあるニュースになりました。

予知前提の情報を取りやめてどういう対応になるのかは 11月に新情報を発表するという 報道がありましたので注視しておきたいと思います。
今回提出された報告書案のポイントを掲載しておきますと

・地震の確度の高い予測は困難で、地震予知を前提とした防災対応を見直す
・巨大地震につながる地殻変動や前震などの異常現象を観測した場合、住民避難を促す仕組みを検討
・南海トラフ西側領域での観測体制を強化

となっています。

1995年の阪神・淡路大震災もそれ以降の2004年の中越地震や2011年の東日本大震災や2016年 熊本地震にも、長年の予知による成果が出せなかったことを考えれば、当然のことかもしれません。見直すといっても南海地震や南海トラフ地震の脅威が薄らいだわけではありませんので、災害時の対応だけは各自で考えておく必要はあります。

定義が見直されたきっかけ…

さきほど2012年に予知と予測の定義が見直されたと書きましたが、この見直しをしたことにも実はある出来事がきっかけになっています。
2009年 4月にイタリア中部地震という大きな地震があって309人の死者が出て 6万人以上が被災したことに対して、大地震の兆候がないと判断したイタリア防災庁付属の委員会メンバー7人が判断に間違いによる過失致死傷の罪で起訴されたもので、その裁判が 2012年の 9月25日に開かれて 7人全員に禁固 4年の刑が言い渡されたということがあったのです。この事件があったので予知と予測の使い分けを明確にしたのです。

地震予知の的中率は 5%もないといわれているのに、大地震の兆候がないと断言することもないと思いますが、こんなことで有罪になってしまうとは地震学者さんたちは発言できなくなってしまいます。怪しい預言者がいい加減なことを言って世間を混乱させたなら犯罪の可能性もありますが、この判決はいかがなものかと思ってしまいます。経済予想が外れた経済学者や世の中の動向を予想できない政治家たちも適用されたらたいへんなことになってしまいます。筆者の競馬予想が外れても誰も文句は言ってきませんが・・・。

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