2019/12/24
No. 150 「“企業研究者の吉野 彰氏”が ノーベル賞受賞 …」
思いつきラボ
2014/02/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2014年2月15日時点の内容です。
ロシア ソチで冬季オリンピックが始まった途端に「45年ぶりとか史上初」などの報道がテレビから流れてきて、いきなり日本選手団 絶好調のニュースかと思いきや、降雪・積雪のアナウンスで、交通機関がマヒ状態となりました。防災・安全の仕事に係わっていると気象現象の新記録や数十年ぶりの記録はありがたい話ではないので、やはり地球が悲鳴を上げているのかと気になります。
都心部でも寒い日が続きましたが、2月のことを如月(きさらぎ)と呼ぶのは、“暦の上では春(立春)が過ぎたのにまだまだ寒くなって衣を更に重ねて着ますよ”ということから、衣(きぬ)更(さら)に着るが転じて“衣更着(きさらぎ)”となったと言う説があり、まさに暦の呼称どおりになりました。“如月”は中国の旧陰暦二月の異称で、読み方だけ“きさらぎ”になったと考えられていますが、他にも説があるようです。いずれにせよ月の呼称で繊維に関係づいているので、寒いのは苦手ですが、筆者の好きな呼び名です。
1 月 29 日に 高視認性衣服の第一回 JIS 原案作成委員会 が開催されました。最近話題になることの
多い ISO 20471 高視認性衣服の JIS 化がスタートしました。 2013 年 3 月に ISO 20471 高視認性衣服が制定されて、その段階から JIS 化の動きがあり、委員長・幹事・主査も決まり、原案も 2013 年 5 月に発行された ISO 20471 の邦訳本をベースにしていくことも承認されました。
ということですので、高視認性衣服について一度整理しておきたいと思います。
高視認性衣服とはすでに世の中には出回っているもので、工事現場の作業従事者や鉄道保全者が着用している蛍光色や反射材が取り付けられた目立つ衣服のことです。ISO 20471 高視認性衣服の中では「高視認性とは物体が瞬時に視覚的な注意を引き付ける特性を意味する」と定義付けられています。見馴れてはいるものの、視認性に効果のある蛍光素材や蓄光素材や反射素材については、繊維関連では国内で基準化されたものがありませんでした。
欧米では早くから高視認性衣服については規格化されていて、欧州では1994年にEN 471 High Visibility Warning Clothing for professional use (高視認性安全作業服)として基準化されています。アメリカ規格でも1999年に ANSI 107 High Visibility Safety Apparel and Headwear (高視認性安全服)が制定されています。ANSI 107 もEN 471を基本にしていて、その後 ISO化の動きになり、2013年3月15日に ISO 20471 High Visibility Clothing(高視認性衣服)が発行されることとなりました。さらにISO化されたことを受け、欧州規格 EN471 もEN ISO20471 と2013年10月1日からENとISOの規格統一が図られました。
この流れを受け、国内では2013年11月27日にJIS化の承認を受け、2014年1月29日に第1回の原案作成委員会が催されることになりました。EN 471制定からすれば20年後ということになるのですが、基準がなかったということだけで日本の製品のレベルは高いものがあります。作業着に高視認性能が付加されたということで単なる作業服ではなく、車両事故から身を守る保護衣という扱いになります。現に欧州では、EU加盟国すべての安全基準を満たしていなければならない項目の中の個人防護具に該当し、安全を認証する“CE”(シーイーと書きますが読み方はシーマーキング)を取得しなければなりません。高視認性衣服は防護服という考え方になっています。
日本では、歩行者と車両の衝突事故の場合、車両側が注意をしなさいということが基本になっているので、車両サイドの注意喚起はずっと行われていました。しかしそれだけでは死亡事故の減少に限度が見られ、これからは歩行者も自ら身を守りなさいということになったようです。筆者のように車の免許を持っていない人間からすれば迷惑な話で、歩行者優先であったのが、車両優先とは言わないまでも歩行者と車両が対等の考え方に変わってきているみたいです。
ロシア モスクワでは夜間に歩行者が反射性素材を身に付けていなければ、罰金を徴収するという法案が出されたという報道もありました。やはり歩行者にとっては本当に迷惑な話です。
話が逸れて行きそうなので元にもどしますが、従来の作業服と何が違うのかといいますと、まず蛍光色の生地を使いなさいということで、このことにより、昼間でも薄暗いところや少し離れたところでも視認性は高くなります。蛍光色の色まで定められていて、“蛍光イエロー”・“蛍光オレンジ”・“蛍光レッド”の3色に限定されています。一般には蛍光グリーンや蛍光ブルーなどもありますが、注意喚起効果の高い3色のみ有効と判断されているようです。
さらに再帰性反射素材を使用している衣服が原則となります。反射性素材は光源があって、目立つものなので夜間の車のヘッドライトを想定した基準になっています。その反射率は交通標識などで決められているものよりも高い基準が設けられている上に、交通標識とは異なって衣服の場合は洗濯が伴いますので、洗濯後や温度変化、降雨時、摩耗などの耐性試験も試験に定められています。
製品デザインも規定があります。蛍光生地や再帰反射テ-プを無造作に使っても視認効果が低いものになってしまう可能性があるので、作業中でも視認しやすいデザインが決められています。作業中の動きに合わせ袖先や裾先の方が見やすいことから、袖先・裾先に反射テープは付けなさいとかテープ幅は5㎝以上でなければならない…など決められています。特徴的なのが蛍光生地と反射素材の使用面積が定められていることで、小さいサイズでも最小面積を満たしてなければなりません。
という規格が従来の作業服にはなかったもので、これらの基準が加わることで安全性が高まる保護衣という扱いになります。JISの委員会が発足しましたが、JISの部門分類でいえば、“JIS L 繊維” ではなく“ JIS T 医療安全用具”の分類となります。従来の繊維関連のJIS規格という意識からちょっと離れた見方をする必要があります。
基本的には衣料品ですので、洗濯試験や物性試験に関してはISO 105 の試験方法に基づきますが、蛍光測色とか再帰性反射性能を測定する試験機は JIS L 繊維 ではあまり使われることがない測定器になります。特徴的な部分だけ紹介しますと、測色の計測器は45/0°方式でCIE(国際照明委員会)規格に適合するD65光源を用いて 色度座標(x,y)と輝度率(Y)を求めます。再帰性反射性能の測定は試験片表面と受光面の間の距離が15m以上と定められています。
ISO化されて1年近く経過しているのですが、国内の検査機関ではまだ対応の取れない試験もあり、また他の検査機関との手合せも行っていかなければならない段階で、さらに海外の検査機関とも測定内容の統一を図っていかなければならない状況です。JIS作成委員会が発足したので、ひとつひとつ問題を解決しながら努めていきたいです。高視認性衣服は海外でも日本製の評価は高いので、できるだけ早く対応できるようにと考えております。
作業服がベースになっている規格なのですが、ジョギングウェアや学生の通学用アウターや老人向け外出着などの企画も進められています。
ちなみにクラス1で使用する最小面積は、蛍光生地が0,14㎡ 反射性素材が0,10㎡ となっています。デザインしやすい面積ですので、作業服以外の高視認性衣服が市場に出回るのも早いかもしれません。
筆者が担当している部署ですので、ご質問やご意見などありましたら、以下までお問い合わせください。
なにか後半の原稿がコラムっぽくなくなってしまいました。業務担当の原稿だと文章が堅くなるようです…反省。
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp
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