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アパレル散歩道 第90回 : シリーズ【アパレルのモノつくりQ&A】④ / 「繊維編」その1

2026/07/01

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今回から、アパレルのモノつくりQ&A「繊維編」を3回シリーズでお送りします。今回と次回は、最も身近な衣料用繊維である「ポリエステル」を取り上げ、その歴史から繊維としての特徴まで、ポリエステルを徹底的に解剖していきます。

2026.7.1

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 今回から、アパレルのモノつくりQ&A「繊維編」を3回シリーズでお送りします。今回と次回は、最も身近な衣料用繊維である「ポリエステル」を取り上げ、その歴史から繊維としての特徴まで、ポリエステルを徹底的に解剖していきます。

第90回(今回)

1.ポリエステル繊維の登場
 1.1ポリエステル繊維の歴史
 1.2約60年前の野球ユニフォーム素材
2.ポリエステルの価格について
3.ポリエステル繊維の特徴
 3.1短所の改善
 3.2各種繊維の性能比較
 3.3優れた強度や耐久性
 3.4吸湿性、吸水性が低い(速乾性高い)
 3.5優れた耐熱性
 3.6分散染料で染色

第91回(次回)

4.ポリエステル製品とリサイクル対応
5.昇華捺染可能
6.ポリエステル製品の品質事故
 6.1物性~ピリングとスナッグ
 6.2染色堅ろう度
  ・昇華汚染
  ・マイグレーション
  ・白場汚染


■ 繊維編(その1) ―【Q&A7 ポリエステルの歴史から特徴まで徹底解剖1】 ■

Q&A-7
ポリエステル繊維は、現在世界で最も多く生産されている合成繊維ですが、その生産背景、化学構造、消費性能(長所や短所など)、また染色性、環境負荷、代表的な品質事故例などについて、総合的に教えてください。

図1.ポリエステル繊維の製造例(溶融紡糸)
図1.ポリエステル繊維の
製造例(溶融紡糸)



  1. ポリエステル繊維の登場
     2024年、世界の全繊維生産量1億3200万トンのうち、ポリエステル繊維は約59%(7800万トン)を占め、最も主要な繊維として位置付けられています。『今後ポリエステル繊維に代わる繊維素材は出現しないだろう』とも言われており、その生産はさらに拡大するものと思われます。
    1. ポリエステル繊維の歴史
       ポリエステル繊維は、長年ナイロン繊維・アクリル繊維とともに、3大合成繊維の1つでしたが、生産量を見ると近年ではポリエステル繊維の一人勝ち状態です。もともと、ポリエステル繊維は、1941年に英国ICI社で綿繊維の代替品として開発されました。ちなみにナイロン繊維は絹を目標に、アクリル繊維は羊毛を目標に開発されました。
       わが国では1957年に東レ株式会社と帝人株式会社が共同で、ポリエステルの特許実施権を持つ英国ICI社との技術援助契約を締結し、ここからポリエステルの国内生産の歴史が始まりました。東レと帝人は「テトロン®」の商標で商品化し、その名称は、ポリエステルの物質名である「ポリエチレンレフタレー」1)の「テ」と「ト」からきていると言われています。
      ≪合成繊維はなぜ登場したか≫
      合成繊維は第二次世界大戦前後に登場しました。その理由は次のようなものです。
      1. 当時の世界的な経済拡大で、従来の天然繊維だけでは需要を満たせなくなった。
      2. 石油化学工業が大きく進展し、合成繊維開発技術が進展した。
      3. 合成繊維に、天然繊維にはない新しい機能を求めた。
        (例:しわが発生しにくい、摩耗に強い、高伸縮、高強度など)
      4. 軍需物質としてのニーズがあった。


    2. 約60年前の野球ユニフォーム素材
       わが国のアパレル産業は、戦後10数年を経た1960年代から本格的に勃興しました。筆者が在籍していたスポーツアパレル業界も1964年の東京オリンピックを契機にスポーツ人口が増加し、市場が拡大しました。
       野球ユニフォームを例に挙げると、1950年代当時には、表1のようにポリエステルだけでなく、アクリル、ナイロン、ポリプロピレン、ビニロンなど各種の繊維素材が使用されていました。
       その後、年月の経過とともに、ポリエステル素材の比率が高まり、今日に至っています。この流れは、スポーツウェアだけでなく他分野の製品も同様で、国内繊維メーカーの糸やテキスタイルの開発方針とアパレルメーカーの商品開発がマッチングしたことによるものでした。

      表1.1950年代後半の野球ユニフォーム用素材の例1)
      品番生地名組成
      Aスリーエイトテックスポリエステル50% 毛50%
      B帝人テトロンギャバポリエステル55%
      レーヨン45%
      C東洋紡エクスランフラノアクリル50% レーヨン50%
      Dニチレイナイロンギャバ※1ナイロン30% レーヨン70%
      Eクラレビニロンフラノビニロン※230% レーヨン70%
      Fニチボービニロンエラスギャバ※1ビニロン50% 綿 50%
      G東レパイレンギャバポリプロピレン40%
      レーヨン 60%

      図2.野球ユニフォーム
      図2.野球ユニフォーム

      ※1 
      ニチレイ、ニチボー
      1969年に当時の繊維メーカーのニチボーと日本レイヨン(ニチレイ)が合併し、ユニチカとなったが、その合併前の社名である。
      ※2 
      ビニロン
      ポリビニルアルコール(PVA)を原料として、わが国で初めて開発された合成繊維である。1939年に京都大学の桜田一郎教授が開発し商品化されたが、現在では衣料用途には使用されていない。


  2. ポリエステルの価格について
     ポリエステルの価格を他の繊維と比べてみましょう。ここでは、繊維の集合体である「糸」の価格で比較します。
     糸の価格は、番手(太さ)・紡績や製糸方法・原料相場・為替などの要因で変化します。表2は、2025年時点の一般的な衣料用の糸価格の目安です。なお石油から作られる合成繊維の糸価格は、原油相場や世界的な需要変動が大きく影響するため、2026年に入りさらに高騰しているようです。

    表2.糸価格の目安(2025年)
    繊維種糸価格の目安(円/kg)コメント
    綿糸700~1,500程度コーマ糸や細番手ほど高価
    ポリエステル糸300~700程度合繊の中では比較的安価
    ただし機能糸などはやや高い
    ナイロン糸500~1,200程度ポリエステル糸より高価格
    レーヨン糸600~1,200程度綿と同程度の価格
    アクリル糸300~600程度ウール代替合繊として比較的安価
    毛糸(ウール)1,500~4,000程度原毛相場の影響が大きい
    カシミヤ混・獣毛糸5,000~20,000以上非常に高価
    ≪ポリエステル繊維のコストは?≫
    ポリエステル繊維は、表2でも明らかのように、他の繊維素材と比べると安価です。近年はスケールメリットもあり、この傾向は当分続くものと推察します。
    しかし、原油相場が気になるところです…。


  3. ポリエステル繊維の特徴
     ポリエステル繊維の長所と短所を表3にまとめましたので、確認してください。

    表3.ポリエステル繊維の長所と短所
    長所短所(弱点)
    ① 強度が高く丈夫
    • 引張強度、耐摩耗性に優れる
    • 濡れても強度が低下しない
    ① 吸湿性が低くムレやすい
    • 汗を吸わないため、ベタつきやすい
    ② しわになりにくい(形態安定性に優れる)
    • 弾性回復性が高い
    • プリーツ性が良好
    ② 静電気が発生しやすい
    • 乾燥時に帯電して、ほこりが付着したり、パチパチの原因となる
    ③ 吸水性が低く、乾きやすい
    • 公定水分率:0.4%と非常に低い
    • 水を吸収せず、汗は繊維表面に拡散する
    ③ 毛玉(ピリング)ができやすい
    • 繊維強度が高いため、毛玉が脱落しない
    ④ 寸法安定性が高い
    • 家庭洗濯で縮みにくい、型崩れしにくい
    ④ 熱で溶融する
    • 約250℃前後で溶ける
    • アイロンは低温設定が望ましい
    ⑤ 熱可塑性(熱で変形する)
    • プリーツ加工
    • ヒートセットが可能
    ⑤ 分散染料が汚染する
    • 昇華やマイグレーションによる汚染が発生することがある
    ⑥ 耐薬品性・耐候性が良好
    • 酸/アルカリの物質や溶剤に強い
    • 紫外線(日光)劣化も少ない
    ⑥ 風合いがやや硬い
    • ナイロンなどに比べると風合いはやや硬く、伸びも少ない


    1. 短所の改善
       現在、ポリエステル繊維は一般衣料、スーツ、スポーツやワーキング全般、そしてフリース、裏地、中わた、縫い糸などだけでなく、バッグ、インテリア、産業資材にも幅広く使用されています。繊維としての弱点は、紡糸技術や糸処理技術、染色加工技術などにより改善されてきたため、今日大きなシェアを占めるに至りました。弱点の改善例を下記の「道しるべ」に紹介しています。
      ≪ポリエステル繊維~弱点の改善技術の例≫
      1. 吸水性が低く、ムレやすい
        (対策) 
        • 異形断面糸による表面張力で吸水促進
        • 吸水加工併用
      2. 風合いが硬い
        (対策) 
        • 綿などとの混紡 (E/C、E/Wなど)
        • 極細繊維化
        • 減量加工
      3. 昇華堅ろう度が低い
        (対策) 
        • 染色後の還元洗浄(RC)強化

          ⇒ 残留分散染料の除去

        • カチオン可染タイプポリエステルの使用
      4. 静電気が発生しやすい
        (対策) 
        • 帯電防止加工(吸水)
        • 親水性繊維との混用
        • 特殊な導電物質を繊維内に封入する


    2. 各種繊維の性能比較
       表4に各繊維の性能をまとめています。全ての性能に◎や〇がつく繊維はありません。一般的に天然繊維は強度や収縮性が低く、一方、合成繊維は吸湿性や耐熱性が低く、その性能はポリエステル繊維も同様です。
      表4.各種繊維の性能
      記号の意味: 非常に優秀  〇普通  △劣っている  ×非常に劣っている
      分類繊維名吸水性・吸湿性強度染色堅ろう性耐熱性収縮性伸縮性
      天然繊維綿
      再生繊維レーヨン
      キュプラ
      半合成繊維アセテート
      トリアセテート
      合成繊維ナイロン×
      ポリエステル××
      アクリル
      モダクリル
      ××
      ポリウレタン××××


    3. 優れた強度や耐久性
       初期引っ張り抵抗度はヤング率ともいい、力を加えた時の変形のしにくさを示します。単位はcN/dtex(gf/D)です。表5の初期引っ張り抵抗度の表を見ると、ポリエステル繊維が他の繊維に比べて高い値を示しています。また、図3の応力-歪み曲線(S-Sカーブ)でも、ゼロ点からの曲線の立ち上がりが急なポリエステル繊維は、ナイロン同様強度が大きいものの、伸びも少なくナイロンより変形しにくいことがわかります。つまりポリエステル繊維は、ナイロン繊維より剛直で風合いも硬く、伸縮性も低いことが推察されます。

      表5.各種繊維の初期引っ張り抵抗度
      繊維の種類初期引っ張り抵抗度
      (cN/dtex)
      綿60-82
      ナイロン18-40
      アクリル34-75
      ポリエステル79-141

      図3.荷重-伸長率曲線(S-Sカーブ)
      図3.荷重-伸長率曲線(S-Sカーブ) 2)



    4. 吸湿性、吸水性が低い(速乾性高い)
      • ポリエステルは結晶性の大きい高分子で、正式な物質名は『ポリエチレンテレフタレート(PET)』です。ペットボトルの「ペット」はここからきています。
      • 「ポリ」は「多い」という意味で、このことから「ポリエステルは、多くのエステル結合が繋がっている」という意味です。また、「エステル結合(-COO-)」は、酸とアルコールが反応して作られます。ポリエステル繊維では、酸成分がテレフタル酸、アルコール成分がエチレングリコールに相当し、この重合反応となります。
        この2つの物質はともに2つの反応の手を持ち、重合反応を繰り返してポリエステル高分子が生成されます。(図4参照)
      • ポリエステル高分子は結晶性が高く、その公定水分率はわずか0.4%で、ナイロンの4.5%、綿の8.5%、毛の16%などと比較すると水分率は低く、むしろ疎水繊維といえます。(図5参照)


      エステル結合(-COO-)

      図4.ポリエステルの化学構造
      テレフタル酸とエチレングリコールが重合反応している
      図4.ポリエステルの化学構造

      図5.各種繊維の吸湿特性
      図5.各種繊維の吸湿特性 2)



    5. 優れた耐熱性
       ポリエステル繊維は、他の合繊に比べて軟化点や融点が高い繊維です。このため、アイロンやプレス機などによるヒートセット性に優れ、プリーツ性も良好です。また、分散染料による染色工程でも、高圧高温染色に耐久性を示します。(染色加工温度は130℃~135℃)

      表7.各種繊維の耐熱性 4)
      繊維名熱特性
      綿235℃で分解
      ナイロン6軟化点180℃ 融点215~220℃
      ナイロン66軟化点230℃ 融点249~250℃
      ポリエステル軟化点238℃ 融点255~260℃
      アクリル軟化点190~240℃ 融点明瞭でない
      モダクリル軟化点150℃ 融点明瞭でない
      ポリプロピレン軟化点140~160℃ 融点165~173℃
      ≪ポリエステルは、親水繊維か疎水繊維か?≫
      ポリエステルは、結晶性が大きく、また化学構造に反応基がないため、水や染料との親和性が乏しい疎水性繊維と言える


      ~プリーツ加工について~
      合成繊維のヒートセット性を活用した加工に、プリーツ加工があります。
      • 布に加工によって付けた「ひだ」または「折り目」をプリーツと言う。プリーツセット性(プリーツのつきやすさ)は、繊維の耐熱性で性能が左右される。
      • 合成繊維や半合成繊維織物は、熱可塑性によってセットが可能となる。熱や蒸気を当て、形態を安定することができ、これをヒートセットと言う。また、水に濡れたり洗濯しても取れない耐久性が求められる。
      • 天然繊維はアイロン(熱、水分、圧力)で容易にプリーツできるが、プリーツ保持性(耐久性)は低く、樹脂との併用が必要となる。
      • 化学処理による方法には、毛織物のシロセット加工があり、半永久的なプリーツ保持性が得られる。その他、樹脂加工(パーマネントプレス加工)も効果的である。

      図6.プリーツスカートの例
      図6.プリーツスカートの例



      ≪ポリエステルのプリーツ加工性はどうか?≫
      プリーツ加工の耐久性では、ポリエステルがナイロンより良好である。ポリエステルの融点や軟化点は、ナイロンより高く、プリーツの耐久性が大きい。


    6. 分散染料で染色
       ナイロンや綿などは、常圧(100℃以下)で染色が可能ですが、ポリエステルは高圧液流染色機(図7)を使用します(130℃~135℃)。図7が液流染色機のイメージです。
      • ポリエステルは結晶性が大きく、化学構造に染料と結合する基がないため、疎水性の「分散染料」を高温高圧下で繊維内部に押し込んで染色しています。分散染料はポリエステル繊維とは化学結合せず、繊維内に分散した状態となっています。ちょうど「お餅に豆を押し込む」イメージに似ているでしょうか。
      • 分散染料には、熱移行(サーモマイグレーション)や昇華性の特性があります。これが分散染料と呼ばれる所以であり、時としてこれにより品質トラブルが生じることがあります。これらのトラブルを軽減するため、染色後は還元洗浄(RC=Reduction Cleaningの略)を充分実施することが求められます。
      なお、以下に液流染色機使用の注意点を示します。
      • ロープ状で染色されるため、しわ発生に要注意です。
      • 染色加工効率がよく、現在染色業界では主流の染色機ですが、ロット染色であるため、ロット間の色目や品質のばらつきが生じやすく、別途適正な管理が必要となります。


      図7.液流染色機のイメージ
      図7.液流染色機のイメージ



(参考資料)
1)「デサント野球商品カタログ(1958年)」:株式会社デサント、引用
2)、3)「繊維製品の基礎知識 第1部 繊維に関する一般知識」:一般社団法人日本衣料管理協会、P18引用
4)「第3版 繊維便覧 繊維学会編」:丸善株式会社、引用

…次回予告
(第91回 アパレル散歩道 – 2026年8月1日公開予定)

 【繊維編 その2】として繊維編・「ポリエステル繊維②」をテーマにお送りします。
著者Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
S51年京都工芸繊維大学卒業。43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウエアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。
清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
社外経歴
一般社団法人日本繊維技術士センター
理事 技術士(繊維)
一般社団法人日本衣料管理協会
理事 TES会西日本支部顧問
大学非常勤講師
一般社団法人日本繊維製品消費科学会
元副会長
【発行】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
事業推進室 マーケティンググループ
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp
URL:https://nissenken.or.jp
※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

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