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アパレル散歩道 第89回 : シリーズ【アパレルのモノつくりQ&A】③ / 「商品企画編」その3

2026/06/01

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1.商品企画編(その3) ―【Q&A5 天然皮革の特性と製品管理上の注意点】 多くの衣料は繊維から作られていますが、天然皮革が衣料全体あるいは部分的に使用されている衣料もあります。アパレル散歩道では、これまであまり天然皮革を紹介する機会がありませんでしたので、今回改めて取り上げてみたいと思います。

2026.6.1

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  1. 商品企画編(その3) ―【Q&A5 天然皮革の特性と製品管理上の注意点】
     多くの衣料は繊維から作られていますが、天然皮革が衣料全体あるいは部分的に使用されている衣料もあります。アパレル散歩道では、これまであまり天然皮革を紹介する機会がありませんでしたので、今回改めて取り上げてみたいと思います。
     天然皮革は独特の風合いや外観、また、丈夫であるなど多くの長所がある反面、多くの短所もあります。長所と短所を理解され、上手な商品作りの一助となれば幸いです。

    Q&A-5
    長年、天然皮革を衣料、バッグ、インテリア用途で使用していますが、天然皮革の種類、製造方法、用途やその特徴を教えてください。
    また、私たちが商品化するに当たり、注意点やメンテナンス方法も教えてください。

    図1.天然皮革製品の例
    図1.天然皮革製品の例



    1. 天然皮革について
       天然皮革は、動物の皮から作った皮革のことです。動物の種類別に、牛革、豚革、羊革、山羊革、馬革などがあります。バッグ用には、ダチョウ(オーストリッチ)や、は虫類(ワニ革など)なども使用されます。


    2. 皮と革の違い
       動物から採取した生皮なまかわは、そのままでは腐敗が進行します。このため特殊ななめし剤を使い、腐敗を防ぐ加工が必要で、この工程をなめし工程と呼びます。なめし工程を経た「皮」は「革」に変化し、腐敗しない耐久性のある柔らかな素材に変化します(図2参照)。また、この工程では、革に油を加えて(加油)、さらに柔軟性を付与しています。

      かわ ⇒ (なめし工程) ⇒ かく
      skin・hide
      leather

      図2.皮から革へ



      ~なめしの漢字は?~
      「なめし」を漢字で書くと、「鞣」です。
      革へんに柔(やわらかい)で「鞣」になり、まさに、皮→革への変化をこの漢字が示しています。
      なめし


    3. 天然皮革の断面
       天然皮革の断面を見ると、表面に「上皮層」、次にたんぱく質のコラーゲンが主体の銀面層、その下に網状層があります。(図3参照)
       毛や上皮層はなめし工程で除去され、銀面層と網状層からなる真皮層が皮革として利用されています。網状層はとこがわとも呼ばれ、この下には皮下脂肪があります。銀面層の繊維は非常に細く(約10μ)、緻密で柔軟性がありますが、網状層の繊維は太くて(約100μ)、組織は粗く、これが革の強度を決定します。
      図3.皮革の断面

      図3.皮革の断面1)


      表1.銀面層と網状層の特徴
      皮革の層特徴
      真皮層銀面層繊維は非常に細く、緻密で柔軟性である
      網状層繊維は太く、組織は粗く革の強度を左右する。
      床革ともいう


    4. なめし工程
       生皮の腐敗を防ぐ「なめし工程」では、生皮の成分であるコラーゲンをなめし剤で化学的に架橋結合させて、皮の分子構造を安定化させ強度を高めます。なお、コラーゲンはたんぱく質のため、高温で縮む傾向があります。このため低温で染色せざるを得ず、染色堅ろう度は低くなります。代表的なめし工程は表2の通りです。

      表2.なめし工程について
      種類概要
      タンニンなめし植物から採取したタンニン(渋成分)を使用する。耐水性や耐久性はよいが、耐熱性は劣る。断面は茶褐色を示す
      クロムなめし硫酸クロム液を使用する。短時間で処理されるため、なめし工場で多用されている。薄い皮革にも使用されて伸びも良好である。断面は緑青色を示す
      コンビネーションなめしクロムなめし後にタンニンなめしをおこなう


    5. 天然皮革の種類
       天然皮革には、表3のように多くの種類があります。ここでは、その種類、特徴と用途を示します。

      表3.天然皮革の種類と特徴、用途1)
      種類概要用途
      牛革最も多用されている皮革で、生育段階ごとに各種呼び名がある
      • 成牛(ハイド)~厚手で強度あり
      • 去勢雄牛(ステア)~
        厚みと強度のバランスが良い
        表面が比較的きれい
      • 幼牛(キップ)~柔軟である
      • 子牛(カーフ)~柔軟である
      衣料、手袋、靴、ベルト、バッグなど
      山羊(やぎ)革成長した山羊はゴートと呼ばれる
      • 子山羊はキッドという。高級軽量で薄い
      衣料、手袋
      羊革薄くて柔軟性に富む。きめ細かい
      • 子羊革はラムスキンという
      衣料、手袋
      馬革丈夫で光沢がある。コードバンともいうバッグ、ランドセルなど
      豚革毛穴が目立つ。このため強度は強くないバッグ、手袋、衣料など
      鹿革柔軟でしなやか、強度あり。セーム革ともいう手袋、衣料など
      ワニ、トカゲ特徴ある凹凸の外観バッグなど
      ダチョウ特徴ある外観、羽根跡の凹凸あり。高級素材
      • オーストリッチと呼ばれる。
      バッグなど


    6. 天然皮革の仕上げ
       なめし工程後、皮革は染色され、その後仕上げ加工されます。いくつかの仕上げ方法を表4に紹介します。
      表4.天然皮革の仕上げ1)
      方法説明
      スムーズ仕上げなめし加工のみの仕上げ(素革ともいう)
      アニリン仕上げアニリン系染料で染色している
      エナメル仕上げ表面にポリウレタン系樹脂を塗布する。光沢あり
      エンボス仕上げ熱と高圧の型押しで、表面に凹凸をつける
      ヌバック仕上げ銀面を研磨紙で擦り毛羽立ちを与える
      バックスキン仕上げ鹿革などを毛羽立たせたもの。バックとは有角獣の雄のこと
      スエード仕上げ皮革裏面を起毛し、表使いしたもの
      ベロア仕上げ皮革裏面を起毛したもの。スエードより毛足は長い
      図4.天然オーストリッチ

      図4.天然オーストリッチ


      図5.合成皮革(エンボス加工)
      図5.合成皮革
      (エンボス加工)


    7. 天然皮革の長所と弱点
       表5では、天然皮革の長所と短所を示しています。

      表5.天然皮革の長所と短所
      特徴
      長所
      • 独自の外観、風合い、高級感
      • 伸びにくいが、摩耗強さに優れる
      弱点
      • 染色堅ろう度が低い。洗濯及び摩擦堅ろう度は、濃色で1-2級程度
      • 水洗いが難しい(色落ち、硬化、収縮のリスクあり)
      • ドライクリーニング不可(加脂剤脱落による硬化リスクあり)
      • 雨などの濡れによる硬化あり


      1. 最大の長所は、独自の外観と風合いです。また、オートバイのライダースーツなどにも使用されているように摩耗強さに優れています。また、長時間着用していると、体型になじんでくる長所もあります。
      2. 天然皮革にはいくつかの弱点があります。
        • 濃色品は、染色堅ろう度が非常に劣る(洗濯や摩擦堅ろう度などが低い)
        • ドライクリーニング(溶剤洗濯)すると、なめし工程で付与された加脂剤が溶出し、皮革が硬化する
        • 着用や保管時に過度な高温が加わると、熱収縮が発生する。例えば、濡れた天然皮革のグローブをストーブのすぐ近くなどで急速乾燥させると、縮みや風合いの硬化が生じる


    8. 天然皮革製品のメンテナンス
       天然皮革製品のメンテナンス方法について、以下にまとめます。
      • ドライクリーニングで硬化し、高温で収縮硬化するので注意が必要
      • 染色堅ろう度が劣る。タンパク質のコラーゲンは高温染色が難しく、繊維製品のように染色堅ろう度(特に洗濯堅ろう度や摩擦堅ろう度など)を維持するのが難しい
      • 基本的に水洗いもドライクリーニングも難しく、専門技術による特殊なクリーニング処理が一般的となる。(洗濯方法に関する消費者への情報発信が必要)
      • 皮革製品の表示は、家庭用品品質表示法の「雑貨工業品品質表示規程」に従うこと
      • 一般衣料品での天然皮革部分使いは、天然皮革の弱点から発生するリスクをよく理解し、場合によっては企画部門に対し、合成皮革への変更を勧める
      (参照) 雑貨工業品品質表示規程 / 消費者庁
      https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/law/law_07


  2. 商品企画編(その3) ―【Q&A6 マーケティングにおける各部署の役割 ― 品質管理視点も重要】
     アパレルのモノつくりで、マーケティングは「売れる商品を開発するためのスタート」です。
     マーケティングには、アパレルビジネスの「企画設計→生産→販売」まで、すべての方向性を決定する役割が求められます。このため、逆にマーケティングの出発点で判断ミスがあると、その後のモノつくりや販売の精度が低くなり、大量不良在庫に陥ることもあり得えます。試作の商品企画はMDが担当しますが、品質管理部門の方も、本生産の品質管理だけでなく、商品企画にも関与して、試作段階での設計不良解消に努めていただきたいと思います。これらは、アパレル製品のみならず、全ての物販の展開にも共通していることでしょう。

    Q&A-6
    モノつくりで、マーケティングが大切と言いますが、マーケティングとは何ですか。
    アパレル企業で働く我々は具体的にどのような点に配慮すればいいですか?
    また品質管理担当者の役割は?

    図6.マーケティングのイメージ
    図6.マーケティングのイメージ



    1. マーケティングとは
       マーケティングとは、「商品が売れる仕組みを作ること」と理解されています。
       アパレルメーカーにとって、売上と利益の確保が大命題であり、①的確な市場調査、②適正な商品作り、③効果的な情報発信、④効率の良い流通の確保、などが求められます。


    2. マーケティングの要素
       アパレルメーカーのマーケティングの要素について、表6の①~④にまとめています。これらの業務を担当するのは、マーチャンダイザー(MD)であり、その任務は非常に重要と言えます。

      表6.マーケティングの要素
      要素キーワード具体的な説明
      ①市場調査をする
       =マーケットリサーチ
      • 消費者ニーズは何か
      • どの顧客層を対象とするか
      • 市場調査、消費者・トレンド分析などを通して、消費者の年齢、ライフスタイル、価値観、価格感を把握する
      • バーコードやRFID などの利用
      • 「誰に、どのような衣料を、どの価格で」を確定する
      ②商品を作る
       =商品企画設計
      • ニーズにマッチングした商品開発と上代価格の決定
      • 消費者ニーズに適合した材料開発、製品開発(パターン開発など)、機能性開発をおこなう
      • 消費者目線の上代を設定する
      ③情報を伝える
       =プロモーションと
        販売促進
      • 各種の広告をする
      • SNS(YouTube)など
      • 店頭POP、VMDなど
      • ブランドや商品の魅力、優位性を消費者に伝え、購買に繋げる
      • 最近はデジタルの増加により、デジタルとリアルを組み合わせた方法が主流となる
      ④商品を届ける=流通
      • 店舗で販売する
      • ネット、通信販売する
      • 商品を「どの流通で、どの場所で、どのように消費者に届けるか」を決定する


      ≪アパレルのマーケティングの役割≫
      ◎消費者ニーズを把握する
      ◎商品企画の方向を決める
      ◎在庫リスクを減らす
      ◎ブランド価値を創造する
      ◎販売戦略と連動させる
      ◎効果的な広報宣伝を打つ


    3. マーケティングと商品企画
       筆者が現役中に経験した「野球ユニフォームの企画と生産」を一例に挙げます。
       一口に野球ユニフォームと言っても、①学生用、②一般用、③プロ野球用などがあります。
       「学生用ユニフォーム」に求められるのは、まず低価格であること、滑り込んでも破れない丈夫さ、汚れが落ちやすいこと、補修が容易であることなどです。一方、「一般用」では伸縮性や着用感、洗濯の容易さが購入時の判断目安になります。
       また「プロ野球用」では球団が選手に複数枚のユニフォームを支給しており、選手たちは耐久性よりも競技パフォーマンスが最大となる軽量性、着用感、伸縮性、意匠性などを求めることになります。
       このように、ひとつの衣料分野でも、ユーザー層の違いによりニーズが異なることがあります。これらは他分野の「紳士服」「婦人服」「ワーキング」「インナー」などでも同様であり、きめ細かい市場調査が売り上げを確保するための地道かつ重要な活動になります。


    4. 品質管理とマーケティング
       冒頭で、「①企画設計→②生産→③販売」というアパレルビジネスの流れを紹介しました。では、品質管理部門として、どのように①②③の流れに向かい合えばよいでしょうか。
       アパレルメーカーにとっては「魅力ある商品と高品質」は必須です。品質事故の原因には、「本生産時の品質ばらつき」だけでなく、「企画設計時の企画ミス」があります。前者は単品発生で済んでも、後者は複数発生や全品回収のリスクが生じる場合があります。品質管理部門は、もともと品質管理のプロ集団ですが、マーケティング部門は品質管理の知識や経験に乏しいのが一般的です。そこでマーケティング部門に品質サポート担当者を配置したり、定期的にマーケティング部門と品質管理部門が連携する社内体制を組むことで、企画ミスによる事故の未然防止が実現できると考えます。

      表7.品質保証・品質管理の業務の例
      部門業務内容
      品質保証部門品質管理部門
      1. 本生産における品質管理
        • 主副素材の品質管理、表示内容チェック
        • 縫製仕様、安全性(検針など)の確認 など
      2. マーケティング部門への品質管理サポート
        • 製品用途と素材の適合性(物性と染色堅ろう度、安全性)
        • 材料の組み合わせ適否
        • 副資材の適否
        • 表示内容の適否
        • 機能性データの適否 など
      お客様相談部門
      1. 申し出者への迅速丁寧な対応
        • マーケティング部門、生産管理部門、品質管理部門との連携
      2. 申し出内容の分析
        • 関係部門へのフィードバック検討
        • 社内、外部仕入先などの品質に関する啓蒙


(参考資料)
1)「アパレルの素材と製品」:学校法人文化学園・文化出版局、P163-165引用、引用・加筆

…次回予告
(第90回 アパレル散歩道 – 2026年7月1日公開予定)

 【商品企画編 その4】として繊維編・「特集 ポリエステル繊維①」をテーマにお送りします。
著者Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
S51年京都工芸繊維大学卒業。43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウエアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。
清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)
社外経歴
一般社団法人日本繊維技術士センター
理事 技術士(繊維)
一般社団法人日本衣料管理協会
理事 TES会西日本支部顧問
大学非常勤講師
一般社団法人日本繊維製品消費科学会
元副会長
【発行】
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
事業推進室 マーケティンググループ
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp
URL:https://nissenken.or.jp
※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

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