アパレル散歩道

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第47回 : ケーススタディ③副資材の損傷

2022/12/01

品質事故を分析して原因と対策を考えようアパレル散歩道 品質事故を分析して原因と対策を考えよう

2022.12.1

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 前回の第46回「アパレル散歩道」では、アパレル製品の損傷事例として、「縫い目の損傷」を取り上げました。今回は、縫製品に不可欠な「副資材の損傷」を取り上げます(表1参照)。

表1 損傷事故の分類
大分類中分類
1損傷① 生地の損傷
② 縫い目の損傷
副資材の損傷

《はじめに》
 アパレル製品に使用される副資材には、芯地、裏地、スライドファスナーや面ファスナー、各種ボタン、テープ、ブランドネーム、ホックなどの金属副資材、スパンコール・ビーズ・ラインストーンなどのプラスチック副資材などがあります。
 これらの副資材は、製品外観や製品機能を形成する重要な資材ですが、繊維素材、プラスチック素材、金属素材など多種多様な素材を使用しているため、適正な機能と取り扱いを考慮した製品設計が求められます。
 今回はそうした副資材を個別に取り上げ、課題と対策を確認します。



    ≪副資材の品質リスク≫
  1. 上代数万円の商品であっても、わずか1つの副資材で致命的な連続欠点が発生して商品回収になるリスクがある。ご注意ください。


  1. 芯地
    1. 芯地とは
       芯地には従来から、毛芯、麻芯、綿芯などがあります。最近では、合成繊維の織編の接着芯地、不織布の接着芯地などが数多く使用されています。芯地は商品の仕上がり感に与える影響が大きく、裏地とともに表地やシルエットデザインに適合したものを選択することが大切です。


    2. 芯地の機能と種類
      (1)芯地の機能
       芯地に要求される機能には、以下の項目が挙げられます。様々な目的で使用されているのが分かります。
      1. 衣服のシルエットを形作る(成形性)
      2. 着用による型崩れを防ぎ、寸法安定性を改善する(保形性)
      3. 必要な部分を補強する(耐久性)
      4. 必要な部分に硬さや張りをもたせる(風合い)
      5. 縫いやすくしたり、パッカリングを防止する(可縫性)


      (2)芯地の種類
       芯地は、非接着芯地(ふらし芯)と接着芯地に大別されますが、近年では接着芯地の使用が増えています。接着芯地は、芯地表面に「接着樹脂」が塗布されています。また、接着芯地には「永久接着タイプ」だけでなく、縫製時には接着性が必要ですが、衣服になると不要となる「一時接着タイプ」の芯地もあります。この一時接着タイプには、水溶性樹脂が使用されています(表2参照)。

      表2 芯地の種類
      タイプ種類主な用途
      非接着芯地
      (ふらし芯)
      毛芯
      シャツ芯 など
      • 主に紳士スーツなどのジャケット前身頃など
      • 高級ドレスシャツのカフスや前立てなど
      接着芯地織物タイプ
      • フォーマル衣料やワイシャツなど比較的伸縮のない生地に使用される
      ニットタイプ
      • 伸びのあるニットなどに使用される
      不織布タイプ
      • 伸びのある生地に使用され、ソフトな風合いとコストメリットが特徴
      一時接着タイプ
      • 縫製時のみ接着性が必要な芯地で、水溶性樹脂を使用した芯地が使用される


      図1 高伸縮接着芯地の例(ポリエステル100%)

      図1 高伸縮接着芯地の例
      (ポリエステル100%)

      図2 婦人地襟芯用接着芯地の例(綿100%)

      図2 婦人地襟芯用接着芯地の例
      (綿100%)

      (生地表面に塗布されている粒状の樹脂が接着樹脂で、ホットメルト樹脂とも呼ばれます)



    3. 接着芯地の品質事故事例
      (1)品質事故事例
       芯地は、1.2 (1)の「芯地の機能」で述べたように様々な目的があります。従って、この目的を実現するために多くのタイプの芯地が用意されています。これらは芯地の基布の種類、接着樹脂の種類や塗布方法、塗布密度などの違いで区別され、商品ニーズに対応すべく作られています。普段、私たちが衣料の芯地に関心を持つ機会はなかなか少ないのですが、商品設計時の芯地選択に当たっては、芯地使用の目的、生地の特性(伸びや厚みなど)などを把握して、選定することが大切です。是非、芯地メーカーとの情報交換も行って、適正な芯地選択をしてください。表3に接着芯地に関連する事故事例を紹介します。

      表3 接着芯地に関連する事故事例
      事故事例原因原因の分類
      ウールジャケットで、ぶくつき(波状のしわ)、はく離、カーリング(はねまき現象)が発生したハイグラルエキスパンションによる生地の寸法変化に芯地が追従できなかった生地と接着芯地との適合性
      ドレスシャツの襟部で、接着芯地樹脂のしみ出しが見られたシャツの芯地接着工程で、接着条件管理(温度、圧力、時間)が不適切であった接着プレス条件の不適正
      薄地ブラウス表面にモアレ(干渉柄)が発生していた薄手織物と織物芯地の組み合わせで発生しやすい芯地基布の不適合
      カラー芯地(レッド)から色泣きした商品のカラー配色の関係で、まれにカラー芯地を使用することがある。このカラー芯地の湿潤堅ろう度が低かった芯地の品質


      (2)事故原因の分類と対策
       表3の事故事例を見ると、原因にもいくつかの種類があることが分かります。表4は、芯地関連の事故原因の分類とその対策です。これを見ると、対策で大切なことは「設計時の適正な芯地選択」、「試作段階での接着試験」、「本生産での適正な接着条件の確認」の3つに集約されます。

      表4 芯地の事故原因の分類と対策例
      事故原因の分類対策例
      接着剤の不適合接着剤の種類の不適合
      • 接着剤の種類の不適合
      接着剤の形状の不適合
      • 事前に該当素材による接着試験を行う
      芯地基布の不適合芯地基布の収縮
      • 生地と芯地基布の寸法変化率や伸びなどの物性をよく理解して芯地を設定すること
      芯地基布の伸び不足
      薄地素材のモアレ現象
      • 事前に該当素材による接着試験を行ない、異常の有無を確認する
      厚みの違い
      接着プレス条件の不適正接着剤の溶融不足や接着剤の過溶融
      • 芯地の接着を指定条件(温度、圧力、時間)に従って、適正に行うこと


        ≪接着芯地の事故対策≫
      1. 芯地には様々な樹脂が使用されているため、事前に接着条件(温度、圧力、時間など)を確認すること。
      2. 試作段階で必ず接着テストを行い、洗濯試験などを実施すること。


  2. 裏地
     衣料品の購買時に、私たちは、表地の色・柄や素材感などに大いに関心を払いますが、案外裏地は気にしないケースが多いと思います。しかし、裏地は服種を問わず、様々な目的で衣料に取り付けられているのです。その機能と役割を考えてみましょう。
    1. 裏地の機能と役割
       裏地の目的には、(1)着心地に関する機能、(2)形態安定性(保形性)に関する機能、そして(3)外観に関する機能があります。

      表5 裏地の機能と役割
      裏地の機能内容
      (1) 着心地に関する機能
      • 表面が平滑で滑りやすく着脱しやすい。
      • 耐摩耗性に優れている。
      • 表面への汗じみの影響を防ぐ。
      • 保温性に優れている。
      (2) 形態安定性(保形性)に関する機能
      • 表地の機能を補い、型崩れを防ぐ。
      • 表地との滑りを良くし、シルエットを整える。
      (3) 外観に関する機能
      • デザイン効果を高め付加価値を与える。
        (例 : 裏地にストライプ柄、チェック柄、プリント柄など)
      • 表地の透けを防止する。
      • 表地の透明感を生かし、裏地の色、柄を生かす。


    2. 裏地の仕立て方と名称
       裏地は、取り付け部位や面積といった仕立て方に応じて、「総裏」「背抜き」「半裏」のような名称が今でも残っています。

      表6 裏地仕立ての種類
      種類説明
      総裏身頃全体に裏地をつける仕立て方法。冬用のジャケットは、総裏にすることによって保温性を高めている。さらに、保温性に優れている起毛裏地などもある。
      背抜き前身頃には全部、後身頃には肩の部分にだけ裏地をつける仕立て方法。スーツなどでは、特に背中部の通気性を向上させ、暑さや蒸れを改善する。
      半裏前身頃、後身頃とも裏が丈の半分の長さの仕立方法。
      スーツなどでは、脇下から下半分の裏地を省略している。
      背抜き仕様と同様に、夏用として涼しい仕立てになっている。


      図3 背抜き仕様のジャケットの例



    3. 裏地の種類と織組織、加工など
       裏地には、その目的に応じて多種多用の繊維や素材が使用されています。以下に概要を紹介します。

      (1)裏地に使用される繊維の種類
      • 天然繊維~綿は腰裏などに多用され、毛は紳士スーツの胴裏に、絹は和装や高級婦人服に使用される。
      • 再生繊維(キュプラ・レーヨン)~耐熱性、吸湿性、制電性があり、広く使用される。
      • 半合成繊維(アセテート)~光沢があり、婦人服に使用される。
      • 合成繊維
        ポリエステルは吸湿性に劣るが、W&W性(ウォッシュ&ウェア性)に優れ、広く使用される。
        ナイロンは裏地やポケットに多用されている。
        合成繊維は異型断面糸、混繊糸、帯電防止糸、吸湿糸等を使うことで、裏地の機能性を高めている。


      (2)裏地の織組織
       平織、綾織、朱子織の3組織を基本にして変化組織があり、これらの組織と撚糸加工が組み合わされて種々な織物素材が裏地として使われています。主なものは、タフタ、羽二重、シャンタン、デシン、ジョーゼット、ツイル、サテン、ジャカードです。また、経編素材(トリコット) は、スポーツウエアなどにも使用されています。


    4. 裏地の品質事故例
       裏地には、裏地特有の品質事故があり、表7に紹介します。

      表7 裏地の品質事故例
      事故事例原因対策
      ジャケット袖口のキュプラの裏地が破れてきた。
      • 素材が摩擦に比較的弱い再生繊維のキュプラであった。
      • 長期間の摩擦による擦り切れが発生した。
      • 裏地について、事前にJIS摩耗試験を実施し、採用の可否を判断する。
      • 用途を考慮して、摩耗強さの大きいポリエステル裏地なども検討する。
      ポリエステル中わた仕様のブルゾンで、中わたが裏地側に吹き出した。
      • 裏地と中わたとの組み合わせが適正でなかった。
      • 中わたの樹脂量の違い、裏地の通気性の程度によって、わたの吹き出しが発生する。
      • 事前に、採用が予定される裏地と中わたで、実用的な中わた吹き出し試験(バイリーン法)を実施する。 (詳細はニッセンケン品質評価センターにお問い合わせください。)
      スカートのポリエステル裏地が、滑脱しパンクした。
      • 生地要因では、密度が粗い、柔軟加工の過多など、もともと滑脱しやすい裏地であった。
      • 縫製仕様では、縫い代がもともと浅かった。
      • 生地端がほつれ防止のロック仕様でなかった。
      • JIS L 1096の滑脱抵抗力試験を実施し、裏地として適正な生地を採用する。
      • 縫い代は充分設定し、生地端はほつれ防止のロック仕様とする。
      • タイトなシルエットは裏地の縫い目に負荷がかかるので注意すること。


  3. ファスナー
     ファスナーは務歯むし(エレメント)を植え込んだ布テープをスライダで開封する「スライドファスナー」と、パイルを利用した離着自由の「面ファスナー」に分けられます。

    表8 ファスナーの種類
    ファスナーのタイプ説明
    スライドファスナー務歯(エレメント)を植え込んだ布テープをスライダで開封するタイプ。YKK(株)製が大手メーカーとして有名である。
    面ファスナーパイルを利用したタイプ。商標として、ベルクロ®、マジックテープ®などがある。


    1. スライドファスナー
      (1)スライドファスナーの種類
       スライドファスナーは、務歯の材質により「金属ファスナー」と「樹脂ファスナー」の2種類に分類されます。

      表9 スライドファスナーの種類
      種類特徴用途
      金属ファスナー銅、亜鉛、ニッケルの合金やアルミ合金などが使用される。
      • 強度や耐蝕性にも優れているため、衣料品だけでなく、カバンや産業資材にも使用されている。
      • 衣料品では、ジーンズにも使用される。
      樹脂ファスナーコイルファスナー、射出成型ファスナー(ビスロン)などがある。表10 参照のこと


      図4 金属ファスナー

      図4 金属ファスナー

      図5 樹脂ファスナー(コイルファスナー)

      図5 樹脂ファスナー(コイルファスナー)


      図6 樹脂ファスナー(射出成型ファスナー)
      図6 樹脂ファスナー(射出成型ファスナー)



       表10は、樹脂ファスナーのコイルファスナーと射出成型ファスナーについて説明しています。

      表10 樹脂ファスナーの種類
      特徴用途
      コイルファスナー
      • コイルファスナーは、コイル状のエレメントをテープ上にのせて縫製したファスナーである。
      • ファスナーの裏面はテープで平らであり、内容物に対する損傷の恐れがなく、スライダが薄いものを挟み込まないようになっている。
      • コイルファスナーには、実用性を考慮した強度が確保されている。
      • 軽量で、薄く、しなやかでソフトタッチである。
      • ワンピース、子供服、ニットウェア、セーター、座布団カバー、布団カバー、ブーツ、スラックス、各種バッグ、ファンデーション、各種スポーツウエア、ベビー衣料など、幅広く使用される。
      • 製品表面でファスナーの務歯が見えず、縫い目と同じシルエットを生かしているコンシールファスナーもこれに含まれる。婦人服などに使用されている。
      射出成型ファスナー
      (ビスロン)
      • 強度は金属と同じように強く、軽い。 低温に強く、水にぬれても開閉はスムーズである。
      • 鮮やかな色彩で、機能性と共にデザインポイントにもなる。耐薬品性、ドライクリーニング性にも優れる。
      • 比較的、スキーウエア、コートなどの重衣料に用いられている。
      • 各種ケース類、各種カバン類、スリーピングバッグ、手袋、ゴルフバッグ、シューズなどに使用される。
      • 魚網、オイルフェンスなど産業資材にも使用されている。


      (2)スライドファスナーの構造と材質
       スライドファスナーは、テープ、エレメント(務(む)歯(し))、スライダ(開閉部分)の3部分に大別できます。
      スライダの素材は、主に亜鉛合金、銅合金、鉄ステンレスのほか、樹脂などが使用されています。種類は、サイズ、材質、ロック機能、引手形状、表面処理によって分類されます。また、一般的にロック機能によっても分類されています。

      図7 スライドファスナーの構造例
      図7 スライドファスナーの構造例



      ~止水ファスナー~
       防水性が必要な衣料(レインなど)では、以前よりファスナーテープからの水の浸入が課題でした。最近では、テープ部分を樹脂コーティングした止水ファスナーが登場し、製品としての防水性を高められるようになりました。バッグ用や産業資材用にも採用されています。


      (3)スライドファスナーの規格
       スライドファスナーの規格は、JIS S 3015「スライドファスナー」で定められています。
       同規格では、チェーン横引強度、上止部縦引強度、下止部引裂強度、開部横引強度、開具箱縦引強度、スライダ総合試験、スライダ引手ねじり強度、スライダロック強度、往復開閉耐久性、しゅう動抵抗などの各試験法が定められています。

      (4)ファスナーの品質事故例と対策
       近年、ファスナーの品質向上により、ファスナー自身に起因する品質事故は減少しているようです。ここでは生地との関連や縫製に関連する事例を表11に紹介します。

      表11 ファスナーの品質事故例と対策
      事故事例原因対策
      銅合金の金属ファスナー仕様のウールブルゾンで、在庫中にファスナーのスライダや務歯が黒変していた。ウール生地を還元漂白した際、その後の酸化中和処理が不十分であったため、発生した硫化水素で銅が黒変した。ウール素材は化学構造に硫黄を有しているため、還元漂白剤などの残留等が原因で、金属ファスナーが黒変することがある。ウール素材にはこのようなリスクがあることを踏まえて、樹脂ファスナーなども検討する。
      ウインドブレーカーで、ファスナー上止め部のコイルファスナー端からコイルが飛び出して、肌を擦った。ファスナーテープカット端の縫製処理が不適切で、コイル端が飛び出していた。
      • コイル端が飛び出さないように適正な縫製を行う
      • 出荷検査時に十分検査を実施する。


    2. 面ファスナー
       一般に「マジックテープ®」や「ベルクロ®」と呼びますが、この2つの名称は商標登録されていますので、本コラムでは、「面ファスナー」として話を進めます。
       面ファスナーは、フック面とループ面が互いにかみ合ってその働きをします。衣料品に縫い付けたのち、洗濯を繰り返すと繊維くずが付着して接着力が低下することもあります。また、フックとループが同一面に混在するソフトタイプテープも市販されています。

      図8 面ファスナーの一例 (左:フック面、右:ループ面)
      図8 面ファスナーの一例 (左:フック面、右:ループ面)



      (1)面ファスナーの事故例
       面ファスナーの品質事故例を表12に紹介します。

      表12 面ファスナーの品質事故例
      事故事例原因対策
      ポリエステル加工糸使いのニットブルゾン、面ファスナー仕様の衣料で、着用や洗濯中にスナッグ現象が発生した
      • 面ファスナーのフック面が、衣料と繰り返し接触したため、スナッグが生じた。
      • 洗濯時に面ファスナーを閉めていなかったため、フック面によるスナッグが生じた。
      • 面ファスナーのフック面とループ面の配置を検討する。
      • フック面・ループ面の違いのないソフトタイプの面ファスナーを検討する。
      • 取扱い表示で、「洗濯時は面ファスナーを閉じること」と情報提供する。
      面ファスナーのあるポケットに手を突っ込むと、手の甲部が面ファスナーに擦れて痛い。手の甲部に擦れる部分に、面ファスナーのフック面が縫われていた。
      • 甲部が擦れる部分をパイル面に変更する。
      • ソフトタイプ面ファスナーに変更を検討する。


  4. ボタン
    1. ボタンの種類
       ボタンには金属、プラスチック、天然素材などがあります。
      • 金属ボタン類は生地の残留還元剤、酸化剤によって腐食する場合があるため、一般的に樹脂コーティングしていますが、塗布量が少ないと傷などがつき易く、錆が発生することがあります。
      • プラスチックボタンの色付けは、原料着色、分散染料やその他染料で染色されます。原料着色の場合は、顔料を使用しているため、特に問題はありませんが、分散染料やその他の染料で着色している場合、余剰の染料が表面に残っている場合があり、在庫中などに生地を汚染するケースがあり注意を要します。なお、ポリエステルボタンなどを分散染料で着色している場合、分散染料が生地の合成皮革表面のポリウレタンに昇華汚染するリスクがあるため、商品企画、梱包、輸送に留意する必要があります。

       素材から分類されるボタンの種類を表13に示します。多種多様の材料が使用されていることが分かります。
      表13 素材別ボタンの種類
      プラスチック
      素材
      ラクトボタン (カゼイン樹脂/牛乳タンパク質)
      熱可塑性
      樹脂
      • ナイロンボタン (ポリアミド樹脂)
      • アクリルボタン (メタクリル樹脂)
      • ABS樹脂ボタン (ABS樹脂)
      • アセチボタン (アセテート樹脂)
      熱硬化性
      樹脂
      • ポリエステルボタン (不飽和ポリエステル樹脂)
      • バイフルボタン (尿素系樹脂)
      • ユリアボタン (尿素樹脂)
      • エポキシボタン (エポキシ樹脂)
      金属
      素材
      • 真鍮ボタン(黄銅)
      • ダイカストボタン(亜鉛) 
      • メタルキャストボタン(定融合合金)
      • アルミニウムボタン
      天然
      素材
      • 貝ボタン
      • 皮ボタン
      • ナット(椰子の実)ボタン
      • 木ボタン
      • 竹ボタン
      • 骨ボタン
      • 角ボタン
      • 蹄ボタン
      その他
      • ガラスボタン
      • パール(塗装)ボタン
      • 陶磁ボタン
      • 七宝ボタン
      • 編紐ボタン
      • くるみボタン
      • 組合せボタン

      図9 ボタンの例
      図9 ボタンの例



    2. ボタンの品質事故例と対策
       ボタンの品質事故事例と対策を表14に紹介します。

      表14 ボタンの品質事故例と対策
      事故事例原因対策
      ラクトボタンを使用したワイシャツをプレス仕上げしたらボタンが割れたラクトボタンは、牛乳タンパク質のカゼインから作られている。水中に長時間放置すると強度低下しやすい性質があり、仕上げのプレス加工で破損したことが考えられる。ラクトボタンであるべき必然性がないなら、他の樹脂ボタンを検討する。
      白地に付けていた濃色のナイロンボタンから色泣きした。ナイロンボタンは、通常酸性染料で染色されるが、加工後の染色堅ろう度が低かった。品質の優れたナイロンボタンを選定すること。また、他のポリエステルボタンなども検討すること。


  5. テープ
     テープは、芯地と同様に可縫性、保形性、寸法安定性に重要なものです。その目的に対応して種々なタイプのテープがあり、正しく使い分けることが大切です。

    1. テープ使用の目的
       テープには、次のような使用目的があります。
      1. 寸法安定性 (伸びを止める)
      2. 保形性 (アームホール、襟ぐり等)
      3. 補型性 (切り込み、滑脱の補強)
      4. 可縫性 (縫い易くする)

      図10 テープ商品のイメージ一例
      図10 テープ商品のイメージ一例

    2. テープの種類
       テープの基布には、織物、編物、不織布などがあり、大別すると、仮接着タイプと永久接着タイプがあります。テープの種類を表15に紹介します。商品設計では、5.1の使用目的を充分考慮し、選定してください。

      表15 テープの種類
      種類説明
      ストレートテープ前端、肩などの伸びを止めるためのテープで、生地や不織布を縦方向に裁断したもの。
      バイヤステープ衿ぐり、袖ぐりなど、ある程度伸びを止めるためのテープで、斜め方向に裁断したもの。バイヤステープは通常45°の角度だが、ハーフバイヤスと呼ばれる傾斜が少ないテープもある。
      中打ちテープバイヤステープの中央にストレートテープを縫い付けたテープ。
      端打ちテープバイヤステープの端にストレートテープを縫いつけたテープ
      スピンテープシャツ、セーターなどの肩の部分の伸びを止めるテープ。
      ストレッチテープポリウレタン弾性糸を使用したニットテープで、伸縮生地に使用される。


    3. テープの品質事故例と対策
       テープの品質事故事例と対策を表16に紹介します。

      表16 テープの品質事故例と対策
      事故事例原因対策
      赤色の綿テープを縫い付けた白い綿ブルゾンで、雨に濡れると色泣きが発生した。赤色の綿テープの湿潤堅ろう度が低かった。特に、洗濯堅ろう度が課題と思われる。
      • 特に濃淡配色製品に使用されるテープの染色堅ろう度は事前にチェックすること。
      袖に織物製ストレッチテープを縫い目に沿って縫い付けたニットトレーニングジャージで、テープがスリップして破損した。ストレッチテープ縫着時に、ミシンのメスによってテープ端(耳)がカットされたため、テープの滑脱(スリップ)が発生した。
      • 織物製テープの中には、耳がカットされると滑脱するものがある(バイヤステープはこの限りではない)。
      • 仕様決定にあたり、テープ特性を充分把握し、縫製仕様を決定すること。


  6. ブランドネーム
     ブランドネームには、主に、(1)プリントネーム、(2)織ネームがあります。
     プリントネームは、無地の織物にブランドマークや文字を印捺します。また、織ネームは、先染め糸を使用し、特殊なコンピュータジャカード織機で柄出しをして、ブランドマークや文字を表現します。
     ネーム生地の生産方式では、細幅織機と広幅織機がありますが、最近は生産効率やコストパフォーマンスの観点から、広幅織機が主流になっています。

    表17 ブランドネームの分類
    種類方式特徴
    プリントネーム柄や文字をプリントで表現する低コストで大量生産に適している
    織ネーム柄や文字を先染め糸で表現する比較的高級感が表現できる


    図11 プリントネームの例

    図11 プリントネームの例

    図12 織ネームの例

    図12 織ネームの例



    1. ブランドネームの品質事故例と対策
       ブランドネームの品質事故事例を表18に紹介します。

      表18 ブランドネームの品質事故例
      事故事例原因対策
      在庫中に、ブランドマークの濃色部が他の淡色部に色移りした。ブランドマーク生地のポリエステルを染める分散染料が、在庫中に他の部位に昇華汚染した。分散染料は移行昇華し、他の生地を汚染する性質がある。
      • 商品袋詰め時に、たたみ方を考慮する。
      • 薄紙の使用を検討する。
      • 近年、分散染料を使用しないカチオン化(CD)ポリエステル糸を使用したネームも商品化されている。
      首回り後部とブランドマークが擦れて痛かった広幅のポリエステル生地をヒートカット加工した時、溶断端が硬くなり、着用中に首筋と擦れた。
      • 事前にネームの溶断端の硬さを確認すること。
      • 近年、溶断端をかがり縫いしたタイプも商品化されている。


      ~ネームの豆知識~
      • 「ブランド」とは、もともと家畜に焼き印を押す意味の「burned」が語源で、自分の家畜と他人の家畜を間違わないための工夫でした。今日のアパレル業界におけるブランドマーケティングでも、自社と他社のブランドをいかに差別化し商品価値を高めるかが課題であり、その意味では、今も昔もブランドの考え方は変わっていません。
      • 織ネームでは、以前はレーヨン糸が主流でしたが、現在はポリエステル糸が多用されています。


  7. 金属副資材
     アパレル製品には、ホック、フック、バックルなどの多くの金属副資材が使用されています。素材としては、鉄や銅、ニッケル、亜鉛、クロムといった金属合金などが使用されています。衣料品の用途により、強度、各種機能、耐久性、防錆性、皮膚安全性、耐家庭洗濯性、耐ドライクリーニング性などを考慮し、副資材メーカーと連携して材料選択することが大切です。金属ホックの事故例を表19に挙げます。

    表19 金属ホックの事故例
    事故事例原因対策
    子供服に取り付けられていた金属ホックが、購入後すぐに取れた。ホック取り付け工程で、ホック打ち不良が発生した。ホック取り付けは、自動機と手打ちがある。いずれもホック打ち工程の標準化と出荷前の検査の強化が必要となる。

    図13 金属ホックの部品の例
    図13 金属ホックの部品の例



  8. プラスチック副資材
     プラスチック副資材も衣料品には多く使用されています。プラスチック副資材には、バックル、スパンコール、ビーズ、ラインストーン、各種フィルムなどがあります。一口にプラスチック材料と言っても、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなど多くの樹脂が使用されています。商品設計では、求める機能や耐洗濯性を考慮し、材料を決定してください。
     例えば、スパンコールは衣料だけでなくバッグ用などにも使用され、ベースのフィルムにはポリエステルタイプだけでなく、ポリ塩化ビニルタイプもあります。衣料用にポリ塩化ビニルタイプを採用すると、ドライクリーニングは不可となりますが、ポリエステルタイプではドライクリーニングは可能です。
    (第43回アパレル散歩道「6.商業洗濯の事故例」を参照のこと)

    図14 スパンコールの例
    図14 スパンコールの例



  9. 副資材の品質管理
     アパレルメーカーの品質管理は、主素材の多様化もあり、主素材中心になりがちで、副資材の品質管理は納入元である副資材メーカーや商社などに任せる傾向があったかと思います。もちろん、結果が問題ないのであればそれでよいのですが、今後、海外副資材の採用増加や、安全関連ではサイレントチェンジ()による副資材トラブルの発生などを考えますと、アパレルメーカーもより積極的に副資材の品質管理を強化する必要があります。
    サイレントチェンジとは、製品の製造過程で、材料の供給者が発注者の許可なく、勝手に製品の仕様や品質を変更して納品すること。


    1. 副資材の品質管理対策
      (1)副資材品質基準の作成
       アパレルメーカー社内に「主素材の品質基準があるが、副資材の品質基準がない」場合、一度、副資材の品質基準も作成されることをお勧めします。「副資材の品質管理は甘くてもよい」という発想は非現実的です。自社の副資材のあるべき品質と副資材メーカー(商社)の品質上の実力を擦り合わせることにより、アパレルメーカーと副資材メーカーが品質情報を共有し、品質が確認された副資材を投入することが望ましいです。

      (2)副資材の安全性
       副資材に求められる機能には、機能性、耐久性、消費性能、コストパフォーマンスなどがありますが、中でも安全性は重要です。人体への化学刺激、物理刺激などのリスクを最小化できるように、関係データを事前に取得保管するなど、副資材メーカーの協力を頂けるシステムを構築することが求められます。


(次回のアパレル散歩道 / 1月1日発行)

次回は、「ケーススタディ④ 外観変化」を取り上げます。

コラム : アパレル散歩道48
~品質事故を分析して原因と対策を考えよう~
テーマ : ケーススタディ④ ~外観変化~


発行元:一般財団法人ニッセンケン品質評価センター 事業推進室 マーケティンググループ
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp     URL:https://nissenken.or.jp

※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

Profile : 清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)

清嶋 展弘 (きよしま のぶひろ)

43年間株式会社デサントに勤務し、各種スポーツウェアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業。趣味は27年間続けているマラソンで、これまで296回の大会に参加。



社外経歴
日本繊維技術士センター理事 技術士(繊維)
京都女子大学・大阪樟蔭女子大学 非常勤講師
日本衣料管理協会理事 TES会西日本支部元代表幹事
(一財)日本繊維製品消費科学会 元副会長

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