思いつきラボ

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No. 38 「染料プリントと顔料プリントの見分け方は…」

2015/04/15

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2015年4月15日時点の内容です。

2015.1.30号に 製品プリントの種類 について紹介しはじめたのですが、文章だけでは伝わりにくいと思って画像も入れるようにしたいと書いたものの、ほとんどメーカー名やブランド名が入ったものになってしまい、コラムには勝手に使えないことに気がつきました。社内の勉強会であれば何の問題もないところですが、ホームページがどなたにでも見られることを考えれば、紹介するのもお許しを得ないといけません。

それならば作ってしまったほうが比較しやすいものができるし、いい機会なので製品プリントの見本帳を作成するということで作業しはじめました。もともとが物づくりの人間なので、準備するのも苦にはならず、10種類以上のものは用意できると思っています。サンプルができ上がりましたらこの思いつきラボのコラムで紹介していきたいと思っていますので楽しみにしていてください。

その前に「染料プリントと顔料プリントの見分け方を教えてほしい」という質問がありましたので、今回のコラムで取り上げたいと思います。

“染料捺染プリント”と“顔料捺染プリント”

“染料捺染プリントと顔料捺染プリント” を紹介したところ、言葉では理解できるものの実際の生地では判別できないものが多い、というお話をいただきました。正直、すべてのプリント生地が染料か顔料かを調べるには手間もかかりますので、基本的な見分け方を紹介しておきます。

まず 2つの画像を見比べてもらうと 2つの生地の違いが判るとおもいますが(・・・と書いたらパソコンによっては判別しにくいこともありますと指摘を受けましたので、目を凝らして見てください)片方は生地裏がシロでもう一方はベージュになっています。

表目だけでは一見しても違いが判り難いですが、裏目を見ると違いがでてきます。これらは両方とも生地プリントですが、それぞれどういう作り方をしているかと言いますと、画像 A (裏がシロ)は表目のグランド部分のベージュも柄の部分も顔料プリントで色付けをしていて、画像 B (裏もベージュ)はベージュで生地染めしたものに柄の部分だけ顔料でプリントしたものです。柄の部分はどちらも同じ柄の版を使用しています。すなわちベースになっているベージュの部分が染料で染めたか顔料でプリントしたかの違いによります。

染料を使えば、染料は水溶性なので生地に浸透していき生地裏も同時に染まっていきますが、顔料の場合は生地の上にのっただけの状態になり生地裏にまでは色が浸透しないということになります。生地裏まで色が浸透していれば染料を使用したもので、生地裏まで色が浸透していないものは顔料ということが基本となります。ただ実際には浸透しているかしていないかの微妙なものも多くありますので、見極めまでには数をこなすことも必要なことになります。

次に文章だけでは実感がないですが、顔料と染料では生地風合いが違います。言葉で言えば顔料は硬い感じがして 染料は柔らかい風合いになります。これも糸質や仕上げ方法によって異なってきますので、見極めには経験値も必要になってきます。技術の進歩でかなり風合いの柔らかい顔料プリントもできるようになってはいますが、比較すれば染料との違いは判ると思います。生地裏を見ることと風合いの違いで基本的には顔料と染料の違いを判別することができるのです。プリント生地が手元にきたときは、顔料か染料かの判断をしてみてください。意識してみると判断ができるようになってきますので、練習がてら試してみてください。

思いやりあふれる日本のもの作り

さて、今回紹介した生地についても触れておきたいのですが、なぜこのように同じ柄の生地を 2種類も作っているのかと疑問に思われる方もいるかと思いますが、この生地は両方ともサンプル反ではなく本生産の生地なのです。なかなかこのように同じ柄で作り方を変えることも珍しいので、製造している生地屋さんに了解をもらっていただいてきました。この生地はベビー肌着用の生地なのですが、ベビーでも新生児用の生地と数ヶ月経過のベビー用の生地と使い分けているとのことなのです。

ベビーの中でも生まれたての新生児は肌もとくにデリケートなので、極力肌にやさしい製品を作ろうと考えたときに、肌に触れる部分(生地裏)はできるだけ加工を施していないものの方が良いと判断したとのことです。裏はシロ(生成)が望ましいということで表地のベージュ部分を顔料プリントにしているということだそうです。染めたものよりシロ生地のほうが肌にやさしいという考え方になりたっているので、表地は全て顔料プリントで色付けをしているということになったのです。少し時間の経過したベビーは新生児のときよりは肌が安定して動きも活発になるので、動きやすい柔らかな風合いを優先してベージュに染めたものにプリントを施したものを製品にしているとのことなのです。

そこまで考えて物づくりをしている会社が日本にはあるのです。日本製のこだわりを感じるいい話です。筆者かかわった生地ではありませんがなぜか誇らしげに感じてしまいます。今回は染料と顔料の見分け方の違いがテーマだったのですが あわせて日本の物づくりの素晴らしい部分も紹介できて嬉しい原稿となりました。

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