2021/02/25
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おさえておきたい基礎知識
2022/03/30
だんだんと暖かくなってきて、もうすぐ4月です。そして4月といえば、新入社員をお迎えする大事な年度初めの月であり、各企業もいま新入社員研修の準備でお忙しい中かと思います。当財団もご多分にもれず、ですが。
さて、今回は繊維・ファッション産業のみならず、あらゆる業界に関係している“JIS”にスポットを当て「おさえておきたい」情報をお届けします。
またメインの情報として、頻繁に当ウェブサイトを閲覧していただいている繊維・ファッション産業の皆様向けに、2021年 繊維関係JIS動向のまとめについてお伝えします。
皆さんの会社の新入社員研修の題材にいかがでしょうか!?
日本産業規格、通称“JIS”は「Japanese Industrial Standards」の各単語の頭文字をとったものです。発音は“ジス”です。産業製品に関する規格や測定法・試験方法などを定める日本の国家規格です。以前は日本工業規格とよばれていましたが、法律改正により2019年7月から日本産業規格に名称変更されています。
ここでJISについて分かりやすく説明されているサイトをご紹介します。
ポイントは、
JISはすごいんです。乾電池を例にとってみましょう。
じつは電池のサイズ、これもJIS規格になっています。番号はJIS C 8515です。
くまなく市場調査をしたわけではありませんが、電気店で売っている電池のサイズは(ほぼ)同じであり、その電池で100%電気製品が使えるようになっているはずです。
1億2000万人が100%共通で使えるなんて、よくよく考えるとなんとも驚きです。
ところで、電池のサイズはあえて「(ほぼ)同じ」としました。例えば単3形のサイズについてJIS C 8515で見てみると、「長さ49.2~50.5mm、直径13.5~14.5mm」とされています。サイズの許容範囲は微妙に幅があるようです。
ここでちょっと日本から海外に出てみましょう。
日本で売られている電池は海外でつかえるのでしょうか?
― はい、ほぼ使えます。
これはさらに驚きです。世界の人口はというと…。
その背景には、国際電気標準会議(IEC)の存在があります。
ものすごくはしょりますと、世界各国の代表で構成されるIECが電池のサイズをIEC 60086という国際規格で定めています。そして、この規格に準じてJIS C 8515が定められています。
言わずもがなですが、日本(JIS)だけではなく、各国も国家規格やそれに近い制度があり、IEC60086に準じた自国の規格を定めて電池を作っているので、電池の大きさはほぼ世界共通、ということになります。
なお代表的な国際規格には、皆さんも見聞きしたことがあるISOがあります。International Organization for Standardization(国際標準化機構)が定める世界的な規格です。
当財団が事業展開をする中国では、国家規格である“GB”(中国人民共和国標準化法)があります。日本のJISはあくまで任意の規格ですが、GBは日本でいうところの法律に近いニュアンスとなります。
国によって、国家規格のニュアンスは微妙に違うようです。
こぼれ話を1つ。日本のJISは任意、と書きましたが、思い出されるのは1980年代にピークを迎えたVHS対ベータマックスのいわゆる“ビデオ戦争”です。メーカーの各規格をめぐって、消費者も困惑した一例と言えます。
> ビデオ戦争 ウィキペディアより
そして当財団が提供する試験サービスの多くもJISによって試験の名称から使う機器、実施時間、試験環境など細かい内容が決められています。例えばJISで試験方法を定めることで、日本、中国、ベトナム、インド、バングラデシュと、どの国のニッセンケンラボで試験をしても、基本的に同様の試験結果を得ることができるというわけです。
またJISだけではなく、ISOやGBをはじめ、様々な国家規格に対応する試験も実施しています。
それでは本題です。
2021年に制定及び改定された繊維関連規格であるJIS L について一覧で紹介します。
制定件数2、改訂件数9となっています。規格番号は下表よりご確認ください。
なおJISの文字の次にある「L」は、繊維関係の規格であることを表しています。
①2021年に新規制定されたJIS L 一覧
No 規格番号 規格名 制定日
1 L 1952-1 生地の吸湿発熱性試験方法 ー 第1部:最大吸湿発熱温度測定 2021.3.22
2 L 1952-2 生地の吸湿発熱性試験方法 ー 第2部:熱保持指数測定法 2021.3.22
②2021年に改訂されたJIS L一覧
No 規格番号 規格名 改訂日
1 L 0841 日光に対する染色堅ろう度試験方法 2021.12.20
2 L 0842 紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法 2021.12.20
3 L 1013 化学繊維フィラメント糸試験方法 2021.3.22
4 L 1015 化学繊維ステープル試験方法 2021.3.22
5 L 1058 織物及び編物のスナッグ試験方法 2021.8.20
6 L 1099 繊維製品の透湿度試験方法 2021.8.20
7 L 4404 織じゅうたん 2021.2.22
8 L 4405 タフテッドカーペット 2021.2.22
9 L 4406 タイルカーペット 2021.2.22
L 0842、L 1058、L 1099はよく耳にする試験規格の番号だと思います。試験依頼も比較的多く受け付けています。これらについて、新規制定のL 1952とともに、少し詳しく解説します。
新規制定されたJIS L 1952の2項目は生地に関する吸湿発熱性の試験規格です。 下表で試験の特徴や、試験に関するよくある質問とその回答をまとめました。ご参考にしてください。
L 1952-1 | 生地の吸湿発熱性試験方法 – 第1部:最大吸湿発熱温度測定 試験の目的:生地の片面(肌面)に供給する空気を低湿から高湿に変化させたときに生じる最大吸湿発熱量を測定する。 |
どのような試験ですか? ISO 18782と同様の試験です。試料を20℃、RH40%の低湿度の環境下からRH90%の高湿度に急激に変化させた時の生地の加湿面の温度変化を測定します。 |
どのような商品に適している試験ですか? インナ-、スポ-ツウェアなどの衣料品に用いる生地。その他吸湿発熱性能を謳った製品。 |
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L 1952-2 | 生地の吸湿発熱性試験方法 – 第2部:熱保持指数測定法 試験の目的:最大吸湿発熱温度到達後の吸湿発熱温度保持性を概観できる指標となる熱保持指数を測定する。 |
どのような試験ですか? 最大吸湿発熱温度に達した後、温度減衰曲線から半減期までの時間を求め、範囲で囲まれる面積を算出して熱保持指数として評価します。 |
どのような商品に適している試験ですか? インナ-、スポ-ツウェアなどの衣料品に用いる生地。 その他吸湿発熱性能を謳った製品。 |
9規格のJIS Lの改訂がありましたが、ここでは試験依頼の多い3規格に絞り、改訂点及び改訂に伴って当財団に多くの寄せられた質問をピックアップしてご紹介します。
L 0842 | 紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法 試験の目的:染色した繊維製品の紫外線に対する染色堅ろう度を評価する |
主な改定点: 【不透明覆い及び厚紙】厚さ:約0.5㎜→約1㎜以下に変更 【第3露光法】 目的とするブル-スケ-ルよりも1級低いブル-スケ-ルを使用することを要求事項から許容事項に変更された。 |
今回の改訂点で試験結果にどんな影響がありますか? 試験結果に影響はありません。 |
第3露光法とは何ですか? 繊維業界ではよく用いられている方法です。 試験片が目的とするブル-スケ-ルと同等の耐光堅ろう度を持っているか試験します。 |
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ブルースケールとは何ですか? 耐光堅牢度試験で標準退色を確認するために使用する生地です。 |
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なぜ今まで1級低いブルースケールを使用していたのですか? 目的のブルースケ-ルの変退色の具合を確認するために1級低いブル-スケ-ルを使用していました。 |
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L 1058 | 織物及び編物のスナッグ試験方法 試験の目的:引掛け作用により、生地表面から糸が飛び出したり、引きつれが発生する程度を評価する。 |
主な改定点: 【A法(ICI形メース試験機法)】 メースの釘及びフェルトの使用限度について、新たな管理方法及び使用限度が新たに規定された。試験装置の各部の寸法値を規定(試験結果に影響を与えない範囲)。 【D法(ICI形ピリング試験機法)】 D-1法:研磨布及びサーフェイスの使用限度を規定した。 |
A法とD法の違いを教えてください。 A法(ICI形メース試験機法)は、メ-スと呼ばれるスパイクボールを試験片上に置き、試験片を100回転させてスナッグの発生程度を等級判定します。 D法はD-1~4法まで4種類の試験方法が規定されています。 さらに、D-1法にサーフェイスと研磨布を用いる方法があり、D-1法の研磨布を使用する方法がよく使われています。 D-1法(ダメ-ジ棒法)は、硬質塩化ビニル菅に研磨布を巻き付けたものを、ピリングBOX内に斜めに渡し、ゴム管に巻き付けた試料と共に1時間運転し、スナッグの発生程度を等級判定します。 |
D法の変更点を詳しく教えてください。 主な改正点は次の通りです。 D-1法 サーフェイスの使用限度を規定 D-2法 ピンの使用限度を規定 D-3法 金のこの使用限度を規定 各試験装置の使用限度が規定されました。 |
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試験結果にはどのような影響がありますか? 試験結果に影響ありません。 |
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D法の研磨布とはどんなものですか? 研磨材を塗布した布です。 |
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D法の研磨布及びサーフェイスの使用限度は今まで規定がなかったのですか? メ-スの釘が損傷したり、フェルトが摩耗した場合に取り替える大まかな規定はありましたが、使用時間による規定はありませんでした。 |
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L 1099 | 繊維製品の透湿度試験方法 試験の目的:規定の温度及び湿度において、繊維製品を透過する水蒸気を測定する。 |
主な改訂点: 【A-1法】 適用範囲に、「極端に薄地のもの、極端に密度の粗いものなどの通気性の高いものには適さない」と追記された。 【B-3法】 試験の使用実績がないことから削除された。 |
A-1法の適用範囲に、条件が追記されたのはなぜですか? 透湿防水性をもつ繊維製品の透湿性を評価することが本来の目的の試験です。通気性の高い生地などは、試験の目的に沿わないため、適用範囲に条件が追加されました。(JIS L 1099の解説より) |
今後、極端に薄地のもの、極端に密度の粗いものなど通気性の高いものはどう試験すれば良いのですか? 薄地の生地であっても透湿防水フィルムをラミネ-トした気生地などは測定できます。 |
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A-1法とB-3法との違いを教えてください。 B-3法は、B-1法のもととなったISO規格と同じです。よって、A-1法とB-3法の違いは、A-1法とB-1法の違いとほぼ一緒です。 |
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