2022/01/15
第34回 : ものつくり原点回帰シリーズ ~繊維 その1~
アパレル散歩道
2020/08/15
2020.8.15
はじめまして。清嶋展弘(きよしまのぶひろ)です。このたび、一般財団法人ニッセンケン品質評価センターとご縁を頂き、新コラム「アパレル散歩道」を連載させていただくことになりました。同センターのホームページでは、同センターの竹中直氏が「おもいつきラボ」を163回にわたり掲載されていましたが、私もアパレル側の視点から色々な情報を発信したいと思います。どうぞよろしくお願いします。
1.自己紹介
少し自己紹介をさせていただきます。表1の「私の履歴書」にありますように、私は43年間株式会社デサントに勤務し、その間、各種スポーツウェアの企画開発、機能性評価、品質基準作成、品質管理などを担当しました。退職後は、技術士(繊維)事務所を開業しています。趣味は27年間続けているマラソンで、これまで296回の大会に参加しましたが、コロナ感染問題で本年3月の京都マラソンを最後に大会参加はありません。
勤務していたデサントについて少し紹介します。デサントはスポーツウェア専業メーカーで、「デサント」「アリーナ」「アンブロ」「ルコック」「マーモット」「マンシングウェア」などのブランドを保有し、各種スポーツウェアを企画製造販売していました。スポーツウェアには、紳士や婦人などの衣料品にはない特性があります。表2にスポーツウェアの着用環境を示しています。なかなか厳しい使用環境であることがお分かりと思います。その結果、スポーツウェアは他の衣料品に比較して、品質基準は厳しく設定しているのが現状です。このあたりの詳細は、今後のコラムでご紹介できればと思っています。
表1.私の履歴書
◇経歴
大阪市出身 昭和51年 京都工芸繊維大学 繊維化学科卒業 |
同年 株式会社デサント入社 スポーツウェアの企画開発、性能評価、品質管理業務を担当 |
平成31年3月退職 (部長役) |
現在、清嶋技術士事務所代表 |
京都女子大学、大阪樟蔭女子大学 非常勤講師 |
◇社外経歴
(一財)日本繊維製品消費科学会 元副会長 |
日本繊維技術士センター執行役員 技術士(繊維) |
文部科学省大学間連携共同教育事業評価委員 |
日本衣料管理協会常任委員 TES会西日本支部代表幹事 |
表2.スポーツウェアの着用環境
1. 洗濯頻度が多い |
2. 屋外で紫外線を浴び る機会多い |
3. 汗の影響が大きい |
4. 雨、雪、プールなど濡れたまま着用放置 |
5. 塩素、塩水暴露機会多い |
6. スライディング、タックルのダメージ |
7. 寒冷、酷暑、高温多湿での使用 |
8. チーム用途/継続品番 |
9. 濃淡配色、在庫 |
2.これからのコラムの概要
コラム掲載は、2回/月を予定しています。 当面20回程度は、「繊維製品の品質苦情はなぜなくならないのか」をサブテーマにしてコラムを進めていきます。そのあとは、「ものつくり(材料編)」「ものつくり(設計製造編)」「アパレル業界編」などを予定しています。よろしくお願いします。
3.繊維製品の品質苦情はなぜなくならないのか
3.1 品質事故原因について
この大きな命題は、アパレル製品に携わっている方は、一度ならず疑問に感じられたことと思います。
私も40数年スポーツウェアの品質管理業務に携わってきましたが、ある製品で同様の品質事故が複数発生すると、まず原因を分析して原因を絞り込むことが大切です。原因が変われば次の対策が打てるわけです。
表3.品質事故の原因分類
品質事故の原因は、表3のように3つに分類されます。原因が明確に絞り込めれば、今後同様の事故発生防止のために、必要な対策を取らなければなりません。原因分類①であれば、アパレルメーカー社内の商品企画部門にフィードバックして、内容によりマーチャンダイザー、デザイナー、パタンナーに改善を要請することが大切です。場合によっては、品質管理や品質保証部門では、品質基準を修正する、新らたな品質管理項目を導入することなどもありうると思います。
原因分類②は、生地メーカーで生地品質が本番で低下したり、縫製工場の本生産における縫製不良や規格不良などが原因として挙げられます。対策は、生地メーカーや縫製工場に対して、不良発生の未然防止策を具体的に文書化して提出していただくなどの対策が考えられます。
原因分類③は、次の3つのケースが考えられます。
a. アパレルメーカーからの情報ミス
b. ラベルメーカーでの印刷ミス
c. 縫製工場での取り付けミス
担当者も人間であり、ケアレスミスもあると思います。・・・・。
3.2 これからの品質管理の課題
前項の3.1で記載の通り、品質事故対策をできる限り実施したつもりでも、なかなか品質事故や品質苦情は減りません。アパレル業界でも、コロナ感染の影響もあり、しばらくは慌ただしい日々が続くものと思っています。品質事故が減らない要素をいくつか挙げてみました。
①生産期間の短縮化(製品発注の後ろ倒しと納品の前倒し化)による時間的余裕の減少
②海外生産の増大による品質情報の不確定さの増大、品質事故リスクの増大
③多品種小ロット生産のさらなる進行
④素材のソフト化、軽量化、ストレッチ化による物性の低下、また縫製の難しい素材の増加
⑤製品のカジュアル化による縫製仕様の簡素化
⑥対面販売ではない「ネット販売」の増加
以上のことが考えられますが、皆さんはどう思われますか。
詳細は今後のコラムで紹介できればと思っています。
4.次回コラムのご案内
コラム : アパレル散歩道②
~繊維製品の品質苦情はなぜなくならないのか~
テーマ : アパレルメーカーのものつくり
発行元
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター マーケティンググループ 企画広報課
E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp URL:https://nissenken.or.jp
※当コラムの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
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