思いつきラボ

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No. 160 「“難燃”“防炎”“不燃”の区別がわかりにくい…」

2020/05/15

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2020年5月15日時点の内容です。

                 

新型ウィルスも終息する気配はありませんが 社会経済に対するガマンも限界を迎えつつあるとの判断で 緊急事態宣言を段階的に解除とする動きになってきました。終息がはっきりと見えてるわけではありませんので これまで通り慎重な行動が必要ですが 少しづつでも平常に戻れるような兆しになってるようです。また ややこしい新型ウィルスの話題からになってしまいましたが 今回のテーマは言葉の意味がややこしい“難燃”“防炎”“不燃”のお話しになります。

                   

漢字で判断すれば「難燃:燃え難い」「防炎:炎を防ぐ」「不燃:燃えず(不)」となるのでなんとなく理解できてしまいますが ちゃんと区分しようとすると線引きが難しくなっています。普段の会話で燃えるゴミと燃えないゴミは分けてくださいと言われながら 生ごみ(燃えるゴミ)をレジ袋(燃えないゴミ)に入れて捨てることに抵抗を感じなくなっています。「レジ袋は燃えるゴミですか?燃えないゴミですか?」と役所に尋ねると「汚れてない袋は燃えないゴミで汚れがとれない袋は燃えるゴミに出してください」という答えが返ってきます。自治体によって解釈は違いますが燃えるゴミと燃えないゴミですら区分がはっきりとしなくなっています。

                  

「可燃:燃える 不燃:燃えない」だけでも具体的な物品をあてはめるとどちらでもいいことが起きてしまっています。これに“難燃”“防炎”と物品で考えるとさらにややこしくなってしまいます。燃えるゴミと燃えないゴミの話をしてしまったので ついでに話を逸(そ)らせておきますが燃えるゴミと燃えないゴミの処理は焼却温度の違いがあります。プラスティックなどを含む燃えないゴミはダイオキシン類の発生の恐れがあるので 廃棄焼却温度を800℃以上として完全燃焼させてダイオキシン類の発生を防いでいます。紙ゴミや生ごみをちゃんと区分できるものは400℃以上あれば完全燃焼できるので 焼却燃料の使用量が大きな違いとなり ゴミ処理費用も大幅に削減できます。やはり地球環境のことを考えればゴミの分別は大切ということです。

法律に定められた用語の定義・・・

本題の“難燃”“防炎”“不燃”の説明に入りますが 火災を起こさないように「消防法 防炎規制」と「建築基準法 防火規定」という法律に定められたものがあり用語の定義があります。繊維業界ではあまりお目に掛からない建築基準法の「防火規定」から説明します。用語として出てくるのは“不燃材料”“準不燃材料”“難燃材料”と材料の規定になっています。

               

不燃材料 ・・・ 無機質または金属質の材料から成り 建築基準法第2条
         第九号 施行令第108条の2に記されている
         20分間下記の条件を満たすこと
          ・避難上有害な煙 ガスを発生しないこと
          ・燃焼しないこと
          ・防火上有害な変形 溶融 き裂その他損傷を
           生じないこと

準不燃材料・・・ 同上で
         10分間条件を満たすこと

難燃材料 ・・・ 同上で
         5分間条件を満たすこと

      

         

となっていて コンクリート レンガ 瓦などが材料としてあげられています。素材よりもどれだけの時間燃焼しないかで 不燃 準不燃 難燃と分けられています。このような用語の使い方があるということを認識しておいてください。

              

次に消防法の「防炎規制」の説明をします。消防法第8条の3に防炎規制は記載されています。

   高層建築物若しくは地下街又は劇場、キャバレー、旅館、病院
   その他政令で定める防火対象物において使用する防炎対象物品
   (どん帳、カーテン、展示用合板その他これらに類する物品で
   政令で定めるものをいう、以下同じ。)は、政令で定める基準
   以上の防炎性能を有するものでなければならない。

高層建築物や人が多く集まる施設で使われる繊維製品などは火災発生や拡大を防ぐために防炎性能を有する物を使いなさいという決め事になっています。防炎の対象物は カーテン 布製のブラインド 暗幕 じゅうたんなどが指定となっていてそれぞれの種類別に基準が定められています。その基準となるのが

                    

  残炎時間 ・・・炎を上げて燃える状態が収まるまでの経過時間
  残じん時間・・・炎を上げずに燃える状態が収まるまでの経過時間
  炭化面積 ・・・燃える状態が収まるまでの時間内に炭化する面積
  炭化長  ・・・燃える状態が収まるまでの時間内に炭化する長さ
  接炎回数 ・・・溶融し尽くすまでに必要な炎を接する回数

                  

これらの試験を基準とすることが消防法施行規則第4条の3に記載されています。防炎の意味合いは 「炎を当てると燃えますが 炎を離すと燃え広がらない“自己消火性”という性能」ということになります。

                       

建築基準法と消防法の“難燃”“防炎”“不燃”の説明をしてきましたが繊維用語としての規定は「JIS L 0207 繊維用語(染色加工部分)」の機能加工の項目に記載があります。

             

    用語番号6032 難燃加工(flame resistant finish)
      繊維を着火又は延焼しにくくする加工。引火の危険性の
      ある作業服、カーテン、いす張り地、老人介護衣料、寝
      具などに施される。

    用語番号6040 防炎加工(flame proof finish)
      繊維に炎が接したとき、燃え広がるのを防ぐ加工。繊維
      製品の種類、用途及び使用場所によって消防法、建築基
      準法などによる難燃規制がある。

                   

という用語定義になっています。防炎加工の説明に難燃規制という単語が
出てくるのでさらにややこしくなっています。繊維業界での解釈としては

                

    難燃とは 着火又は延焼しにくいこと
    防炎とは 炎が接したときに燃え広がらないこと

                       

という意味合いになります。どちらも“不燃:燃えない”ことではないということになります。繊維原料自体を燃えにくくするものを“難燃”とし燃えやすいものを燃えにくい加工を施したものを“防炎”と区分することもあります。順を追って説明をしましたが スッキリとはしない理解になってるかもしれません。同一の規定の中に“難燃”“防炎”“不燃”の定義があれば理解しやすいのですが 建築基準法には“難燃”と“不燃”という単語のみで“防炎”は出てきません。消防法には“防炎”という表現になっているので“難燃”“不燃”との対比が明確にできません。繊維業界では“難燃”“防炎”を機能加工の項目として規定していますが どちらも燃えにくいものという説明になっています。

                

一般会話での使い方がやはりシンプルで理解しやすいかもしれません。

    可燃・・・燃えるもの
    難燃・・・燃えにくいもの
    防炎・・・炎が広がらないもの
    不燃・・・燃えないもの

基準とか規制として考えると明確な意味を理解したくなりますが もともとの比較自体が明瞭ではないということを知識として持っておくことが必要なのかもしれません。

                        

原稿担当:竹中 直(チョク)

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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
竹中 直(チョク)

E-mail: pr-contact@nissenken.or.jp

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