2017/07/15
No. 92 「九州豪雨をもたらしたのは「線状降水帯」って…」
思いつきラボ
2019/11/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2019年11月15日時点の内容です。
繊維業界では筆者の年代であれば、繊維用語として普段の会話でも使っている言葉なのですが、ひょんなことから「ゾッキ」という言葉は若い人達には通じないのでは・・・という話になりました。周りの若手たちに聞いてみるとみんな知らないという答えが返ってきます。これも時代の流れで耳にしなくなったという話になっていたのですが・・・筆者の認識とはちょっと違う解釈をしている仲間が・・・ニット生地の担当だった入社間もない頃に教わった「ゾッキ」という言葉は“ゾッキ編み”という分類で、ニット業界だけの用語と思っていたら・・・織物業界でも「ゾッキ」は当たり前に使いますよとの返事が・・・。
これは一度整理しておく必要が・・・という訳で今回のテーマは「ゾッキ」です。
先ほど書いたように、ニット業界では昭和40年代中頃から大ブームになったパンティーストッキング業界の編み方として広まったと言われていて、当時のストッキングの編み方には“ゾッキ編み”と“交編”があり、ニット業界の中でもストッキングの編機でのみ使われる言葉と認識していました。このころのパンティーストッキングは
・ナイロン糸のみで編んだもの
・ポリウレタンをナイロンでカバーリングした糸のみで編んだもの
・上記のナイロン糸とカバーリング糸と2種類で編んだもの
の3通りがありました。
この中で1種類だけの糸で編んだものを「ゾッキ編み」と呼び、2種類以上の糸で編み立てたものを「交編」と呼んでいました。
ということで、筆者たちは「ゾッキ編み」というのはストッキング業界だけの言葉として覚えていました。ところが織物業界でも「ゾッキ」という言葉は単一の糸で織られたもの、すなわちたて糸もよこ糸も同じ糸で織られた生地というときには当たり前に使うということらしいのです。筆者がニット担当だっただけで織物業界でも使われていたとは・・・社会人45年目の“初耳”となりました。
いつも使っている繊維事典には“ゾッキ”はニット用語として掲載されていました。担当した業界や会社によって用語は意味が異なることもあるので「ゾッキ」も明確な使い方がされてないようです。
といっても、「ゾッキ」の意味は単一の素材ということでは統一の認識になっています。単一の素材ということは、例えば ナイロン 85% ポリウレタン 15% のSCY糸(シングル カバーリング ヤーン)だけで編んだものも「ゾッキ編み」と呼ぶので、単一素材が組成が100%というわけではないのです。「ゾッキ編み」といっても、ナイロン100%もあれば、ナイロン85% ポリウレタン15%のものもあるということです。ナイロン糸とSCY糸を1本づつ交互に編んだものが“交編”となります。・・・と、まとめたいところでしたが、織物業界ではストッキングの編機が輸入される前から使っているという意見が・・・ニット業界が先と思っている筆者にはまたまた初めての情報で・・・これは簡単には結論が出せなくなってしまいました。
では、ということで、調べられるところまでやってみようとなりました。
早速、今世間で流行っているインターネットなるもので検索すると(とうの昔から利用されています)、いきなり「ゾッキ」の語源となる文面がいくつかヒットしました。恐るべし“今流行り”のインターネットの情報力(だから“今流行り”は余計です)・・・
その中で気になった説明を見つけたのですが、語源は北関東の方言が有力で、麦だけで炊いたご飯を「麦飯ゾッキ」などと言っていて、そこから北関東地方の桐生地域(現 群馬県桐生市)が絹織物の機織産地(はたおりさんち)だったことから、絹100%の織物を「絹ゾッキ」というようになってしまった。という説明がありました。・・・筆者の思い込み知識がさらに崩れていきます。
北関東地方の方言ということなので、全国方言辞典を調べてみると
~ぞっき(群馬の方言)
意味 :~だけ。~のみ。
文章例:「昔は、麦ぞっきのご飯もくったもんだ」
(昔は 麦だけのご飯も食べたものだ)
とありました。
「ゾッキ」は日本語で群馬県あたりの方言という説明がしっかりと書かれていました。筆者のニット業界がパンティーストッキングの編機の輸入後に「ゾッキ」という言葉は広まったという知識は誤りで、むしろ絹織物の桐生産地から広まったと考えたほうが正解のようです。
また別のサイトの用語説明では
~ぞっき
意味 :すべて同じものでまとまっていること。それだけであること。
文章例:「羽おりも着ものも、もめんぞっきではあるが/路傍の石 山本有三著」
と出てきました。
なんと作家 山本有三の代表的な小説「路傍の石(ろぼうのいし)」の中にも“もめん(木綿)ぞっき”と記載されているとのことです。筆者の中学時代の教科書か参考書に載っていた小説にも「ぞっき」ということばは使われていたのです。路傍の石を調べると、1937年(昭和12年)に朝日新聞に連載が始まったとあります。さらに山本有三の実家は呉服商で、栃木県下都賀郡(しもつがぐん)栃木町に生まれたとのことです。北関東生まれで呉服商の息子・・・「ゾッキ」の語源ルーツはここにあったような気になります。しかも「路傍の石」は朝日新聞により全国区となったので「ぞっき」という方言も当時は意味が通じてたということのようです。
ということで、筆者の知識も訂正しておきます。それにしても短時間でここまで調べられた“今流行りのインターネット”はスゴいです。(今流行りの・・・はいらないですから・・・)。
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