2014/09/30
No. 25 「新 JIS 規格 津波避難誘導標識システムの 説明会のご案内です…」
思いつきラボ
2019/10/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します。
※2019年10月30日時点の内容です。
台風19号が上陸して2週間ほど経ちますがいまだに手のつけようのない映像がニュースで確認できます。追い打ちを掛けるように10月25日にまた大雨が襲ってきました。
台風15号・台風19号・記録的な大雨と・・・短期間に大きな被害が重ねて出てしまいました・・・しかも千葉県を中心とした同じ地域にです。前回の思いつきラボ 10月15日号で河川の氾濫が 37河川 52箇所(14日現)と記載したのですが、その後の発表で7県 71河川 128箇所となりました。
その後被害が整理される中でハザードマップの検証も行われ始めたのですが、水戸市と長野市のハザードマップは「千年に一度」の大雨を想定した浸水区域でしたが、今回の氾濫による浸水区域は そのハザードマップ内に留まっていました。
避難にはハザードマップは有効であるということを証明できたことにもなりました。各地域・自治体で発行しているハザードマップはありますからそれぞれの危険地域・避難方向を是非確認しておいてほしいと思います・・・と言いながらも、ハザードマップの見直しが遅れているところも多く自治体の対応も急がれます。
このタイミングで筆者は外部講演があったのですが、その中で今回の大雨の異常さを実感した方から「台風19号のような台風の豪雨でも再帰性反射材は機能しているのか?」という質問をいただきました。猛烈な雨の中でも救助作業や補修作業をしている映像がテレビで流れていて気になったとのことでした。
テレビの映像を見ていても文字が反射している様子も確認できましたが、降雨の強さの程度は判断できないので疑問を持たれても不思議ではありません。
結論から言えば、高視認性安全服の降雨耐性試験の合格品であれば、再帰性反射材は機能しています。
JIS T 8127 高視認性安全服・降雨耐性試験の説明をしておきますと、作業者の中には今回の大雨でも保全作業や修復作業や避難誘導指示する人たちも安全のために視認性の高い作業服を着る必要があるという考えから、かなり基準の高い試験が規定されています。
試験の概要を説明しますと、降雨量が1時間に 284mm/hr 降る環境下で再帰性反射材が基準値 100cd/lx・m²をクリアできるかという内容になっています。
1時間に 284mmの雨という数字なのですが、日本国内の気象庁の記録は 153mm/hrで2回計測されています。観測所の記録ではありませんが、長崎県長与町の町役場の雨量計で187mm/hrという記録も残ってます。
観測所の記録が正式なものとして発表されますが、気象庁と同じ設備で観測したものなので非公式ではありますが、284mmにはまだかなりの差があります。数字で見てもらえば判るように、国内最高値が153㎜なのに基準値が 284mmとはJIS T 8127 の基(もと)となったISO 20471 High visibility clothingの翻訳作業のときから国内ではありえない過剰基準と不思議に思っていました。
数年前に気象庁の降雨の記録に10分単位があることを知り、調べたところなんと、 50mm/10minという記録がありました。10分で50㎜ということはこのまま1時間降り続ければ 300mm/hrとなることになります。1時間で284mm降ることはありませんが、降り続ければ284mmを超える勢いで降ってる時間はあるということです。
このときに降雨耐性試験の基準値の正当性を理解しました。
ということで、今回の台風で各地1日の降雨量や降りはじめからの降雨量の記録を大幅に塗り替えたところはありましたが1時間当たりの降雨量の更新はありませんでしたので タイトルの今回の豪雨のさなかでも再帰性反射材の機能は失われずに視認性は保たれているという答えになります。高視認性安全服に使われている再帰性反射材のレベルがいかに高いかが分かります。
台風19号で降雨量の記録が更新されたのは1日の降雨量が神奈川県箱根町で計測された922.5mm/日(9月12日)で降り始めから24時間の降雨量は942.5㎜を記録しました。当然のことながら1日当たりの降雨量と降り始めからの24時間の記録は別のものになります。
ということで、高視認性安全服の再帰性反射材は大雨でも機能しています。ただ市販されている商品は輝度レベルはバラバラで大雨には対応できないものも多くあります。災害時や救助・捜索などに使う作業着は高視認性安全服の合格品をできるだけ利用してください。
今回の3つの災害映像をたくさん見ましたが再帰性反射材の付いた服は多く見られましたが、蛍光・生地のイエローやオレンジはあまり映っていませんでした。まだまだ蛍光生地と再帰性反射材を両方とも備えている高視認性安全服の普及は浸透していないという現実も見せつけられました・・・ガンバリます。
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
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