2018/11/30
No. 125 「キログラムの定義が変わったと言われても…」
思いつきラボ
2017/08/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2017年8月15日時点の内容です。
連日の猛暑や大雨が続く今年の夏は、テレビニュースの天気予報の時間が長く割り当てられている感じがします。
解説を聞いていると最高気温が 35℃以上の日を「猛暑日」と予報用語になったのは 2007年からとのことで、我々 60歳代の会話に「昔の夏はここまで暑くはなかった」とよく出てくるのは正しかったようだと勝手に納得しております。
クーラーなんてものがなかった時代を過ごしてきたわけですから、「猛暑日」という用語がまだ 10年しか経ってないことに、あらためてここ数年の地球温暖化の速さに心配してしまいます。夜の最低温度が 25℃以上の「熱帯夜」も珍しいものではなくなりました。
筆者の夏の服装といえば、平織りのオックスフォードの綿シャツとジーンズというのが定番なのですが、白無地のシャツはともかく色物を着ていると「涼しげなダンガリーシャツだね」と声をかけられ「これシャンブレーです」と返すと「どっちでも一緒だろう」と言われて・・・これって“思いつきラボ”向きの会話だと感じたので今回のテーマとします。
「ダンガリーのシャツ」はメジャーで「シャンブレーの シャツ」はあまり耳にすることがなくなっているのかもしれません。シャンブレーの生地はたくさん市場に出回っているのですが・・・。
まず「ダンガリー(Dungaree)」ですが、組織は綾織で「シャンブレー(Chambray)」の平織りと組織から違います。
近くで見れば違いはあきらかなのですが、遠目に見ればどちらも杢調(もくちょう)なので、判別しにくいのかもしれません。
織組織(おりそしき)としては 3/1のツイル(たて糸 3目よこ糸 1目の割合で表に出る組織)で、たて糸に晒(さらし)糸、よこ糸に色糸を使ったものになります。この 3/1のツイルといえば、デニムの生地と一緒では・・・と思われた方、正解です。
デニムとダンガリーの違いと言えば
デニム ・・・ たて糸が色糸 よこ糸が白糸の 3/1ツイル
ダンガリー ・・・ たて糸が白糸 よこ糸が色糸の 3/1ツイル
ということになります。
実際にはデニムはボトムス素材として使われ、ダンガリーはシャツ素材に使われることが多いので、糸番手も異なり、デニムが厚手でダンガリーはデニムよりは薄手の生地になります。
もちろん糸番手を同じにすれば生地厚も同じものが作れますので、ダンガリーはデニムの一種と取り扱われることもあります。
ダンガリーの語源は西インドのダングリ( Dungri )という地域で作られていたのが起源といわれています。
一方のシャンブレーも先染めで杢調に仕上げているのですが、こちらは平織の組織になります。
シャンブレー ・・・ たて糸が色糸 よこ糸が白糸の平織
ダンガリー ・・・ たて糸が白糸 よこ糸が色糸の綾織
ということになります。
同じ糸番手で生地を作れば、綾織の方が平織より厚みが出るので重くなりますので、シャンブレーの方がさらに薄手の生地ということになります。
ただし、糸番手が異なれば生地厚もかわってきますので、どちらが厚い・薄いは決めつけないほうがいいと思います。
筆者が着ているものはオックスフォードシャンブレーで、たてよこ 2本ずつ糸を引き揃えた組織のものになりますので、厚みのあるシャンブレーということになります。
色糸と白糸がシャンブレーですが、異なる色糸と色糸の場合は玉虫効果のある生地がつくれます。昆虫の玉虫の羽のように光の加減でチラチラとした色の変化がたのしめます。一般的には玉虫の生地と呼びますが、分類として玉虫もシャンブレーの一種と分類されることがあります。
シャンブレーの語源はフランスのカンブレ( Cambrai )が生産発祥の地とされていて、カンブレが転じてシャンブレーになったという説が有力とされています。
ということで「ダンガリーのシャツ」と「シャンブレーのシャツ」は別のものということを理解しておきましょう。
杢調の生地を“霜降り柄”と呼びますが、霜が降りたように白い斑点があるという意味合いなのですが、最近では霜降りといえば牛肉の赤身と白い 脂身の模様をイメージする人が増えてきています(そんなことはありません!!)。
霜降り柄を表現する方法として、ダンガリーやシャンブレーのように色糸と白糸を織り方で造り出す場合と、糸そのものを杢調にしたものを使うことで霜降りにすることがあります。
とくにニットの場合はたて糸・よこ糸の区分ができませんので杢糸を使うことが多くなります。
杢糸にも種類がありまして、紡績のトップ工程という段階で 生成りベースのところに色糸を混ぜ合わせる方法で、ウール糸ではトップ杢という呼び方をしています。
また色糸を撚り合わせて杢調にする糸を撚り杢(よりもく)とか糸杢(いともく)合撚杢(ごうねんもく)という呼び方をします。
3本で撚ったものを三つ杢(みつもく)、4本を四つ杢(よつもく)という言い方をすることもあります。このほかにも職場や素材による業界の違いでいろいろな呼称があります。
さらに綿の杢糸などは紡績の段階で綿にポリエステルの糸を少量だけ混ぜて造り、後染めの段階で綿染めしてポリエステル部分だけが白く残るという手法で作られることもあります。杢調の糸といっても作り方にもいろいろあるのです。
もう少し涼しくなれば、シャンブレーのシャツにダンガリーのジャケットを羽織り、デニムのジーンズでコーディネートすればちょっとした“杢調ファッション”を自慢できるかもしれません。きっとみんなに「それがどうした」と声を掛けられると思います。
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