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思いつきラボ
2016/07/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2016年7月15日時点の内容です。
ストライプとボーダーの言葉は普段から頻繁に使ってはいますが、業界内でもその使い方が微妙に違っているようなので、一度整理しておきたいと思います。
“この夏ボーダー柄が流行り・・・”というファッション雑誌の見出しから、ふと “たてストライプ” “よこストライプ” という表現を聞かなくなったと思ってしまいました。「たて縞がストライプでよこ縞がボーダー」というのが定着しつつあるようです。確かに “この夏よこストライプが 流行り・・・”といわれてもオシャレ感に欠ける気がするかもしれません。
“ストライプ” の本来の意味は「隣接する部分と異なる色の長くて細い色の線のこと」となっており、たて・ よこ・ななめであってもすべてストライプになります。
現に欧米では囚人服や受刑者の服は黒白のボーダー柄をイメージしますが、この太めのよこ縞は “プリズナー ストライプ” と呼ばれています。プリズナーは囚人のことで、今では囚人服も無地柄に変わってきているそうですが、昔のマンガや映画ではよく見かける柄になっています。
“ダイアゴナル ストライプ” は角度が45°くらいのななめの縞柄のことです。
ネクタイでよく見かけるななめ柄も “レジメンタル ストライプ” と呼ばれています。
ということでストライプはたて縞に限った呼称ではないのですが、なんとなくストライプといえばたて縞のイメージで使われることが多くなりました。本来ストライプは縞模様の総称なのです。
では “ボーダー” はと言いますと、境目や縁(ふち)取りという意味合いで、袖にデザインされた平行状のよこ縞や靴下の縁(ふち)に編み込まれたラインのことなどを指しています。よこ方向にラインは入ることが多いので “ボーダー” はよこ縞にのみ使われるようになったと考えられます。
この夏に流行するといわれているマリンボーダー(基本的には白地ラインに細いカラーライン)やパイレーツボーダー(基本的には等間隔の太目の2色ライン)などは船乗りが甲板で見つけられやすいように考えられているので、目立つように色のコントラスト差が大きいものが好まれていたようです。
さきほど紹介したプリズナーストライプは、囚人を見張るためにはもっとも色コントラストのある白と黒の組み合わせになっています。
ボーダーのユニフォームといえばラグビーをイメージしますが、対戦相手とぶつかりあうスポーツで敵味方が入り混じってごちゃごちゃになってしまうことがあり、立ち上がってボールをパスするときに瞬時に敵味方を判断しなければなりません。長い歴史の中でラグビーのユニフォームがボーダー柄になったのは、プレー中に仲間を判断するために適していたことで定着していったように思われます。先染めのニット生地で作られていたこともボーダー柄にしやすいという背景もあったのかもしれません。
とはいえちょっと補足をしておきますが、現在のラグビージャージの主流は先染めではなくストレッチ素材に昇華転写(しょうかてんしゃ)と呼ばれるプリント手法のものになってきていますので ボーダー柄も減ってきています。
太めのストライプを使った服は目立つことを目的にしています。監視しやすいように白黒の囚人服を着せたり、危険の多い船乗りの甲板作業での存在場所が確認しやすいようにとか、スポーツ競技で敵味方を見分けやすくするとか、衣料ではありませんが葬儀で使われる白黒の鯨幕(くじらまく)や運動会や祭りで見掛ける紅白幕(こうはくまく)など、場所を知らしめるのに利用されています。さらに工事現場などで見る黄色と黒色の組合せの危険を知らせるトラテープなどは、最も視認性の高い組み合わせとして使われています。
色を表すのに色相(Hue)・明度(Value)・彩度(Chroma)の要素を使いますが、視認性を考えるときには“色のコントラスト”がだいじな要因になってきます。目立つとか見分けやすいということが必要なときには、ストライプ柄というのは有効なデザインということなのです。“この夏ボーダー柄が流行り・・・”ということは、目立つファッションということになりますので、コントラストも意識して選んでみてほしいと思います。
また話が逸れますが、野球のユニフォームは基本的にホームチームが白ベースの配色で、ビジターチームがグレーやカラー配色とするという規定が設けられているのですが、これはテレビがカラーではなかった時代につくられた規則なのです。若い人たちは見たこともないでしょうが、白黒テレビで見てもどちらのチームか分かるようにしてあるのです。他のスポーツのユニフォーム規定も白黒テレビで放映のある時のために、コントラストのある異なったユニフォームの着用を義務付けしていたのです。
いまでは必要のない規定になってしまいましたが、当時はユニフォームのデザインを浸透させることもテレビ応援してくれるファンサービスには大切なことだったのです。
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