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No. 62 「今年の桜は見ごたえ充分でした…」

2016/04/15

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2016年4月15日時点の内容です。

春満開となりました。毎年桜の花を見ているのですが、今年は一斉に開花した印象で、とてもボリューム感のある見事な光景になっていました。
いつものことながら楽しいもので、そして数日後に花散らしの雨が降り、水辺を桜の花びらが埋め尽くし花筏(はないかだ)となり、道は桜の絨毯へと彩(いろど)られていきます。
そろそろ終わりかなと思えば新緑の葉桜が目を楽しませてくれます。10日間ほどの短い期間ですが、桜を楽しむ風習は心を和(なご)ませてくれるものです。

筆者が社会人になりたての頃には、東京・上野公園での花見が会社行事のようになっていて、若手が土曜日に年休を出し早朝から数十人分の場所取りをして 昼から会社の人達が集まって桜を楽しんだ・・・いや酒盛りを楽しんでたものでした。まだ土曜日は午前中だけ出勤の時代の話ですが、この場所取りも要領があっていい場所が確保できると、仕事以上の評価を得られたものでした。いい時代というかいい加減な時代だった気がします。
その後マナーの悪い団体が増えてしまい、規制が入るようになって自粛(じしゅく)するようになりました。娯楽の少ない時代は“桜と祭”は大騒ぎできるイベントだったのです。

“桜染め” -草木染めの種類

草木染めの中にも “桜染め” と呼ばれるものがあるのですが、染め上がりが桜の淡ピンク色をしているものを単に “桜染め” と呼んでいるものが多くあります。染色作家さんの個展などで、桜の木だけを使って染めたもののほとんどは淡いオレンジ系の色になっています。桜色というよりは柿色といったイメージです。桜色に染まったものも、桜の木だけで染めたものもどちらも “桜染め” と呼ぶので紛らわしいことになっています。繊維 ファッション業界ではよくある話なので、どちらが正しいということもありません。
デニムもインディゴ染めと呼ばれますが、実際は本物のインディゴを使うことはなく化学染料を使って染めています。インディゴ染め風に化学染料で染めているのです。草木染めの場合、見た目の花の色がそのまま繊維に同じ色で染まるものもありますが、別色になることの方が多いです。自然界の花は白色系と黄色系で半数以上を占めるといわれていますが、赤色系や紫色系や青色系もあるので草木染めで様々な色が出せるのですが、植物の色を構成している代表的な色素は 4種類しかありません 。

となっていて、クロロフィルは葉緑素のことで茎や葉っぱに多く含まれている ことはよく知られています。

ということで、フラボノイド・ベタレイン・カロテノイドの 3つの色素で花色が表現されているので、自然界ではおのずと黄色系や橙系の色を目にすることになります。白色系も見た目には白色ですが、ほとんどの白い花にもフラボノイドの色素が含まれています。
ここに挙げた 4つの色素も似たような構造をもつ化合物のグループの代表名で、さらに分類をすると数千種類の色素化合物に分類されるそうです。これらの数千種類の中からブレンドされて、個々の花の色が形成されるという仕組みになっています。
自然界に青色系の花が少ないのは色素の種類が少ないからということになります。 この青色の色素化合物でもっとも知られているのが、フラボノイドに属するアントシアニンと呼ばれる化合物です。アントシアニンは青色だけでなく橙・赤・紫・青と幅広く色を演出できる特徴があります。さらに、色素だけではなく最近では抗酸化作用のある物質としても注目をされています。
アントシアニンは pH(水素イオン指数)が酸性によると、赤色にアルカリ性だと青色に変化するという性質も持っているので、花の色が微妙に異なるのはこのような色素化合物の組み合わせで構成されているからなのです。まあ小難しい話はともあれ、毎年桜は楽しみにしたいものです。

色とりどりの自然に見とれて・・・

先日、上野に花見をしてきた親子に会ってやはり今年の桜は見ごたえがあったという話になりました。連れている子供が最近カメラに興味をもちだしたとのことで、動物園や植物の多い上野公園は子供さんのお気に入りのようで

筆者「写真撮ってきたんだって おじさんにも見せてよ」
子供「たくさん撮ったから見せられないよ」
筆者「じゃあ 一番お気に入りの自信作は」
子供「これかな~」
筆者「なるほどこれはいいね 動物の生き生きしている表情が伝わってくるよ たいしたもんだね」
子供「ありがとう」
筆者「それにしても若いのにカラー写真じゃなくて 白黒で撮っているとは渋いね」
子供「んっ・・・ おじさんそれパンダ!!」

春の穏やかな一日でした・・・。

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