思いつきラボ

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No. 47 「生地名は柄名なのか組織名なのかまちまち…」

2015/08/30

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2015年8月30日時点の内容です。

繊維の検査機関に居ると、当然のことながら多くの生地に接することになります。これまた当然のことになります、知らない生地名がたくさんでてきます。
先日、目にしたカタログの製品の生地名が“サテンドリル”と書いてあり、写真なので生地の詳細が判らないものの“サテン”は朱子織で“ドリル”は太綾の綾織だろうと、思いながら勝手に印刷ミスと決めつつ念のためにネットで検索すると、なんと“サテンドリル(satin drill)”という生地の解説が掲載されているではありませんか・・・。
マニアックな書き出しとなりましたが、今回は生地名に関するお話になります。

組織が由来の生地

サテンドリルの解説には「タテ糸に20番手の綿単糸をヨコ糸に14番手の太い糸を用いた5枚の経朱子(たてしゅす)に織った厚手の綿サテンで傾斜角度の大きい綾を持つ織物。ドリルとは太綾のこと。」とありました。
そんな~と思いつつ今度は“ドリル”を調べてみると「ドリルとは、経緯に20番手以下の単糸を用いた綾織の組織で太綾の織物。」とあります。
サテンは朱子織でドリルは綾織ということは間違いなかったのですが、ネーミングの意味としては「朱子織組織でつくられたドリル風の太綾の生地」ということになるようで・・・ややこしいです。

普段なにげなく呼んでいる生地の名前もいくつかのグループがあります。基本は組織の名前になるのですが、織物の基本組織は3種類:平織(plain) ・綾織(twill)・朱子織(satin)ですが、化学繊維が出てくるまでは糸によっても区分けがされていました。
絹織物・綿織物・毛織物、さらに糸の太さや単糸か双糸かでも生地面(きじづら)は変わってきますし、綾織や朱子織は糸の飛ばし方でも異なる生地になります。こうやって掛け算をしていくと、かなりの種類の生地が造れることになります。

綿織物
平織:シーチング・ブロード・ローン
綾織:デニム・ドリル
朱子織:綿朱子

絹織物
平織:羽二重・タフタ・シホン
綾織:綾絹(あやきぬ)
朱子織:サテン

毛織物
平織:トロピカル・ポーラー・ポプリン
綾織:サージ・ギャバジン
朱子織:ドスキン・ベネシャン

などがあります。

さらに変化組織や加工によるものなどで呼ばれているものもあります。

変化組織:アムンゼン・蜂巣織・パイル
加工による:サッカー・クレープ・コーデュロイ・ビロード・別珍

織物だけを取りあげているのですが、これでもごく一部でまだまだ聞き覚えのある生地名があるはずです。
本来は、天然繊維しかなかった頃は、素材と組織によって生地の呼称は定まってきたと思います。物造りや商売上では生地に名前が付いていたほうがやり取りしやすいので、みんなが何となく呼んでいたのがそのまま生地名になったものも多いと思います。
ローン(フランス ロー)・モスリン(イラク モースル)・デニム(フランス ニーム)・ベネシャン(イタリア ベネチア)などは地名から名付けられています。モスリンを上の区分に入れていないのは、日本では毛織物の平織のイメージなのですが、ヨーロッパでは綿織物の平織となっているので記載しませんでした。

他にもさまざまな由来が

その土地で作られている総称になることもあるかもしれません。生地名のことなので諸説あり真偽のほどは判りませんが、発祥の地の名前からとされるものは多いと思います。
ここまでの説明は無地織物の生地名をとりあげていますが、ジャガード織機やドビー織機で織り上げる生地は柄物になりますので、柄の名称で呼ぶことになります。先染め織物(染めた糸で織り成す生地)をイメージしてもらうと解りやすいかもしれません。

チェック柄とかボーダー柄やストライプ柄など、こちらはベーシックなものからテキスタイルデザイナーや生地開発者がネーミングするものも多いので、なかなか統一化がむつかしいものになっています。とはいえ、伝統的な柄やベーシックなものは世界共通となっていますのである程度の知識は持ち合わせておいた方が生地を理解しやすいと思います。

書き始めるとキリがないと思いますが代表的なものを紹介しておきます。

タータンチェック (tartan check)
スコットランド ハイランド地方で生産されスコットランド軍の兵士が着用したと16世紀の文献に掲載されているとのこと。タータンの語源はフランス語の“tiretaine 薄い毛織物”が元になっていて、スコットランド タータンになったと考えられている。

ギンガムチェック (gingham check) シロと色のシンプルな格子で比較的小さな柄を指すことが多い。ギンガムの語源もいくつかあるが、フランスのブルターニュ地方にある地名ガンガン(guingamp)に由来する。1820年代のイギリス雑誌にギンガムストライプという記述があり、最初はストライプ柄の呼称であったと考えられている。

バーバリーチェック (burberry check) イギリス バーバリー社のコーポレート柄で商標登録されている。バーバリーは創業者のトーマス・バーバリーの名前から付けられている。バーバリー社の格子柄ということ。

ギンガムチェック

まだまだベーシックな格子柄だけでもとても書ききれませんので、あらためてチェック柄だけで原稿にしたいと思います。図柄もあったほうが理解しやすいので準備したいとは思いますが揃えるとなるといつになるか・・・。
今回のテーマからまた逸れてしまっていますが、生地名として普段呼んでいる名称には組織名だったり柄名だったり加工名だったり混在しているということだけ認識しておいてください。

いまでは化学繊維が台頭してきたので、さらに複雑な生地名もでてきています。ひとつ紹介すると、毛織物 朱子織のドスキンという生地は羊毛が基本となりますが、カシミヤで織ったドスキンはカシミヤドスキンと呼ばれていました。略して“カシドス”と呼称され浸透してしまいました。
化学繊維の出現で“カシドス”をポリエステルで表現しようという生地が出てきた結果、“カシドス風”なポリエステル100% の生地が市場をにぎわすことになってしまいました。

気が付けば、ポリエステル 100% のカシミヤドスキンが存在することになってしまいました。筆者はずっと納得ができない繊維業界の不思議と思っております。冒頭のサテンドリルといい、理解しにくい生地名が繊維業界には歴史が長いせいかいろいろと出てきます。
今回は意識的に織物だけを取りあげましたが、これに編物を加えるともっと複雑な生地名が登場してきます。生地名を見る時にちょっと意識してみてください。

またまとまりの悪い原稿になってしまいました、申し訳ありません。内容もまちまちとなってしまいました。

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