2020/02/29
No. 155 「うるう年の計算方法に“西暦”ではなく“皇紀”が…」
思いつきラボ
2016/03/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2016年3月15日時点の内容です。
2011年3月11日に発生した東日本大震災 から、5年という時間が経過してしまいました。これだけの時刻(とき)が流れたのに復旧 復興の実感が乏しいものになっています。それだけ被害規模が大きかったということになりますが、今復興に対して防潮堤の計画の是非が議論されています。すでに着工しているので良し悪しは各自治体での判断となりますが、別の自治体では全く防潮堤を築かず海がどこからでも見える環境にしようとしているところもあります。地形的な問題もありますので選択肢が異なるのですが、防災に関してはその土地に見合ったもの、特に過去の経験値で判断するという考え方が主流になってきています。
防潮堤の建設計画の地域はもともと巨大な10mほどの防潮堤があったにもかかわらず、津波によって破壊され被害が出たことで世論でも批判を浴びたこともありましたが、防潮堤がなかったらもっと大きな被害になっていたという意見もありました。
筆者は仕事の関係で防災セミナーにも参加する機会がありますが、国土交通省や土木学会のセミナーなどでは、震災時に防潮堤によって被害が回避できたという事例も多く報告があります。テレビなどのマスコミ報道は被害のあった映像が中心になってしまいますが、防災準備によって災害から免れた事例を学ぶことは防災対策の基本でもあります。
被災した地域であらたに建設する防潮堤は 14m 超えの高さになることで、東日本大震災時の津波に対応できるものになっています。さらに防潮堤の陸側の道路は盛土道路としてあり、防潮堤を超えたとしても 2段階で防ぐことが考慮された計画になっています。海が見えないとか自然環境に影響があるとの指摘がありますが、もともと防潮堤のある景観の土地柄なので住民の判断が優先することでいいと考えます。防災対策と道路整備が並行して行われているので、復興作業が進んでいるように感じるのも住人が普通の生活に戻ることに繋がる大切なことなのです。
一方で、平地の少ない土地では防潮堤に頼らず、津波対策としてはどこからでも海が見えるように整備をして津波が見えたら、とにかく逃げるという方法を選んだ地域もあります。防潮堤のような津波対応を優先してしまうと海で生活している人たちにとっては作業の効率が悪くなることから、避難路だけの整備を充実させて景観は遠くの海まで見えるようしておくという考え方になっています。この選択は防潮堤のように普段の安心感は持つことができませんが、常に津波に対する警戒心と避難意識は高まります。建物も建物自体を守るというよりは、建物内の商品を守るという構造の検討がされています。
例えば、1階部分の壁は弱いものにして柱の構造だけは頑丈なものにしておき、2階・3階を津波から守るという考え方になります。1階の壁を強固にすると、津波の力が勝ったときに建物ごと破壊されるという経験からの判断になります。
防潮堤をより高く頑丈にして大津波への対応準備をするか、とにかく津波が発生したら避難するという行動を徹底するかは、その土地ごとの地形や産業形態によってことなるということです。どれが正しいかは結果でしか判断できませんので、この選択がもっとも有効であろうという観点で判断するしかないということになります。これからも何十年・何百年の単位で大地震や大津波は起こりますので、東日本大震災やそれ以前の大きな災害の伝承だけは必要なことになります。津波だけに関して言えば高台や高いビルに避難するしかないので、避難階段や避難通路を適切な場所に設置することが優先されます。
津波だけのことを書いているとほかの災害を忘れてしまいますが、地震→津波だけではなく、地震→土砂崩れ、地震→液状化現象に連動することもまた同時発生の可能性もあります。
地震→津波だけの意識だと地震→土砂崩れに巻き込まれることもありますので、やはり災害時の個人の置かれた状況で判断するしかありません。災害時には自分で自分を守るという意識も必要なのです。
災害別に避難の方法も避難場所もかわってきますので、災害ごとにどう対応するかも準備しておくことが必要になります。 新しい規格でJIS Z 9098 災害種別避難誘導標識システムが近いうちに制定されます。パブリックコメントの掲載期間が 2016年 2月 18日で終了となっていて、大きな意見の申し入れもないようなので、間もなくの発行となります。
災害の種別は
洪水
内水氾濫
高潮
津波
土石流
崖崩れ・地滑り
大規模な火事
となっています。
地震や台風などどこで起こるか分からないものについての記載はありませんが、それでもこれだけの災害が挙げられるのです。ありがたくない話ですが、日本ではこれらの災害はすべて起きうるものになっています。
これらも国際規格として拡げていく必要があると思っていますが、それ以前にこれらの災害が住居や勤務地で起こり得る可能性があるのであれば、対処の仕方や避難場所については考えておく必要があります。東日本大震災から5年という時期に、災害についても今一度考えてみていただきたいと思います。
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
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