2015/04/15
No. 38 「染料プリントと顔料プリントの見分け方は…」
思いつきラボ
2014/08/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2014年8月30日時点の内容です。
今回の思いつきラボのコラムは楽しい実験報告レポートになります。コラムでは簡単な実験や体験報告なども取り上げていますが、今回のレポートもとにかく発想が面白い上に検証方法も独自性がうかがえます。8月30日号という日付からすると、何か夏休みの自由研究の宿題が間に合ったというようなイメージもありますが、社会人2年目の仲間たちの原稿を是非楽しんでください。
「書いてみない?」そんな軽い一言から任されちゃいました、ニッセンケン内で静かな人気を誇る“思いつきラボ”。
竹中グループ長の後という壮大なプレッシャーの中、さてさてどんなテーマにしようかと身近なところで何か衣服に関する疑問点はないかと模索していたところ、思い出したのは世界的に有名なあのアニメのワンシーン。
やってみたい、とはいかずとも本当に人間の筋肉の力でシャツを破ることなんて出来るの?と、疑問を抱いたことがある人は少なくないのではないでしょうか。
なので、今回は「“筋肉が盛り上がってシャツを破く”というシーンは実際に起こり得るか?」
入社2年目のフレッシュなオタク2人が、真面目に考えてみました!
1.試料
今回は某国民的アニメの有名シーンをイメージしているため、織物(シャツ地)で実験を行いました。
一種類の生地では面白味に欠けるため、組成・組織の異なる4種類の生地を用意してみました。生地によって結果に違いが生じるのか、それとも大差はないのか、わくわくしますね!
2.方法
JIS L 1096破裂試験(ミューレン形法)
筋肉のふくらみと生地の関係を再現するには【面で力を作用させ、破裂させた時の最大の強さを測定する】破裂試験が適していると考えました。
一般的に、織物の場合は、力のかかる方向が明確な引張試験や引裂き試験を行います。これは、製品を作る段階で、強度の弱い部分がはっきりわからないと改善できないからです。
一方、編物の場合は、力のかかり方が複雑なため、生地強度を調べるためには破裂試験が適しています。
(破裂試験にはミューレン形法の他に定速伸長形破裂強さ試験機を用いる方法もあります。)
※ミューレン形法とは?
試料をゴム膜の上に設置し、 圧力を加え、ゴム膜が試験片を突き破る強さ(㎪)を測定する試験です。
3.結果
④が約860㎪最も強く、①②はあまり差がなく、どちらも約430㎪という結果になりました。
③は①②と④の間くらいという結果になりました。
生地の厚さの違いもありますが、ポリエステルはさすがの強さです!
私たちの考えるアニメの時代背景から化学繊維は使われていないだろう、ということで天然繊維の結果で考察させていただきます。
実験結果より、およそ400㎪で生地が破裂することがわかりました。
400㎪とは、具体的には 100㎠に400㎏乗せた時の圧力です。
≒手のひらにホッキョクグマをのせたときの圧力を想像していただければ良いかと思います。無理ですね!
表面積から考えると・・・
生地が破裂した時の試験機のゴム膜は、ほぼ半球状態でした。
平面→半球 = 表面積が約2倍となっています。
上腕を筒状として考えると、表面積を2倍にするためには、力こぶを隆起させた時、腕の太さが おおよそ30cmから60cmへ増加する必要があります。
これは、現実的に考えるとかなり難しいことです。(因みに、当財団の某所長は30cm→34.5cm、某課長は28cm→33.5cmでした。 残念!)
また、この仮定では“平常時に肌にぴったりフィットしているシャツ”を前提としていますが、実際、衣服には動作を行うためのゆとりがあるためストレッチも無く体にフィットしているシャツというものは 考えにくいです。
生地強度という視点から考えると・・
破裂試験の基準値としては、ニッセンケン基準の場合 綿麻編物・薄地で294㎪以上となっています。織物の破裂の基準はありませんが、今回の結果を見ると、編物・薄地の基準をクリアしていますので、市場に出ても問題の無いレベルの強度だと言えます。
市販されている製品は、ニッセンケン等の検査機関で品質を確認しているものがほとんどですので、そこまで強度が弱いものは考え難いです。
生地の強度不足での破裂、と考えると、長年愛用して洗濯を繰り返して強度が落ちたと考えるのが自然でしょうか・・・。
どちらにしても、やはり現実はアニメのようにはいかないようですね。
夢いっぱい!アニメはやっぱり素晴らしい!!
○参考文献
石川励造(昭和53年)『被服材料実験書』同文書院 p112
原稿担当 東京事業所 中西つばさ
東京事業所 野地奈都美
自由研究協力者 エコテックス事業所 井口遥
PDF版はこちらから
お問い合わせ
一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp
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