思いつきラボ

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No. 21 「化学繊維のあれやこれやの四方山話(よもやまばなし)…」

2014/07/15

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2014年7月30日時点の内容です。

繊維の雑学的な基礎知識の続きになります。繊維の分類で天然繊維は植物繊維と動物繊維の2種類で説明しましたが、化学繊維は衣料品を中心に考える時は 再生繊維・半合成繊維・合成繊維 の3種類で分類することが一般的になります。
繊維の中で衣料用以外に使われるものがあるのかということになるのですが、断熱材などに使われるガラス繊維や飛行機の機体などに使われる炭素繊維などは、衣料用と区分するために産業用繊維や資材繊維などと呼ばれています。

衣料品業界にいるとなかなか衣料品以外の繊維に関わることがあまりないので、今回の思いつきラボでは産業用繊維も含めて整理しておきたいと思います。ということで、まず内閣府 消費者庁が定めている“家庭用品品質表示法”で指定されている「繊維の名称を示す用語」からおさらいしておきます。日本は繊維の表示は法律で定められているのです。

繊維 さまざまな呼び方

指定用語のある繊維は24種類で指定用語は29種類 表示名は46種類あります。表示名というのは、例えば“綿”の場合“綿”でも“コットン”でも“COTTON”であればどれを使ってもいいということになっているので、指定用語29種類であるのに表示名は46もあるのです。

これが法律が定めるところの24繊維29指定用語になります。表示名までは記載しませんが繊維に関する表示をする場合、これ以外は使ってはいけないことになっています。この中に該当しないものは“指定外繊維”の表示になります。天然繊維4種類と羽毛3種類を除いた22繊維が化学繊維となり、グループ分けをすると4つに区分されます。

再生繊維

再生繊維は、綿糸の原料を採取した後に残るリンターと呼ばれる短い繊維や木材パルプのおが屑のような木片を薬剤で溶かしたものから繊維にしたもので、通常の工程で残った素材を再生するので再生繊維と呼ばれています。化学繊維と言いながら原料は天然素材なのです。レーヨンは化学繊維で初めて世の中に出回った繊維で、日本では“人絹(じんけん)”と訳されていました。漢字から判断できるように人工の絹という文字が当てはめられています。もちろん長繊維(フィラメント)で製造していたからなのですが、当時高価だった絹を模した代用品を目指していたのです。

シルクを追い求めたものの、原料が綿や麻と同じセルロースですので、性質的には綿に近いものになります。レーヨンの短繊維(ステープル ファイバー)も製造されるようになり綿糸の代用品として普及することになりました。“スフ”と呼ばれる繊維はステープル ファイバーの頭文字でレーヨン短繊維のことだったのです。“人絹”も“スフ”もレーヨンのことですが、人絹はフィラメントでスフはステープルのことなのです。

ポリノジックもレーヨンと同じ工程で造られるのですが重合度(分子を構成する単量体の数)がレーヨンよりも多いもので、家庭用品品質表示法では平均重合度が450以上のものについてはポリノジック表示でもレーヨン表示でも構いません、ということになっています。450以上のものはポリノジックにしなさいというルールではありません。重合度が高いほど弾性や湿潤時の安定性に優れていることになるので、ポリノジックはレーヨンよりも品質安定性が高いということになります。

もうひとつの再生繊維、キュプラは銅アンモニア繊維と呼ばれているように銅アンモニア溶液で溶かした ものから造られます。原料もパルプは使用せずコットンリンターを主材としています。国内メーカーでは旭化成の“ベンベルグ”のみが商品として扱われています。レーヨンやポリノジックはビスコースと呼ばれる溶液から造られ、原料も木材パルプが中心なのでキュプラは再生繊維の中でも希少性の高いものということになります。“ベンベルグ”は旭化成の商標なのですが、もとはドイツのベンベルグ社が開発したことに由来しています。

半合成繊維

半合成繊維は、再生繊維の原料であるセルロースやタンパク質に高分子化合物と反応させて造られた繊維です。再生繊維と合成繊維の中間に位置するので、半合成繊維と名付けられています。代表的な素材がアセテートですが、主原料は再生繊維と同じリンターや木材パルプが使われます。これに高分子化合物を加えるのですが、アセテートの場合は酢酸と合わせて酢酸セルロースを造り、これを紡糸して造られます。レーヨンが当初人工の絹糸を目指したのと同様に、アセテートもシルクの代用品になるようにフィラメントで造られました。

トリアセテートも全く同じ工程で造られるのですが、家庭用品品質表示法の規定によれば「水酸基の92%以上が酢酸化されているもの」ということになっています。この場合もポリノジックと同様に、アセテートでもトリアセテートでもどちらの表示でもいいですよ、ということになっています。
アセテートとトリアセテートとの違いはといいますと、トリアセテートの方が酢酸化の度合いが大きいので、より合成繊維に近いものとなり光沢感もよく、ドレープ性もありシルクにより似ているものになります。スカーフによく使われるのは発色性がいいからなのです。
アセテートの雑学をひとつ紹介しておきますと、衣料品以外でもアセテート繊維が多く使われているものがあります。それはタバコのフィルターでニコチンやタールの吸着性が味を損なわない範囲でバランスがいいということで、フィルタータバコができたときからアセテートが使用されています。

もうひとつの半合成繊維のプロミックスはアセテートやトリアセテートが植物系のセルロースを主原料としていましたが、プロミックスは動物性タンパク質から造られます。とはいいながら、あまり市場で見かけることのない素材です。以前は東洋紡が“シノン”というプロミックス繊維を「牛乳から造った繊維」とうたって取り扱っていましたが、現在では姿を消しています。
国内の商品はなくなったと思っていたのですが、今年になって龍田紡績がミルク繊維としてヤーン・フェアで発表していました。動物性タンパク質系ですので肌触りはシルクに似た風合いになります。

天然繊維の良さとは違い、化学繊維ならではの特徴もあるのです。まだ説明の途中ですが原稿が長くなってしまったので、今回のコラムはこの辺で終えたいと思います。続きはまたということでお願いいたします。

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竹中 直(チョク)
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