2020/04/15
No. 158 「JIS T 8127:2020 高視認性安全服 主な改正点は…」
思いつきラボ
2014/04/15
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2014年4月15日時点の内容です。
新年度がスタートしました。桜が咲き気候も穏やかになり、当センターにも新人が加わり明るい挨拶が聞かれる季節となりました。
春に新年度を迎えるのは毎年のことではありますが、新鮮な気持ちになるものです。新人研修やセミナーなどが多くなる時期でもあり、立石ラボにも来訪者が増えています。防災・安全評価グループの紹介もさせてもらうのですが、他の繊維試験とは異質なものになるので、なにかと興味は持っていただけるようです。
防災・安全評価の試験の中に誘導標識などに使用される蓄光商品の輝度測定があります。輝度測定とは発光体の光の強さを測るものですが、それ以前に蓄光式誘導標識に使われているレベルの蓄光商品を見たことのない方には「蓄光ってこんなに光るの!!」という新鮮な驚きがあるようです。電源や電池なしで光るものは、ホタルなどの生物発光以外にはあまり目にする機会がないのも確かです。蓄光式誘導標識も数多くの商業施設や地下交通施設では導入されているのですが、災害に出会わないかぎり現場で見ることはありません。
小さい頃には、光る消しゴムやら光るシールなどの文具類や光るジグソーパズルやフィギュアなどの玩具類では見ていたはずですが、これほど光るものを目にすることがなかったかも知れません。
蓄光原料には大きく分けると“硫化物タイプ”のものと“酸化物タイプ”の2種類に分けられます。硫化物タイプは安価で取扱いも簡単なのですが、残光性が弱くまた長期的には劣化していくのであまり光らなくなってしまいます。酸化物タイプは初期輝度も高く残光性にも優れているのですが、高価であり取扱いが難しいので、防災・安全用途以外ではあまり使われることがありません。
ということで、試験に興味というよりは“蓄光”自体に興味を感じるようです。防災・安全評価グループとしては試験をすることがもちろん業務なのですが、同時に蓄光商品や蓄光原料の有効性についても広く知ってもらうための広報活動も意識的に行うようつとめています。まだあの広辞苑に“蓄光”という単語は掲載されていないのです。認知度という意味ではまだまだ低く、そのことが施設への導入を遅らせている原因のひとつと考えているのです。視認性や誘導性については実証実験も重ねられていて、有効性も認められているのですが、まだまだ宣伝が必要な商品群なのです。
施設案内や試験についての説明の後に質問を受けると「蓄光商品はなぜ光るのですか?」という類(たぐい)の質問がでます。
せっかくですので、蓄光の発光のしくみを説明しておきます。蛍光灯や電球が光るのも基本的なしくみは同じなのですが、照明器具でもないものが光ると不思議に思えるのかもしれません。一般的な説明ですと次のようになります。
蓄光素材の発光のしくみ
① 蓄光素材が光を吸収すると電子が励起(れいき)された状態になる。
② 光の吸収がなくなると、励起された状態から電子がより低い軌道に遷移する。
③ 光子(こうし)が飛び出す現象<光電効果>が起こるため光って見える <発光現象>。
ということになるのですが、物理学に興味がないと「なんのことやら・・・」となってしまいますので、もう少し詳しく説明いたします。
まず“光を吸収する”というのは、光も電磁波ですので、電磁波が物質にあたると反射・吸収・透過のいずれかの経路をたどります。蓄光原料は光を吸収しますので、蓄光原料の持っている電子エネルギーが高くなります。“電子が励起”されるというのは、元の状態から電子のエネルギーが高い状態になることをいいます。
“電子がより低い軌道に遷移する”というのは、電子は通常は原子核に近い軌道上を運動しているのですが、励起することによって外側の軌道に移動します。より低い軌道に遷移するということは元の状態に戻ろうとしていることです。要は蓄光原料が励起すると持っている電子が外側の軌道に移り、励起がなくなると元の軌道に戻ろうとするということです。
“光子が飛び出す現象”というのは、電子が元の状態に戻ろうとするときには余分なエネルギーを放出する必要があり、このとき光のエネルギーとして放出します。光子とは光を粒子と考えた時の表現で これが“発光現象”になります。
“光電効果”とは、1887年にドイツの物理学者ヘルツが陰極に紫外線を照射することにより、電極間の放電が起こって電圧が下がる現象を発見し、さらにドイツのハルヴァックスが金属に短波長の光を照射すると電子が表面から飛び出す現象を見つけ出しています。
蓄光原料が光を蓄えて暗所で光を放つことが、なんとなく理解していただければと思います。最後に蓄光関連のJIS規格を紹介しておきます。
JIS Z 9107 安全標識 – 性能の分類、性能基準及び試験方法
JIS Z 9095 安全標識 – 避難誘導システム(SWGS)- 蓄光式
JIS Z 9096 床面に設置する蓄光式の安全標識及び誘導ライン
などの規格があります。
蓄光商品の光るしくみに興味がなくても、蓄光商品に興味を持っていただければそれで充分です。防災・安全グッズだけでなくファンシー雑貨や印刷類にも蓄光原料は使用されていますので、気になる方は探してみてください。
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
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