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No. 15 「富岡製糸場 世界文化遺産登録へ…」

2014/04/30

繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。

※2014年4月30日時点の内容です。

4月26日に嬉しいニュースが届きました。ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界文化遺産に「富岡製糸場(とみおかせいしじょう)と絹産業遺産群」が登録される見通しになった、というものです。諮問機関によると「養蚕と日本の生糸産業の革新に決定的な役割を果たし、日本が近代化世界に仲間入りする鍵となった」との判断を示したとあります。筆者としてはついこの間まで稼動していた施設が世界遺産・・・という感じですが、調べて見ると1987年(昭和62年)まで操業していた会社なのです。
ともあれ繊維関連のコラムとしては取り上げるべき出来事ですので今回のテーマはこの話題になりました。

日本の繊維産業と富岡製糸場のあゆみ

日本国内の近代繊維産業のスタートはこの富岡製糸場といわれています。1872年(明治5年)にフランスの技術を導入して、世界規模の器械製糸工場として操業を開始しています。当時はもちろん官営  (国営)で管理されていました。1868年明治維新開国で日本からの輸出品は生糸(きいと)が中心で、需要が高くなりすぎて品質の低下がはじまり、価格の暴落とつながってしまい、その対策として当時の明治政府が動き出したということなのです。

当時の衣料繊維はもちろん天然繊維だけです。綿 麻の植物繊維が中心で、動物繊維は絹だけで羊毛は日本ではまだ一般的な素材ではありませんでした。補足しておきますと、江戸時代までも動物の毛を毛皮として使用したものはありましたが、動物の毛を紡いで織物にしたという記述はほとんどないようです。西洋では、昔から聖書にも出てくるように、羊飼いがいて羊を家畜としていたので毛織物の歴史もありますが、国内では動物性繊維の生地は絹だけだったと考えていいようです。

天然繊維の中では唯一のフィラメント糸(長繊維)でシルク特有の滑らかさと光沢感は、西洋の富裕層にはとても人気のあった素材だったのです。いつの時代も流行やオシャレは婦人達には必要な要素のようで、品質の高いものは高額で取引されたようです。絹織物の品質は先ほど述べた滑らかさと光沢感で判断されるもので、品質を向上させるには絹糸の太さを均一にすることが大きな要因になります。
しかし人間の手で行うと個人差や経験差がでてしまい、均一のものにするのは困難なことなのです。それ以前に天然のものなので、蚕によっても太さは一定というわけにはならないのです。

群馬県発・世界に誇る技術へ

話が遠回りしてしまいましたが、器械製糸工場を造ると言うことは、絹糸の品質を安定させ高品質な絹織物を製造・輸出できることになります。現にここから日本の生糸・絹織物は世界的にもトップレベルの商品として認められたのです。今回の世界文化遺産認定でもその技術力を含めたものになっています。
絹織物の場合タテ糸の太さが均一であればあるほど 、滑らかさと光沢感を引き出すことが可能になります。もちろんヨコ糸も均一であればさらに品質もあがりますが、当時の絹織物はサテンと呼ばれる朱子織が中心で、タテ糸が表に多くでる織り方が用いられました。タテ糸が多く見えるので、タテ糸の太さが均一であれば光沢感も増すということになります。

ここ2日間で新聞やテレビ報道で富岡製糸場を取り上げていただき、いろいろな情報を得ることができました。ほとんど俄か(にわか)知識ですが、紹介しておきます。

まず場所は群馬県富岡市で、当初の建設予定地の候補は長野県や埼玉県など群馬県のほかにもあったとのことでしたが、もともと養蚕業が盛んな土地であったことや資源となる水や石炭の確保がしやすい場所で、土の質が悪く農業地には向かないことが理由に挙げられていました。農業地には向かなくとも蚕の餌となる桑の木は育つようです。

この会社はフランスの技術者たちに指導を受けていた影響で、勤務体制も七曜制をとり7日のうち1日を休日に充てたとありました。今では当たり前の西洋暦ですが、日本が西洋暦を取り入れたのは同じ明治5年に採用を決めて、翌明治6年から運用が始まっています。この富岡製糸場の建設が少なからず影響があったのかもしれません。休日も7日に1日のほかに年末年始と夏季に10日間ずつを与え、1日の労働時間は8時間ほどに定めたとありました。現在の会社の基礎もこのときにできていたようです。

世界遺産の観光地として

ともあれ、日本の近代繊維産業の発祥の地が世界文化遺産となることを素直に喜びたいと思います。正式には6月の世界遺産委員会で最終決定がくだされるとのことです。報道のあった次の日曜日のニュースで、早くも観光客のラッシュでその対応に苦慮しているとの報道もありました。過熱にならない程度に祝いたいものです。

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一般財団法人ニッセンケン品質評価センター
防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
E-mail: bosai_anzen@nissenken.or.jp

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