2018/03/15
No. 108 「ストロンチウム(Sr)は放射性物質ですか?…」
思いつきラボ
2013/12/30
繊維業界は歴史が長く、また、川上から川下までサプライチェーンが長いため、立場が異なるだけで言葉づかいや慣習が異なります。 「思いつきラボ」では、繊維に関するちょっとした疑問や面白話などをご紹介します 。
※2013年12月30日時点の内容です。
思いつきラボ No.5 でポリエステルの話を掲載したのですが、その中でポリエステル 100% で伸縮性を持ったストレッチ織物・・・という部分に反応が多くありました。「ポリエステル 100% のストレッチ織物があるんですか?」とか「見たことないので 見てみたい」とか、筆者にとってはメジャー商品と思っていたので、意外にマイナーだったということを認識させられました。ということで今回はストレッチ織物のお話です。
一般的にはニットは伸びる生地で織物は伸びない生地という認識でいいのですが、伸縮性のある織物も多くあり「ストレッチ織物」と呼ばれています。スパンデックス糸使いの生地はニットのような伸縮性を持つものもありますが、合繊糸の仮撚加工だけで伸縮性を出すものは少ししか伸びないものがあります。
「どれくらいの伸縮性を持っていればストレッチ織物と呼べるのか?」という疑問が起こります。とはいえ、明確な数字をもった規格はありません。アパレルでは伸縮性何パーセント以上のものについて ストレッチ織物と表示しようとかの目安を作っているところはあると思いますが、テキスタイル段階では「ちょっと」でも伸縮性をもっていれば、ストレッチはあると判断します。
「ちょっと」と書いたところがミソで、感覚的なものになります。スラックスで考えてみますと、たて方向に+0.5% の伸度のある生地を使っているとすれば、膝(ひざ)を屈伸したときにはズボン丈が 100cm であれば 5㎜ の伸びが得られます。あくまで計算上のことですので、5㎜ きっちりと長くなっているわけではありませんが、「ちょっと」でも伸度があれば、膝に掛かる衣服圧(生地による圧迫感)は軽減されます。
では、よこ方向に +0.5% の伸度があったとすると、ウエスト80cmのスラックスであれば 、4㎜ の余裕が生まれます。伸度が 0.5% 程度でも着用感は変わってきます。 0.5% が「ちょっと」の基準ではありませんが、感覚的に少しでも圧迫感を和らげることができる素材であれば「ストレッチ織物」と呼ぶことになります。
少し古い話をしますが、筆者が繊維業界にお世話になったのが1975年(昭和50年)で、この頃のストレッチ織物といえは、スキーパンツやサロペットに使われていたスパンデックス糸使用の織物が代表的なものでした。その後1980年前後にスパンデックスを使わないポリエステル100%のストレッチ織物が登場して、この頃にもストレッチ表示の議論がありました。
スパンデックス使用の生地を扱っている担当者は 「この程度のものにストレッチ織物の表示はしてくれるな」と言い、ポリエステル100%の織物生地しか扱ってない者からすれば「これほど伸びるポリエステル100%の生地は見たことがない」と販売に自信をうかがわせていました。結果、ポリエステル100%のストレッチ織物は話題となり、開発部隊は勢いづきました。
このときのキッカケとなった糸が PBT(ポリブチレンテレフタレート)で、糸の段階で伸縮性を持ち合わせている糸でした。主流の PET(ポリエチレンテレフタレート)に比べればかなり割高の素材でしたが、スパンデックスに比べればかなり安価でしたので。PET糸との交織による生地開発は盛んに行われることになりました。この頃まではゴルフスラックスはニット生地が中心でしたが、ストレッチ織物の出現で需要が減ることになり、現在ではニットのゴルフスラックスの方が希少になっています。
ということで、ポリエステル 100% のストレッチ織物がどれだけ伸びるか引っ張ってみよう。
50cm のラインが 57cm になりました。結果、+14%の伸度があるということになります。ポリエステル 100% の生地でもこれだけのストレッチ性があれば、動きやすいビジネススーツやワーキングウェアを作ることができます。前述のゴルフスラックスでストレッチ織物の需要が高まったのは、伸度と同時に軽くてシルエット性のよい生地が求められたからであり、ニットスラックスの問題点であった膝抜け(ひざぬけ)を解消することができたからだと考えられています。膝抜けとは、繰り返し着用しているうちに膝の部分がふくれあがる現象のことです。
「検査機関なのにそんなアナログな測定でいいの?」という声が上がっていますが、思いつきなもので・・・ 繊維に関する疑問やおもしろ話がありましたら是非連絡ください。一緒に考えてみましょう。
2013年最後のコラムになりました。スタートしたばかりですがこんな感じで掲載していきますので、2014年もよろしくお願い致します。
それでは皆々様良いお年をお迎えください。
原稿担当:竹中 直(チョク)
自由研究協力者: 大阪事業所 尾崎 豪・佐伯 智也・井上 博之・金柿 翔太
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防災・安全評価グループ グループ長
竹中 直(チョク)
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